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とある世界の冒険者
二話目
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「風の音亭」そう呼ばれ冒険者に愛される宿兼酒場の店がガランの大通りから少し外れたところに建っていた。
そこは美味い飯と穏やかな雰囲気の老夫婦、若く溌剌とした印象の娘が人気の店であった。
主に冒険者からの支持が高く、知名度もそれなりに高かったこともあり、店の中はいつも冒険者や町人達で賑わっていた。
そして例に漏れず男も「風の音亭」の虜になり、常連客と化した者の一人であった。
毎日の宿はそこにすると決めており、この宿に帰ってくるために生きているのと自称する程であった。
それはこの宿がまだ名前も知られていない、経営が火の車であった15年前からずっと変わっていない。
店主である老夫婦とも顔見知り以上の関係となり、家族とも呼べる存在となるのも当然の帰結といえるだろう。
そして、その賑わいは今日も今日とて変わらず店の外にも楽しげな声が響いていた。
ガヤガヤと酒と場の雰囲気に酔った者達によって、熱気すら感じられる店内に新たな客が訪れたことを知らせる鈴の音が響いた。
「いらっしゃいませー!……あっ、おかえりなさい!今日も無事にお仕事が終わったんですね!」
「ああ、目標額には達しなかったが日も暮れそうだったしな。切り上げてきた」
沈みかけの太陽の代わりに輝くかのように明るい笑顔を振りまく少女が、男を見て一層その笑顔を輝かせながら対応をする。
その少女と男の姿に周りの少女目当ての客が目ざとく反応した。嫉妬と冗談交じりの殺気を感じた男は苦笑を零した。
まるで美女と野獣のような組み合わせでありながら、見ていてお似合いだと感じる二人が創り出すその空気は周りを自然と笑顔にさせる。そんな力さえあるように感じられる。
しかしそんななか、少女の笑顔に僅かながらも影がさした。
それを男は見逃さず、問いかける。
「どうした?元気がないようだが。何かあったのか?」
その言葉に少女は俯きながらポツリと呟いた。
「貴方は一体…………あとどれくらい冒険者でい続けるつもりなんですか?」
その唐突とも呼べる言葉に対した動揺もなく首を振る。
「分からないよ。でも、そうだな。取り敢えずはこの身体が動くうちは続けるんじゃないかな」
その言葉に少女は…………
side 少女
心なしか優しく聞こえる男の言葉に少女は瞳を潤ませる。
「でも……」
声が震えだす。
「いつ死んでしまうか分からないお仕事じゃないですか……私、怖いんです」
口が勝手に動き出す。
「もう、帰ってこなくなるんじゃないかって。何処かで魔獣に……こ、殺されてしまうんじゃないかって」
自分の言葉に身体を震わせながら、それでも男を真っ直ぐに見つめた。
想像してしまった自身の中の最悪のもの。
男の死。目の前の男が死んでしまったら。
密かに想い続けているこの男が、腕を、脚を、眼を失って自分の眼前に現れたら。
そんなこと、ある訳がない。そう断言できたらどれ程幸せか。
でも、私は貴方を待つしかない。きっと帰ってくると信じるしかできない。
ああ、私にもあの人を助けるだけの力があればよかったのに。
神様は残酷だ。
何故か視界が歪んだ。
side end
全盛期より少しばかり重くなった身体をベッドに預ける。
不思議と自分の身体が溶け出して無くなってしまうかの感覚が男を襲った。
「疲れた、な」
すっかり疲労に弱くなってしまった頭で先程のことを思い出していた。
泣かせてしまった。男は自責に似た感情が湧き上がるのを感じた。
すでに家族とさえ言えるまだ10代の少女を、泣かせてしまったのだ。
彼女の自分へ向ける感情には気づいていた。いや、そのつもりになっていた。
しかし、その想いは自分が思っているよりもずっと大きく、真剣であった。
だが、親愛の情。それよりもずっと真摯な愛。それ程の想いであることを男は未だ知らずにいる。
「考えても仕方がない、か」
男はそう呟く。その言葉には何が込められていたのか、自身にも分からなかった。
男女の愛、生命の神秘、想い、悩み、それでも世界は回り、悪意もまた止まることはない。
