勇者失格宣告~魔王と静かに暮らしたい

ぽとりひょん

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第5章 メルヘム暗躍

第10話 敗残兵は悪夢を見る

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 アンドレアスは、ちりじりになっていた近衛騎士を集める。集まった騎士たちの話から自分たちが反乱軍の中央付近にいることを知る。ここから後方には貴族たちと指揮を執る者がいるはずだ。
 アンドレアスは前進を指示する。反乱軍はマッチョ兵によって中央を分断された形になっている。反乱軍の兵たちはマッチョ兵の圧倒的な暴力にさらされて茫然としていた。
 そこへ近衛騎士たちが切り込む。兵たちは逃げようにも後ろから押し出されてしまう。近衛騎士たちは数を減らして反乱軍に比べて少数だが士気が高い。兵たちを次々と切り倒して反乱軍に食い込んでいく。
 トウヤたちはサチの炎熱魔法の援護を受けながら戦っていたがマッチョ兵に気づいて、トウヤがサチに炎熱魔法を中止するように指示する。ヒナタがトウヤに言う。
 「あれ、ディートハルトさんの部隊だよな。」「あんなのは他にいないよ。」
 「どうする。」「反乱軍の前の方はタダツグに任せて、後方の反乱軍を倒そう。」
トウヤたちは走って、反乱軍の後方へ移動する。
 タダツグたちは敵兵を葬りながら前進を続けている。タダツグの横ではセリアが剣を振るっている。予備の剣を3本持って来ているが、まだ予備を使わずに剣を振るっている。
 タダツグはセリアがまた剣の腕を上げたと思う。タダツグの率いる2000の兵の士気も高い。セリアに負けじと剣を振るって敵兵を倒していく。
 反乱軍の前方はタダツグたちによって大きく削られている。
 後方へ回り込んだトウヤたちが反乱軍に後ろから食らいつく。サチが援護の炎熱魔法を打ち込む。炎熱魔法は貴族たちがいる所を偶然攻撃する。貴族の何人かが炎にまかれて黒焦げになる。
 「どこから攻撃している。」「いつの間に敵が来ているのだ。」「逃げるぞ、お前たちは私を守れ。」
貴族たちは慌てて逃走するために身近な兵を護衛に付けて後方に逃げ出す。トウヤたちがいる方向へ・・・・・
 トウヤたちが戦っていると軍勢の中から貴族が出てくる。トウヤ、ヒナタ、ユキコ、ケンゴは貴族を逃さない。4人は貴族の足を切り逃げられないようにする。
 この中に指揮官がいるかもしれないのだ。トウヤが大声を上げる。
 「貴族たちを捕えたぞー」
トウヤの声を聞いた兵は剣を手放す。それは後方の反乱軍の中を波紋のように広がる。アンドレアスたちが戦っていた兵も剣を捨てて投降する。
 アンドレアスはあがっている息を整えると剣を掲げて叫ぶ。
 「俺たちの勝利だー」「「「おーっ」」」
近衛騎士たちも声を上げ剣を掲げる。後方の反乱軍との戦闘は終わる。
 しかし、前方の反乱軍の戦闘は続いている。否、戦闘と呼べるものではなかった。タダツグたちは確かに戦っていたが、ディートハルト率いるマッチョ兵は一方的な蹂躙をしている。
 前方の反乱軍は虫に食われる葉のように数を減らしていく。マッチョ兵の行くところ、この世の終わりのような叫び声が響き渡り、反乱軍を狂乱に陥れる。
 タダツグたちが戦っていた兵たちも恐怖に包まれて戦闘が出来る状態ではなくなる。セリアがタダツグに言う。
 「アレのせいね。」「ああ、あれはディートハルトのマッチョたちだ。」
前方の反乱軍を恐怖に陥れて戦闘が終わる。前方にいた反乱軍の兵の生き残りのほとんどが心的外傷を負っていた。
 この戦いでマッチョ兵は伝説となり、ヴァルハラ王国では、悪いことをした子供に親が「マッチョが来るよ。」と脅すようになる。
 ディートハルトの部隊はこのままバシュラール魔王国へ帰って行く。今回は非公式の戦闘介入なのである。
 タダツグたちは、貴族は拘束して、兵たちは解放して家族の待つ家へ帰らせた。法務大臣のセネカが貴族たちを取り調べるが首謀者のクリストハルトは別動隊を率いて飛び出した後、行方不明になっていた。
 貴族たちは教会に引き渡されることなく、城で裁判が行われる。貴族たちは裁判官に国家反逆罪で死刑を言い渡される。
 貴族たちは背教者として火刑になるものと思っていた。ある貴族は判決を言い渡した裁判官に問いかける。
 「私は背教者として処罰されるのではないですか。」「我が国の法律にセベク神を信仰しなければならない法律はありません。国家反逆の罪を犯したので死刑になるのです。」
 「私の信仰は否定されないのですね。」「この法廷で、あなたの信仰を審議することはありません。」
貴族たちは死刑を待つ身となる。
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