勇者失格宣告~魔王と静かに暮らしたい

ぽとりひょん

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第3章 ヴァルハラ王国侵攻

第6話 トウヤ、ロックに会う

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 トウヤたちは王城の門の前に到着する。門兵がトウヤたちに言う。
 「どこの冒険者だ。何か用があるのか。」「僕たちは勇者です。魔王ロックに会いに来ました。」
 「ロック様から話は聞いている。入れ。」「ありがとうございます。」
トウヤたちはあっさりと通される。ユキコが言う。
 「魔王ロックが私たちのことを知っているような口ぶりだったけど。」「会ってみればわかるよ。」
 「相手は一国の王だ。失礼の無いようにな。」
アンドレアスがトウヤたちに注意する。アンドレアスは自分たちの動きがロックに筒抜けになっていると考える。そして、トウヤたちを待ち構えていたのだ。
 自分たちは、ロックの手の上にいる気分になる。トウヤたちがしばらく歩き続けると眼鏡をかけたイケメンが現れる。サチが言う。
 「あの人、かっこよくない。」「サチ、ここは魔王の城の中なのよ。」
セネカがサチを注意する。眼鏡イケメンがトウヤたちに言う。
 「私はフール。ヴァルハラ王国の勇者諸君と騎士団長を歓迎しますよ。」「私はアンドレアスと言います。私たちのことをよく知っているようですね。」
 「あなた方には注目していたのですよ。ロック様がお待ちです。こちらへどうぞ。」
トウヤたちはフールの案内で玉座の間に連れていかれる。玉座にはロックが座っており、両隣にカールとリースが立っている。
 アンドレアスが片膝をつくとトウヤたちも片膝をつく。ロックが声をかける。
 「ヴァルハラ王国を裏切って我が国に亡命でもするつもりですか。」「いいえ、お願いに来ました。」
 「お願いとは何でしょう。」「僕たちの仲間が人質に取られています。助けてください。」
 「君たちは召喚者ですね。」「そうです。召喚させると選別され、勇者になれなかった者は軟禁状態になっています。」
 「助けるとなると我が国はヴァルハラ王国と戦争することになる。」「ロック様、国王のベンヤミンは、バシュラール魔王国を征服するつもりです。」
 「根拠は示せるか。」「僕たちは魔王ロックを殺せと命令されていました。それに軍を使って攻めると言っていました。」
 「君たちに僕を殺すことは無理だ。客人として扱うことにする。下がって休んでくれ。」「ベンヤミンが攻めてきますよ。休んではいられない。」
 「これは、バシュラール魔王国の問題だ。人質を救出することに君はどうやって報いるか考えることだ。」「・・・・・」
トウヤたちは何も言うことが出来ず、下がって行く。リースがロックに言う。
 「お前様、助けてやらないのか。」「まずはみんなの安全が第一だから、助けることが出来るなら助けるよ。」
カールがロックに言う。
 「ヴァルハラ王国を滅ぼすついでに助ければ、彼らに恩を売ることが出来る。」「ヴァルハラ王国を征服するのか。」
 「いや、あくまで魔王を討伐するついでに王家を滅ぼすつもりさ。あの国は神セベクを信仰しているから征服するのではなく利用することにする。」「その方がぎょしやすいな。」
 「だが勝つには情報が欲しい。」「彼らから情報を引き出すか。」
 「騎士団長がいるから情報は持っているはずだが信頼できるかわからん。」「1人づつ聞いてみるか。」
 「警戒されるぞ。尋問のようだとな。」「困ったな。」
 「まず、勇者6人から話を聞こう。その後、騎士団長と話をする。」「カールに任せるよ。」
 「話をするのは、魔王ロック様だぞ。」「僕が聞きだすの。」
 「横で手伝うから大丈夫だよ。」「頼むよ。」
リースがロックに言う。
 「お前様、カールに頼りすぎではありませんか。」「僕は王様としてはまだまだだからね。」