ここはザルツの近く、何処かの洞窟。
何の装飾もなく、あるのは魔法陣一つだけ。
しかし、その場からは禍々しさが溢れていた。
そしてその魔法陣からは魔獣が絶えず生まれ続けていた。
そこは美味い飯と穏やかな雰囲気の老夫婦、若く溌剌とした印象の娘が人気の店であった。
主に冒険者からの支持が高く、知名度もそれなりに高かったこともあり、店の中はいつも冒険者や町人達で賑わっていた。
そして例に漏れず男も「風の音亭」の虜になり、常連客と化した者の一人であった。
毎日の宿はそこにすると決めており、この宿に帰ってくるために生きているのと自称する程であった。
それはこの宿がまだ名前も知られていない、経営が火の車であった15年前からずっと変わっていない。
店主である老夫婦とも顔見知り以上の関係となり、家族とも呼べる存在となるのも当然の帰結といえるだろう。
そして、その賑わいは今日も今日とて変わらず店の外にも楽しげな声が響いていた。
ガヤガヤと酒と場の雰囲気に酔った者達によって、熱気すら感じられる店内に新たな客が訪れたことを知らせる鈴の音が響いた。
「いらっしゃいませー!……あっ、おかえりなさい!今日も無事にお仕事が終わったんですね!」
「ああ、目標額には達しなかったが日も暮れそうだったしな。切り上げてきた」
沈みかけの太陽の代わりに輝くかのように明るい笑顔を振りまく少女が、男を見て一層その笑顔を輝かせながら対応をする。
その少女と男の姿に周りの少女目当ての客が目ざとく反応した。嫉妬と冗談交じりの殺気を感じた男は苦笑を零した。
まるで美女と野獣のような組み合わせでありながら、見ていてお似合いだと感じる二人が創り出すその空気は周りを自然と笑顔にさせる。そんな力さえあるように感じられる。
しかしそんななか、少女の笑顔に僅かながらも影がさした。
それを男は見逃さず、問いかける。
「どうした?元気がないようだが。何かあったのか?」
その言葉に少女は俯きながらポツリと呟いた。
「貴方は一体…………あとどれくらい冒険者でい続けるつもりなんですか?」
その唐突とも呼べる言葉に対した動揺もなく首を振る。
「分からないよ。でも、そうだな。取り敢えずはこの身体が動くうちは続けるんじゃないかな」
その言葉に少女は…………
side 少女
心なしか優しく聞こえる男の言葉に少女は瞳を潤ませる。
「でも……」
声が震えだす。
「いつ死んでしまうか分からないお仕事じゃないですか……私、怖いんです」
口が勝手に動き出す。
「もう、帰ってこなくなるんじゃないかって。何処かで魔獣に……こ、殺されてしまうんじゃないかって」
自分の言葉に身体を震わせながら、それでも男を真っ直ぐに見つめた。
想像してしまった自身の中の最悪のもの。
男の死。目の前の男が死んでしまったら。
密かに想い続けているこの男が、腕を、脚を、眼を失って自分の眼前に現れたら。
そんなこと、ある訳がない。そう断言できたらどれ程幸せか。
でも、私は貴方を待つしかない。きっと帰ってくると信じるしかできない。
ああ、私にもあの人を助けるだけの力があればよかったのに。
神様は残酷だ。
何故か視界が歪んだ。
side end
全盛期より少しばかり重くなった身体をベッドに預ける。
不思議と自分の身体が溶け出して無くなってしまうかの感覚が男を襲った。
「疲れた、な」
すっかり疲労に弱くなってしまった頭で先程のことを思い出していた。
泣かせてしまった。男は自責に似た感情が湧き上がるのを感じた。
すでに家族とさえ言えるまだ10代の少女を、泣かせてしまったのだ。
彼女の自分へ向ける感情には気づいていた。いや、そのつもりになっていた。
しかし、その想いは自分が思っているよりもずっと大きく、真剣であった。
だが、親愛の情。それよりもずっと真摯な愛。それ程の想いであることを男は未だ知らずにいる。
「考えても仕方がない、か」
男はそう呟く。その言葉には何が込められていたのか、自身にも分からなかった。
男女の愛、生命の神秘、想い、悩み、それでも世界は回り、悪意もまた止まることはない。
ここはザルツの近く、何処かの洞窟。
何の装飾もなく、あるのは魔法陣一つだけ。
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