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第72話 紅葉5

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 紅葉は、地面に倒れた鈴鹿に手をかざす。
 鈴鹿に上から大きな力がかかり、彼女はつぶされていく。
 肺がつぶされ呼吸が止まり、心臓もつぶされ動きを止める。
 紅葉はつまらなそうに
 「ふん、こんなものか。」
と独り言を言う。
 たけるの前に夢に出てくる刀鍛冶がいる。
 彼はたけるに言う
 「刀を使いこなせないとは情けない。」
 「どうやったら使いこなせるんだ。」
 「お前の血が知っているだろうが。」
彼はたけるの前から消える。
 たけるは目を覚ます。
 貫かれたはずの心臓は元に回復している。
 たけるは立ち上がる。
 紅葉はたけるに気づき言う
 「死に損ねたか、首をはねてやろう。」
たけるは
 「死ぬのはお前だ。」
と言いながら、刀で左手の手のひらを切り出た血を刀に吸わせる。
 鬼切の刀、羽左衛門ノ贄ノ夜叉は赤く輝く。
 たけるは神速で間合いを詰め上段から切りつける。
 紅葉は手をかざすが刀は止まらない。
 刀は紅葉の力も切り裂いていく。
 紅葉は神速で後ろに下がるが左手のひらを切られる。
 傷口から体液を吸われ、激痛が走る。
 紅葉が鬼の本性を現す口が裂け、目は金色になり、額に2本の角が生える。
 彼女は怒りながら吠える
 「我に傷をつけたな許さんぞ。」
そして、腕を振り、たけるに向けて力を飛ばす。
 たけるは見えないはずの力を刀で切り裂く。
 たけるのこの世ならざるものを見る目が、紅葉の力を影としてとらえているのだ。
 彼は紅葉に神速で迫るが紅葉は手刀を繰り出す。
 手刀を避け、たけるは紅葉の右腕を切り落とす。
 紅葉は激痛に
 「ぎやああぁ」
と叫ぶが、腕を拾い傷口を合わせると傷口はふさがってゆく。
 これまで羽左衛門ノ贄ノ夜叉で切られた鬼は傷口から干からびてゆき、傷口がふさがることはなかった。
 紅葉は上級の鬼の中でも特別な存在である。
 紅葉はたけるに言う
 「貴様ごときにやられはせんよ。」
たけるは紅葉を睨みつけて
 「鬼は切る。」
と言い切る。
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