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第60話 愛の果て2

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 正気に戻った陽子は、武史の首を絞めていた手を放し、呼びかける
 「大丈夫、武史。」
返事はない。
 救護隊を呼ぼうとするが思いとどまる。
 彼女は彼を独占できる方法を思いつく。
 すでに彼女の心のタガは外れている。
 彼女は風呂場で武史の体を切断し、冷蔵庫に入る大きさにする。
 そして武史の死体を冷蔵庫にしまい込む。
 そして、陽子は武史を食べ始める。
 陽子は人間をやめていく。
 会社を2週間休んだ陽子が久しぶりに出社する。
 地味な服装は相変わらずだが、彼女は妖艶な雰囲気を醸し出している。
 事務所の男性の彼女を見る目が変わる。
 仕事が終わるといつもは声をかけてこない男性社員たちが声をかける
 「帰りに飲んでしかないかい。」
 「食事でもどお。」
陽子は用事があるといって断る。
 彼女が街を歩いていると酒に酔った男が
 「お姉ちゃん、付き合ってよ。」
と言って、路地裏に彼女を連れ込む。
 男は欲望を満たそうとするが、立場は逆転している。
 陽子は男を絞め殺す。

 陽子より10歳年下の武史の彼女、白井日葵しらいひまりは武史と連絡が取れないことを不審に思う。
 そして、武史のことを探し始める。
 彼女は、陽子のアパートに行きつく。
 夜、日葵が陽子のアパートの部屋に訪れる。
 陽子が応対に出る。
 日葵は陽子に言う
 「武史、知りませんか。」
 「知っているわよ。」
 「どこにいますか。」
 「私と一緒にいるわ。」
 「彼に合わせてください。」
 「だめよ、忘れなさい。」
 「私は武史の彼女です。」
 「武史は私の物よ、このことは内緒にしてね。」
日葵は陽子の目におびえる。
 とても人の目には見えなかったのだ。
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