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4章 影から出(いづ)るもの

プロローグ

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 昔、ある集落の近くの山で山崩れが起きる。
 その山崩れは大規模なもので1つの集落を飲み込んでしまう。
 人々は助けに行くが手の施しようのない状態で1人も助けることはできなかった。
 さらに人々は崩れた山の中腹に黒く丸い物を見つける。
 しかし、足場が悪く近づくことが出来ない。
 数年後、集落に地震が起こる。
 揺れは大きかったが人々に被害はなかった。
 数日後、集落の子供たちががけ崩れ後に遊びに行く。
 そこには、黒く丸いものが落ちている。
 地震で山の中腹にあった物が落ちてきたのだ。
 子供たちは、黒く丸い物を取り囲む。
 それは、へこみ等が無くまん丸である。
 好奇心の強い女の子が、それに触れてみる。
 するとそれは女の子になる。
 そっくり瓜二つである。
 子供たちが家に帰るころにはどちらが本物の女の子かわからなくなる。
 女の子の親はどちらが自分の子かわからない。
 2人とも育てることになる。
 2人は、同じ容姿であるどころか記憶まで一緒である。
 ある夏の日、子供たちが川遊びをしていると2人の女の子の1人が流される。
 大人たちは探して見つけるが女の子はすでに死んでいた。
 両親は残った子を自分の子だと信じて育てる。
 女の子は12歳になり、親の手伝いをするようになる。
 そして、川で子供がまた流される。
 大人たちは子供を探し、見つけるが手遅れである。
 子供の親は泣き崩れる。
 すると女の子が死んだ子供の影に手をつくと何かを引っ張り上げる。
 それは死んだはずの子供である。
 その日から女の子は、生き神様として祀られるようになる。
 女の子は16歳で結婚する。
 その頃には、集落でおかげ様と呼ばれるようになっている。
 集落の者は、子供や働き盛りの者が死ぬとおかげ様にすがって、死体の影から生者を引っ張りだしてもらうのだ。
 それは集落だけの秘密とされる。
 彼女は女の子を産む。
 そして、生き神様として45年の生涯を閉じる。
 集落の者は悲嘆にくれる。
 しかし、集落の若者が病で死んだとき、彼女の娘が若者の影に手をつき若者を引っ張り上げる。
 彼女の能力は娘に受け継がれていたのだ。
 それから、その能力は、彼女の子孫に受け継がれていく。
 これは、集落の絶対の秘密になっている。
 集落では出ていくことを許されず、入って来るものを拒み続けて、おかげ様信仰の秘密を守り続けた。
 集落は、近代になって坂田村黒川地区さかたむらくろかわちくになる。
 そこでは、おかげ様の秘密を守り続けられている。
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