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6章 河童

3話 河童騒動の終幕

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 みおと順二は大石と共に町長の金子に報告に行く。
 みおは金子に言う
 「騒動の元凶は河童でありませんでした。霊団の仕業です。」
 「霊団とは何なのかね。」
 「霊が吹きだまってかたまりになったもので、放っておくと人に霊障を引き起こします。」
 「川の霊団は、人を引きずり込んでいるぞ。」
 「普通の霊団ではありません。大きいですし、祓うことが出来ませんでした。」
 「どうするんだ。そんなもの何とかしないとまずいことになるぞ。」
 「応援を呼びます。中野沙衣と言う祓い屋なら何とかなるでしょう。」
 「来てはくれないぞ。」
 「どうしてですか。」
みおの質問に大石が答える
 「一条先生の前に中野先生に依頼していたのですが断られてしまったのです。」
 「沙衣が断ったのですか。」
 「マスコミに騒がれることを嫌っているようでして。」
 「そうですか。それならば、現場を封鎖できませんか。マスコミややじ馬を排除できれば、依頼を受けてもらえますよ。」
 「検討します。名前を売る良い機会だと思いますが理解できません。」
 「沙衣は、それを嫌っているのですよ。彼女には私から連絡します。」
みおたちは沙衣に霊団の退治を依頼することにする。
 河原は警察が関係者以外を排除するため、規制をかけることになる。理由は安全の確保と言うことになっている。
 みおはスマホで沙衣に電話する
 「みおさん、どうしたのですか。」
 「皿無川の件は知っているわね。」
 「私が断った仕事です。」
 「今、私が引き受けているのだけれども手に負えないわ。」
 「河童が出たんですか。」
 「いいえ、大きな霊団が出たわ。私では動きを止めるのが精一杯な相手よ。」
 「でもマスコミとかいますよね。」
 「今は、警察に規制をかけてもらっているから大丈夫よ。」
 「分かりました。私も行きます。」
沙衣は、引き受けることにすると祐二とロードスターで西浦町へ向かう。
 沙衣たちは、みおたちと合流すると大石の案内で町長の金子に会う
 「中野先生、引き受けてくれますか。」
 「はい、マスコミを排除していただいたので、お受けします。」
 「相手は、霊団だそうですが大丈夫ですか。」
 「私に出来なければ、次の霊能者を探すのは苦労しますよ。」
 「分かりました。お願いします。」
大石は冷や汗をかいている。
 役場を出るとみおが沙衣に言う
 「いつも、お客にあんな態度取るの。」
 「あの町長、私を値踏みするような目で見るから、信用してないのよ。」
 「まあ、一度は断っているんだから、町長も言いたいことあるかもしれないわよ。」
沙衣たちは、そのまま大石に連れられて河原へ行く。
 「何もいないわね。」
沙衣が言うとみおが答える
 「前回は1週間見張っていたわ。」
 「それは大変ですね。」
沙衣は長期戦を覚悟する。初日は夕方まで見張っているが霊団は現れない。
 沙衣たちは、ホテルに行く。部屋がないため、沙衣はみおの部屋に、祐二は順二の部屋に泊まることになる。
 沙衣たちは話し合うがよい答えは出ない。
 祐二が発言する
 「僕と沙衣が恋人のふりをして、水辺だ遊んでおとりになるのはどうですか。」
沙衣の目つきが怖くなり、祐二に言う
 「祐二が1人で川に入っておとりになりなさい。」
 「助けてくれますよね。」
 「祐二は、霊に鈍感なんだから大丈夫よ。」
 「そんなー」
祐二は情けない顔をする。結局、持久戦をすることになる。
 祐二と順二が部屋へ帰った後、みおが沙衣に話しかける。
 「沙衣は、祐二君とはどうなの。」
 「どうって、ただの助手です。」
 「祐二君は沙衣のこと好きでしょ。」
沙衣は赤くなり言う
 「祐二が調子に乗っているだけです。それより、みおさんは順二さんとどうなんですか。」
