同棲しているけど彼女じゃない～怨霊は恋のキューピット

147話 あやめとデート

　あやめはコートを売っている店に入る。彼女は最初、ゆったりをしたコートを見ていく。コートを羽織っては九郎に見せる。
　九郎は、どれが良いのかわからない。頭を悩ませながら答えていく。
　あやめは、九郎が自分を見てくれるので満足している。彼女はいろんなタイプのカートを羽織るが、九郎の反応が良かった黒に近い灰色のチェスターコートに決める。
　コートを買うと昼になったので、オムライスの店に入る。九郎があやめに言う。
　「この店、前にも入ったね。」「そうね。」
　「あの時は、玉枝さんが撮影会をやっていて驚いたよね。」「そんなこともあったわね。」
あやめは微笑みながら言う。しかし、彼女は「なんで２人の時に他の女の話をするのよ」とちょっとイラッとする。
　２人は食事が終わるとアクセサリーを扱う店を回る。あやめはイヤリングを好んで見ている。
　九郎は、星をかたどったかわいい感じのイヤリングをあやめにプレゼントする。
　彼は神社のバイトのおかげで、何とかイヤリングを買うことが出来たのである。あやめは喜んで言う。
　「ありがとう。ずうっと大事にするわね。」「うん、似合うよ。」
九郎は、あやめのことをかわいく思う。
　２人は、休憩するためにフードコートへ行く。彼らはなんとか席に座り、九郎はアイスコーヒー、あやめはクレープを買う。
　一息ついた九郎はあやめに言う。
　「いろいろあったから、２人で出かけるの久しぶりだね。」「そうね、私の家に住む話どうするの？」
　「えーと、まだ考え中だよ。」「まだ時間あるから、私、急がないよ。」
九郎は、玉枝とのアパートでの生活も悪くないと思っている。あやめの家に住むことになれば実質的に結婚を決めたことになる。
　だが、自分は玉枝とあやめのどちらも選べない状態にある。玉枝は怨霊であるが彼の心はそれを問題にしていない。
　夕方になり、２人は帰ることにする。バスに乗り、久沓神明社へ向かう。
　あやめが玄関の引き戸を開けると一久が出てきて言う。
　「さあ、入って。夕食を食べて行ってくれ。」「はい、お邪魔します。」
　「今日は、玉枝さんいないのかい。」「デートですから。」
　「そうか、玉枝さんいるんだろ。晩酌を付き合ってくれないか。」
玉枝は気配を強くして見えるようになる。