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第66話 お守り様4

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 沙衣は暗がりの空間に閉じ込められる。
 彼女は自分の失態に怒りつつも、体は自然と動く。
 左手にペットボトルを持つと右腕を掴む相手に向かって、ペットボトルを突き破りとげを突き出す。
 手ごたえはないが、相手は右腕を離す。
 若い男の声が聞こえる
 「良い反応です。お嬢さん。」
沙衣は答えず振り向く。
 そこには青白い顔が浮かんで見える。
 若い男だ、だが人間ではない、額には2本の角が生えている。
 沙衣が連れこまれたところは、真っ暗でなく薄暗い所で湿気が高く壁は濡れている。
 鬼は自分が優位だと思っているのか饒舌じょうぜつに話す
 「現代にも龍神の使いが生き残っているとは驚きです。」
沙衣は相手を観察する
 「命乞いはしないのですか。それとも覚悟を決めている。」
 「もうあなたの運命は決まっているんですよ。」
沙衣と鬼のいる空間に霧が発生し始める
 「目くらましのつもりですか。」
 「無駄なことです。」
霧は濃くなり一寸先も見えなくなる。
 彼女は霧をコントロールして、自分のいる空間を把握する。
 幅2メートル、高さ2メートルほどの地下通路のようである。
 沙衣の後ろから空気が流れ込んでくる出口があるのだろう。
 鬼の動きも見えていなくても霧の中にいる限り丸わかりである。
 彼女は水の刀と盾を作り出す。
 沙衣は早く戻らないと美湖が心配すると思う。
 その頃、美湖は金彦に詰め寄っていた。
 金彦は知らないと言い張っている。
 沙衣の前の鬼が動く。
 彼女は動きが早すぎて身構えることもできない。
 鬼は一瞬で彼女の横をとおりすぎる。
 彼女が後から右肩に痛みを感じる。
 右肩が切られ血が噴き出す。
 「いい匂いだ。あなたはさぞかし美味しいでしょうね。」
鬼があざ笑う。
 沙衣はペンダントにしている稲荷の使いにもらった勾玉に傷をいやすように願いを込める。
 右肩の出血は止まり傷が消える。
 沙衣は鬼に向かってゆく、刀で切りつけるがすべてかわされる。
 「どうしたのですかもっと本気でやらないと死んでしまいますよ。」
鬼は沙衣の動きは遅いとみて笑う。
 小娘は水が操れるだけで、自分に何一つすることはできないのだ。
 お守り様の鬼は勝利を確信する。
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