 「プロポーズされているよ。」
 「・・・ほ、本当ですか。結婚するんですか。」
 「まだ、答えを出していないの。」
 「助手なら仕事のこと理解してるし、大丈夫じゃないですか。」
 「だけど、危険な仕事よ。」
 「みおさんは無茶しないから良いと思いますよ。」
 「それなら、沙衣と祐二君もお似合いじゃないの。」
 「祐二は、鈍感でお調子者だからだめです。」
みおは、沙衣が祐二には厳しいと思う。祐二と順二は部屋に戻ると話を始める。
 「祐二君は、沙衣さんのこと好きなんだろ。」
 「はい、そうです。」
 「告白はしたのかい。」
 「何度もしています。」
 「何度もして、嫌われないの。」
 「沙衣は僕をただの助手として扱うだけです。」
 「何度も告白していたら、一歩間違えればストーカーだよ。」
 「まだ嫌われていませんから、セーフです。」
祐二は自信満々に言うと順二は自分のことを話す
 「私もみおに告白したんだ。」
 「2人ならお似合いですよ。もちろんOKですよね。」
 「答えは保留になっているよ。」
 「ここは押すべきです。」
 「彼女は思慮深いから待つことにするよ。」
祐二は、順二のような対応はできないと考える。
 翌日朝から沙衣たちは、河原に立つが霊団は現れない。沙衣が祐二に川の中に立つように言うが祐二は拒否する。
 夕方まで見張るが霊団は現れなかった。沙衣たちはホテルに戻ることにする。
 3日目、大石が様子を見に来るが霊団は現れずに終わる。
 4日目も大石が来る。午後になり沙衣たちにあきらめの雰囲気が漂う。
 大石がみおに言う
 「今日も霊団は現れませんか。」
 「そうですね。早く現れてほしいのですが。」
みおが答える。その後も霊団は現れない。
 夕方近くなるころ、上流から黒い塊が流れてくる。
 みおが言う
 「来たわよ。」
 「堅そうね。」
沙衣が見た感想を言う。霊団は河原の近くに来ると止まり、腕のようなものを伸ばしてくる。
 みおがみんなに言う
 「腕を伸ばしてきたわ。気を付けて。」
しかし、見えているのは、みおと沙衣だけである。他の3人は身構える。
 沙衣が水の刀を作り、霊団の腕を切り飛ばす。さらに水の槍を霊団に飛ばす。
 しかし、霊団は水の槍をはじき返す。
 沙衣は独り言を言う
 「何なのあの霊団。普通じゃないわ。」
みおが柏手を打つと霊団はしびれたように動きを止める。
 沙衣は、その隙に川の水をコントロールして霊団を河原に放り上げる。
 彼女は水の刀を水の槍に変えて、集中して槍を固くする。そして霊団に投げつける。
 槍は霊団に刺さるが浅い、霊団が動くと抜けてしまう。
 霊団は、腕のようなものをいくつも伸ばして来る。
 沙衣は、再び水の刀を作り、腕を切り落として行く。
 みおが経文を唱え始める。すると霊団の動きが鈍る。
 沙衣は水の刀と盾を持ち霊団に迫る。そして、盾を霊団にぶつけると盾からとげが飛び出し霊団を串刺しにする。
 霊団から手のようなものが出てきて沙衣の首を絞める。沙衣は耐えながら水の刀を硬くして霊団に切りつける。
 みおの経文も効いているのか、霊団の形が崩れ始める。沙衣は首を絞めている手を切り落とすと霊団を水の刀で切り裂く。
 すると霊団は、霧散していく。
 みおは大石に言う
 「霊団を退治しました。もう安心ですよ。」
 「ありがとうございます。町が救われました。」
大石は、町長の金子に報告するために帰って行く。
 沙衣がみおに言う
 「みおさん、すごいじゃないですか。経文のおかげで霊団を倒すことが出来ましたよ。」
 「それならよかったわ。私はやれることをやっただけよ。」
 「経文が無ければ、倒すことが難しかったですよ。」
沙衣は、みおがもっと自分に自信を持ってもいいと思う。
 金子は、マスコミに払い屋によって霊団が退治されたことを発表する。マスコミは払い屋の名前を聞くが匿名希望と伝える。
 これで西浦町の河童騒動は終わることになる。
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