フールがあきれたように言う。
 「魔王として十分な力を持っているのにまだそんなことを言っているのですか。」「ロックはやるから大丈夫ですよ。」
カールが悪い顔をして笑いながら言う。
 翌日、ロックはトウヤたち勇者6人を大部屋に呼びテーブルに着く。
 「おはよう、自己紹介がまだだったね。僕はロック、元勇者の魔王だ。」「勇者だったんですか。」
 「いろいろあってね。魔王をしている。君たち名前は?」「僕はトウヤ、剣士だ。」「私は剣士のユキコ。」「僕は戦士のヒナタ。」「俺は斥候のケンゴ。」「私は魔術師のサチ。」「私はヒーラーのセネカです。」
 「僕は、ヴァルハラ王国と戦っても良いと思っている。」「助けてくれるんですか。」
 「可能なら助けてもいい。だが、情報が足りない。」「知っていることなら、何でも話します。」
 「王都にいる軍はどのくらいいる。」「1000人ほどです。後、魔力が強い者が何人かいた。」
 「魔術師ですか。」「おそらく魔族です。僕たちは、オルドビスの森で神の使徒を名乗る魔族と戦いました。」
 「トウヤは魔族を倒したのかな。」「僕たちだけでは歯が立たなかったよ。勇者タダツグがいたから勝てたんだ。」
 「タダツグはどこへ行った。」「ヴァルハラ王国へ行った。魔族と戦いたいのだと思う。」
 「そうか、わが軍のことは知っていますか。」「知りません。」
 「知らなくてよく助けを頼めるね。」「僕たちは命令されて出発したんです。選択の余地はありません。」
 「分かった。仲間の救出については考えさせてくれ。」「お願いします。」
トウヤたちは部屋を出ていく。カールが自慢げに言う。
 「ほら、ロックはやれるでしょ。」「まだ、騎士団長がいます。」
フールが言う。リースはロックの汗を拭いている。カールは侍女にアンドレアスを呼びに行かせる。アンドレアスは部屋に入るとフールに促されて席に着く。
 「おはよう。僕の名前は分かっていると思うが、君の名前を知らない。自己紹介をお願いできるかな。」「私はアンドレアスと言います。騎士団長で勇者の教育係をしています。」
 「君は、勇者たちが裏切ることに賛成したのかい。」「裏切りは私が考えました。後は彼らと相談して決めました。」
 「騎士団長自ら裏切ったのか。」「そうです、ベンヤミンのやり方に耐えれなくなったのです。」
 「君の家族はどうしている。」「身を隠すように申し付けてあります。」
 「連れて来なかったのかい。」「はい、裏切りを悟られないようにしました。」
 「他にも兵がいたのではないかい。」「近衛騎士と神の使徒がいましたが、オルドビスの森で殺しました。裏切りはばれていないと思います。」
 「我が国はヴァルハラ王国と戦うつもりだ。」「情報が欲しいのではありませんか。」
 「分かるかな。」「私も軍人です。城には1000の兵と神の使徒が数人います。国境には貴族たちの兵が向かうでしょう。おそらく7000ほどだと思います。」
 「我々は3000の兵が国境に向かっていることを掴んでいる。数がかけ離れていないか。」「貴族たちはそれぞれで動いています。最終的には7000でしょう。」
 「分かった。ありがとう。」「私は情報を出しました。人質を救出してください。」
 「約束はできないが可能なら助けよう。」「お願いします。」
アンドレアスは部屋から出ていく。カールがロックに言う。
 「アンドレアスはヴァルハラ王国最強の騎士ですよ。」「それがなぜ勇者の教育係をしているんだ。」
 「王国は勇者に期待をしているのでしょう。彼の情報が正しければ勝てますよ。」「僕は出番なしだよね。」
 「ロックには四天王を率いてセベクと神の使徒を倒してもらいます。」「僕、あいつイラつくから嫌なんだ。」
 「我慢してください。」「分かったよ。」
カールの頭の中では、ヴァルハラ王国を倒す方法が組みあがっているようだ。
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