とある世界、とある場所にて

晴れのち曇り

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とある世界の冒険者

八話目

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 男はベッドで目を覚ました。
 朝だ。随分と眠りこけていたらしい。いつの間にやら太陽が昇っていた。
 決して気持ちのいい朝というわけではない。むしろ、気の重くなるような、どこか感覚的に暗い朝であった。

 だが、そんな男に構うことはなく時は過ぎていく。
















 とある者は家族の食事を作り、とある者は日課にしている素振りをし、とある者は昨日からずっと寝ずにの対応を考え、とある者は愛する人との朝を優雅に迎えていた。
 
 そしてとある者は反逆の機会を今か今かと待ち望んでいた。







 その中の一体どれほどの数がこの世の変革を望んでいるのだろうか、この神により管理された世界で育った人類が。
 おそらく随分と少ないだろう。なにせ魔獣と呼ばれる外敵はいるものの、それを除けば非常に人類にとって住みやすい環境になるように調されているのだ。
 当然と言えるだろう。

 だが、この世にもいささかの例外は存在する。
 この世界のあり方を知り、驚愕と共に怒りを抱き、解放を望む存在が。
 それは神からの管理を逃れ、調節のために同胞達がされないよう。
 全ての者達が天寿を全うできるように、全ての存在に等しく生が与えられ、不当にそれが奪われないように。

 奪われてなるものか、奪われてたまるものか。
 もう散々奪われた。同胞達の命が捧げられた。
 これ以上、神に好き勝手させて良いわけがない。

 だから、まずは神が行うこの所業を知らせなければならない。
 知らずに安穏と暮らしている者共に知らせなくてはならない。
 これは義務だ、知った者の義務だ。このまま何も知らずに暮らす人々を危険に晒して良い筈がない。

 助けなければ。

 救わなければ。

 知らせなければ。

 この世界は間違っていると。お前達が神と呼ぶ存在はまさに外道畜生と呼ぶべき存在だと。
 この世界に神がいる限り、救いはないと。




















 おお、何処かに御坐おわしますいと尊き神よ、絶対なる神よ、その存在を我等が消し去りたもう。




























 身体が痛い、昨日のせいだろう。

「今日は休むか、流石に疲れが残っている」

 誰に言うわけでもなく、そう男は呟いた。
 時間にしてみれば、ほんの一瞬だった。だが、その時間は非常に濃いもので、男の身体と精神に疲労を残した。

 ベッドから起きて、階段を降り、食事をすることさえ億劫に感じられた。
 だが、いつまでも寝続けているわけにもいかない。
 今日は休むと決めたのだから装備の点検と修理のために武器屋に行く必要がある。
 これは休みの日に男のルーティーンとも呼べるほど毎度している事である。

 そのためにまずはベッドから降りよう、そして朝食を食べる。そこからだ。














「あっ、やっと起きたんですね。今日は随分とゆっくりですけど、お休みですか?」

 男を視界に入れるなりそう声をかけてきたのは、この宿屋の看板娘のだった。

 昨日も帰って来たのが陽が沈んでからだったからか、随分と心配させてしまった。
 心配だと告げた次の日にまた危険を冒しているのだ。罪悪感からか何となく男は彼女と目を合わせにくかった。

「あ、ああ。流石に昨日の疲れが残っていてな。今日は休むことにした」

 そう告げると、彼女は心底安心したと言わんばかりに胸を撫で下ろした。

「そうですか……それが良いです、はい。今日はゆっくり休んで下さいね?」

「ああ、分かってる。取り敢えずは武器屋に行くつもりだ。剣を修理に出さないとな」

 そう男が言うと少し怒ったように男に詰め寄った。

「はぁ……それじゃあお休みにならないでしょう。結局お仕事のことじゃないですか」

 そう言われると男は若干困ったようにポリポリと頭をかいた。

「あー、まあ確かにそうなんだが、こんな時休日くらいしかそういう時間は取れないからなぁ」

 そう、男は普段起きて朝食を食べたら、すぐに冒険者ギルドに向かい、依頼を見繕って、依頼をこなしに街の外に出るというサイクルをほぼ毎日繰り返しているのだ。
 そのお陰でワーカーホリックだのと巷では有名になっているのだ。

 だからだろう、彼女が男に対して心配する言動を毎日のように繰り返すのは。それはきっと男への懸想だけではない。

「本当に、身体には気をつけて下さいね?」

「ああ、分かっている」

 そんな会話を交わしてから男は宿を出た。
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