勇者失格宣告～魔王と静かに暮らしたい

第2章 建国

第11話 ヴァルハラ王国の勇者召喚

　ヴァルハラ王国では、人間に化けた魔族たちが巨大な魔法陣に魔力を注いでいる。国王のベンヤミン・ド・ヴァルハラが隣にいる神に尋ねる。
　「セベク様、この者たちはどこから来たのです。この様な魔力量を持っていれば高名な魔術師のはずです。」「王よ。気にすることはありません。私の使徒たちです。」
　「そうですかありがたい使徒様にまでご助力を願えるとは、召喚はきっとうまくいくでしょう。」
ベンヤミンは神であるセベクに感謝する。魔法陣が光に包まれると光の柱が教会の天井にまで届く。しばらくすると光は治まり、魔法陣の中に人影がいくつも現れる。
　制服を着た高校生が４０人と４０代の男性教師が現れる。
　「何が起こったんだ。」「授業中だったよな。」「みんな、騒ぐな落ち着け。」
教師が生徒を黙らせる。ベンヤミンは教師に話しかける。
　「お前が統率者か。」「統率？いや、私は教師だ。生徒を守る義務がある。」
　「だったら、今から勇者の選別を行う。全員を並ばせてくれ。」「何を言っている。ここはどこだ。」
　「お前たちは召喚されたのだ。ここはヴァルハラ王国だ。神の御前だ。言うとおりにしてくれ。」「それより、私たちを返してくれ。」
　「もう帰ることはできない。勇者として生きていくしかないのだ。」「無責任だぞ。」
教師は怒り始める。そこへセベクが判定を下す。
　「失格。」「何が失格だって。」
教師はセベクにつかみかかろうとするが兵に取り押さえられる。セベクは生徒たちを選別していく。
　「失格、失格、失格、合格、失格、失格・・・・・」
セベクの選別で６人の生徒が合格になる。失格になった生徒が言う。
　「何だよこれ、勝手に失格とか気分悪いぞ。」「黙れ、無能。」
兵が生徒にけりを入れる。生徒は兵につかみかかろうとするが兵は剣を抜いて突き付ける。女生徒が悲鳴を上げる。兵に取り押さえられている教師が叫ぶ。
　「生徒に手を出すなー」「おとなしく我々の言うことを聞いてくれれば大丈夫ですよ。」
　「横暴な。」「お前は無能だから私と話すことなどできないが、生徒に言うことを聞くようにすれば代表として認めよう。」
　「分かった。離してくれ。」「離してやれ。」
教師は立ち上がる。ベンヤミンは説明を始める。
　「先ほどの選別は勇者か否かを判定したのだ。勇者でない者は我々にとって何の価値もない。だが、６人の勇者が役目を果たすのなら客として優遇しよう。」
　「勇者の役目は何なんだ。」「魔王討伐に決まっている。」
　「生徒を戦わせるのか。そんなことはできない。」「お前は、まだ自分の立場を理解していないな。」
ベンヤミンは兵に向かって手を横に振ってサインを送る。兵は剣を抜くと教師に切りかかる。教師は袈裟切りにされて倒れる。
　「諸君分かったかな。勇者が言うことを聞かないと無能者が死ぬことになる。このようにね。」
生徒たちは恐怖を感じるがベンヤミンを見て心の底に怒りの感情が生まれる。
　勇者に選ばれた生徒たちは話し合う。
　「トウヤ、どうする。」「今は言うことを聞いておこう。俺たちは無力だ。」「トウヤについて行くわ。」
ベンヤミンは勇者たちに言う。
　「勇者諸君、考えはまとまりましたか。」「言うことに従うよ。代わりにほかの者に手を出さないでくれ。」
　「さすがは勇者様、ほかの者は客として扱います。」「お願いします。」
男子のトウヤ、ヒナタ、ケンゴと女子のユキコ、サチ、セネカの６人はヴァルハラ王国の勇者になる。

　ロックはカール、中西、ディルクを集めて民衆にかける税率について話し合う。
　「利益の４割の課税をどうするかだけど、貴族の重要な収入源になっている。その辺を考慮してほしい。」「貴族は今後、不要になります。地方は民主制にするのですから議員給与分があれば足ります。」
カールが貴族の排除を言う。中西が財務大臣の立場で発言する。
　「軍備を拡張するのでなければ、収入は十分に足りています。課税率を下げても問題ないでしょう。」「民衆は重い税に苦しんでいます。少しでも下げた方が良いと考えます。」
ディルクは民衆の立場で発言する。
　「みんな税率は下げた方が良いと考えているのだね。」「急激に下げると貴族たちが反発するでしょう。３割５分ではどうでしょう。」
カールが予想外に慎重論を唱える。ディルクが言う。
　「民衆が苦しんでいるのです。３割にすべきです。」「それでは貴族の税収に打撃を与えます。国をしっかり掌握してから３割にしましょう。」
カールが反論する。ディルクは考え込む。ロックがカールに質問する。
　「国を掌握するのにどの位かかるかな。」「１年、いや半年ください。」
　「ディルク、半年後にさらに減税をするのはどうかな。」「ロック様が、言われるなら賛成します。」
民衆への課税は、利益の３割５分を徴収することになる。デイルクは街の役持ちたちを使って、税が３割５分に減税されることを広める。
　民衆は減税されることが判ると、さらにロックたちを支持する。課税の問題は一応片付く。