勇者がアレなので小悪党なおじさんが女に転生されられました

第6章 逃亡の旅

第31話 犯人の襲撃

　おとり作戦で、余計なゴミ掃除に俺は疲れて集中力が切れてきた。魔力の制御はこれまで魔法を覚えたころからずっと行ってきたので、呼吸するのと同じくらいに出来るため、魔力は抑えたままだ。
　俺が隙を作ってしまった時、突然、襲われた。俺は相手を確認することが出来ないまま魔力で拘束される。これは魔法ではない。直接、魔力で体の自由を奪ったのだ。
　相手を見ると仮面を付けている。そこへファイアーランスが飛んでくる。そいつは素手でファイアーランスをはじく。ほぼ同時にアニタが上段から剣を振るう。
　しかし、そいつは切られたはずなのに無傷である。アニタの剣はそいつの表面を滑り刃が届いていなかった。そいつは固い魔力の膜を張っていた。
　そいつは翼を背中に生やして飛び上がる。俺はサンダーボルトをそいつに見舞いする。サンダーボルトは人間がショックを受ける程度に抑えてある。
　そいつはサンダーボルトを物ともしなかった。しかし、驚いたように言う。
　「魔法を使えないのではないのか。」「何で知っているの。」
そいつは答える代わりに言う。
　「まあいい、私に魔法は効かないからな。」
俺はそいつの声を知っている。アルノルトだ。すでに地上から魔法が届かない高さになっている。
　「あなた、アルノルトね。」「今頃分かっても遅い。お前は私の得物なのだからな。」
　「魔法が効かないって本当。」「俺たち魔人は人間より魔法に耐性がある。さっきの魔法では全く通用しないぞ。」
魔法に耐性があるだけで効かないわけではない。俺は再び出力を上げてサンダーボルトを使う。アルノルトはサンダーボルトにやられて翼のコントロールを失い墜落を始める。
　俺はウインドバインドでアルノルトを拘束して、ウォーターボールで俺たちを包んで墜落の衝撃に備える。俺たちは家の屋根に墜落する。俺が作ったウォーターボールは家一軒を破壊する。
　アネット、アニタと騎士たちが駆け付けてくる。俺はアルノルトの仮面を外しながら言う。
　「犯人を捕まえたわよ。」
犯人の顔を見て騎士たちが取り乱す。
　「まさか、アルノルト様が・・・」「王女様の言うことが当たったわね。」
アネットはカロリーネに感心して言う。