水の巫女の助手になる

第115話 犬神１

　戌井吉勝いぬいよしかつは、生まれつき人並外れた運動神経の持ち主で、その才能を使って泥棒稼業で暮らしている。
　彼は、マンションなどの高層住宅の高層の階の部屋を狙う泥棒である。
　高層の階の住人は油断して窓にカギをかけていないことが多い、そこを狙うのだ。
　そして、彼はその手口から飛び彦のあだ名を警察に付けられている。
　しかしネットワークカメラなどの普及で、泥棒に侵入した時の姿が捉えられる。
　そこから、彼は警察に追われることになる、警察は路上の防犯カメラなどの映像を調べて彼の行動を調べる。
　そして、とうとう住んでいるアパートを突き止められる。
　警察は彼が２階の部屋にいることを確認してから逮捕の体制を整える。
　玄関はもちろん窓の外にも警察官で固める。
　吉勝は部屋を囲まれていることに感づく。
　警察官が部屋に入ろうとした時には窓から外へ飛び出している。
　しかし外には警察官が待ち構えている。
　彼は外にただ飛び出しただけでなく、隣のアパートの屋根へ飛び上がったのだ。
　そして、彼は屋根伝いに逃げ去ってしまう。
　警察の包囲は役に立たなかったのだ。
　彼はしばらくネットカフェなどを渡り歩き姿を隠す。
　そして、堂々と元のアパートの戻って来ている。
　その間にも飛び彦による被害は増えていく。
　警察は再度逮捕を試みる。
　今度は道路を歩いているところを捕まえようとする。
　警察のヘリコプターも出て飛び彦の姿を捕えている。
　彼は警察の待ち構える網の中に入る。
　しかし、彼を捕えることが出来ない。
　捕まえようにも彼の動きが常識外れに速いのである。
　彼が移動するにつれ、警察官の配備位置が変わっていく。
　飛び彦と警察官の根競べの様相を呈してくる。
　先に値を上げたのは警察官である4時間近く走りまわされた警察官は配備の網を維持できなくなる。
　警察は飛び彦逮捕の決め手に欠けることになる。
　東海警察署の中山刑事に警察本部から連絡が来る。
　中山は、舟戸沙姫に会いに行くことになる。
　沙姫は中山に言う
　「今日はどうしましたか。」
　「飛び彦と警察であだ名される泥棒がいまして。」
　「その泥棒がどうしたのですか。」
　「２回の取り物を逃れています、それも常人離れした動きをしていて捕まえることが出来ないんです。」
　「殺してしまってもよいのですか。」
　「今回は生かして捕まえしてほしいのです。」
　「分かりました、息があるように努めます。」
中山から冷や汗が流れる。