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163話 九郎、一線を越える

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 玉枝が九郎に言う。
 「私でいいの。」「玉枝さんがいいんだ。」
玉枝が九郎の手を握り返して、手にひたいをつける。そして、顔を上げると玉枝の顔は九郎の間近になる。
 少し近づけば口づけできそうな距離だ。玉枝は九郎に言う。
 「私、あなたのものになってもいいわ。」「玉枝さん。」
 「でも、約束して、あやめちゃんも幸せにするって。」「あやめと結婚しろというの。」
 「そうよ、私に幸せな家庭を見せてね。」「僕に出来るかな。」
 「やるのよ。」「分かったよ。」
九郎と玉枝はそのまま口づけをする。
 布団の中で2人は抱き合う。九郎が玉枝の体をまさぐると彼女は全裸になる。
 九郎は手に滑らかで柔らかな玉枝の肌を感じる。
 彼は彼女の胸を揉みしだき、口づけをする。彼の手は下へ移動していく。
 九郎は玉枝と体を重ねる。玉枝の体は九郎を夢見心地にしてとろけさせる。彼は引き寄せられるように玉枝とことを続ける。
 彼は玉枝の胸の中で眠りに落ちる。九郎が目覚めた時には夕方になっている。
 玉枝が九郎に言う。
 「もうおかわりはいいの。」「夢のようでした。」
 「また、してね。」「はい、離しません。」
2人は身なりを整えると部屋を出て居間へ行く。すると、かえでがお茶を入れてくれる。
 一久が居間に来る。彼は2人に言う。
 「随分、長い時間話し合っていたようだけど、話は付いたかな。」「話し合いの場に布団を敷きますか。」
 「君たちは布団の中で話した方が良いように思ったんだよ。」「一久さんの思い通りに事は進んでいますわ。」
 「僕は強制してないよ。良い結果が出てくれればいいんだ。」「僕はあやめも玉枝さんも幸せにすると決めました。」
 「そうか、それは良かった。」
九郎は一久の手の中にいるような気がする。
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