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11章 鬼柳動く

1話 鬼柳来訪

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 四宮の館の朝は、カオスな朝食から始まる。
 今朝も清音と千代、日奈が俺にアーンをして、菊の手を震えさせている。
 影平が菊に進言する
 「食事の時のアーンを禁止してはどうでしょうか。」
 「それでは、風通しが悪くなります。我慢してください。」
菊はつなと結婚したらアーンをするつもりでいる。
 禁止するわけにはいかないのである。
 俺たち6人は、午前、午後と剣技と魔力コントロールの訓練をしている。
 しかし、来客があると訓練は中止になる。
 俺たちは、気配を消して来客を監視して菊を護衛するのである。
 大半が菊に取り入ろうとする貴族や商人である。
 今のところ、菊に害をなそうとする輩が来たことはない。
 俺と清音、弥次郎、千代音、達郎、美代が監視している中で菊に何かできる者はまずいないであろう。
 ある日、来客があり影平が応対する。
 影平は、初見の者は紹介状でもない限り、菊に会わせることはしない。
 その影平が、見知らぬ男をあっさりと菊の元へ案内する。
 俺は、その来客に禍々しい気配を感じ取る。
 清音や弥次郎、千代音、達郎、美代も嫌な気配を感じたらしく警戒の色を濃くしている。
 俺は先回りして菊の部屋に入ると菊に言う
 「姫様、気を付けてください。」
 「分かりました。」
菊は俺が警戒していることを理解する。
 影平が菊の部屋の障子を開ける。
 俺は影平に言う
 「影平様、お待ちください。来客はどのようなお方ですか。」
 「素晴らしいお方です。」
影平はうつろな目をして答える。
 禍々しい気配の男が部屋に入ろうとする。
 俺は男に向かって怒鳴る
 「近寄るな。立ち去れ。」
 「嫌われましたか。私ですよ。」
男の目が怪しく光る
 「そうやって、影平様を操ったか。」
 「おかしいですね。効きませんか。」
俺は男に向かって柏手を打つ。
 男はびくっと動くと血を吐く。
 俺は男を殺すつもりで柏手を打ったが男は血を吐いただけで平然と立っている。
 影平が俺に言う
 「つな殿、何をする。この方は、鬼柳儀幽様ですぞ。」
俺はこの男が元凶なのだと戦慄する
 菊が命じる
 「この男を殺せ。」
一斉に清音、弥次郎、千代音、達郎、美代が鬼柳を取り囲む。
 弥次郎が切りかかるが鬼柳は弥次郎の刀を手でつかんで止める。
 清音と千代音が切りかかるが鬼柳は踊るようにかわす。
 鬼柳の胸に刀が生える。
 達郎が気配を消して、鬼柳の背中を刺し貫いたのだ。
 美代が達郎に体当たりをして床に倒す。
 次の瞬間、鬼柳の手刀が達郎がいたところを切り裂く。
 鬼柳は平然と刺さった刀を抜く。
 清音たちは鬼柳から間合いを取る。
 鬼柳は、何のダメージも感じさせずに言う
 「手荒い歓迎ですね。私は話をしに来ただけですよ。」
 「影平様を操っただろう。話をする態度ではないな。」
俺は鬼柳について引っかかるものがある。
 元祓い屋の経験が鬼柳が人間ではないと言っている。
 俺は、ある言葉が自然に出てくる
 「あんた、鬼だろう。」
鬼柳の顔色が変わる。
 「つなと言いましたね。あなたはほかの者と違うようですね。」
 「ただの人間だよ。」
 「そういうことにしておきましょう。」
鬼柳はそういうと易々と囲みを突破して立ち去る。
 誰も鬼柳を追わなかった。
 と言うより追えなかったのだ。
 この中に鬼柳に対抗できる者はいない。
 菊は犠牲者が出なくてホッとする。
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