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一章
第十九話
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「な…………姿を変えられるのか?」
ーーー流石異世界だな、無茶苦茶だ。
信じられない物を見た、まさに今圭はそういう顔をしている。まさかドラゴンが人間の姿に成れるとは思わなかったのだ。仕方の無い反応とも言える。
ちなみにこちらの世界でも古龍が人の姿に成れるとは未だに知らずにいる。
いや、知っている者もいるのかもしれないが、少なくとも周知の事実では無い。
驚愕の表情を浮かべる圭を古龍は不思議そうに眺める。彼女としてもこのような反応をされるとは考えてなかったようだ。
「ふむ……その反応を見るに人種は我ら古龍が貴様らの姿を取れる事を知らなんだか」
しかし、少し考えたように間をとって再度口を開いた。
「まあ、仕方なかろう。我らも態々弱者の姿を取ることは良しとせんからな。とは言え現状この手段が次善の策だ」
その言葉に圭は反応を示すことが出来ない。見惚れていたのだ、かの古龍に。
魂を奪われたか、そう思わずにはいられない程にその美貌の持ち主を見つめていた。
そんな圭の心ここに在らずと言った反応に気を悪くしたように、僅かに美しい顔を歪める。
「おい、聴いているのか貴様。貴様が言ったのだろうが、古龍の姿では困ると」
ーーーいや、そうじゃない。そうじゃないぞ、天然か?天然なのか?確かに困ると言ったがそれは古龍なんていう存在が街にいるのが困るということだ。だから俺が捕まえると言ったのに、通じてないのか……
ーーーだが、こうなっては仕方がない俺には拒否権など無いのだから。出来るだけ騒ぎにならないようにすれば良いか。
「あ、ああ……そうだな、そうだった。いや、少し驚いただけだ。気にしないでくれ」
「そうか、ならば早く行くぞ。スノウリーフとやらに案内せい」
「わかった、こっちだ」
かくして異世界人と伝説の古龍という異色のパーティがスノウリーフに向かい歩き出した。
「あ、そうそうお前名前は?」
「何だ唐突に」
「これから一緒に行くんだ。名前を知っておいた方が何かと都合が良いだろ?」
「…………まあ良い、我が名はイルヴァだ」
「イルヴァか、良い名前だ。俺は新道 圭、よろしくイルヴァ」
「……ふん」
「ふむ……ここか。ここに我が子がいるのか……あやつに何かあってみろ、八つ裂きにしてくれるわ」
スノウリーフに着いた途端にそんな言葉を吐き出す古龍の姿にぶるりと圭は身体を震わせる。
「そんな物騒な事は言わんでくれよ、心臓に悪い」
「貴様の心臓など知るものか」
そう言うなりずんずんとイルヴァは歩き出した。
「ああ、やっぱり不安だ……」
圭は疲れを隠せない表情で深いため息を吐く。
ーーー流石異世界だな、無茶苦茶だ。
信じられない物を見た、まさに今圭はそういう顔をしている。まさかドラゴンが人間の姿に成れるとは思わなかったのだ。仕方の無い反応とも言える。
ちなみにこちらの世界でも古龍が人の姿に成れるとは未だに知らずにいる。
いや、知っている者もいるのかもしれないが、少なくとも周知の事実では無い。
驚愕の表情を浮かべる圭を古龍は不思議そうに眺める。彼女としてもこのような反応をされるとは考えてなかったようだ。
「ふむ……その反応を見るに人種は我ら古龍が貴様らの姿を取れる事を知らなんだか」
しかし、少し考えたように間をとって再度口を開いた。
「まあ、仕方なかろう。我らも態々弱者の姿を取ることは良しとせんからな。とは言え現状この手段が次善の策だ」
その言葉に圭は反応を示すことが出来ない。見惚れていたのだ、かの古龍に。
魂を奪われたか、そう思わずにはいられない程にその美貌の持ち主を見つめていた。
そんな圭の心ここに在らずと言った反応に気を悪くしたように、僅かに美しい顔を歪める。
「おい、聴いているのか貴様。貴様が言ったのだろうが、古龍の姿では困ると」
ーーーいや、そうじゃない。そうじゃないぞ、天然か?天然なのか?確かに困ると言ったがそれは古龍なんていう存在が街にいるのが困るということだ。だから俺が捕まえると言ったのに、通じてないのか……
ーーーだが、こうなっては仕方がない俺には拒否権など無いのだから。出来るだけ騒ぎにならないようにすれば良いか。
「あ、ああ……そうだな、そうだった。いや、少し驚いただけだ。気にしないでくれ」
「そうか、ならば早く行くぞ。スノウリーフとやらに案内せい」
「わかった、こっちだ」
かくして異世界人と伝説の古龍という異色のパーティがスノウリーフに向かい歩き出した。
「あ、そうそうお前名前は?」
「何だ唐突に」
「これから一緒に行くんだ。名前を知っておいた方が何かと都合が良いだろ?」
「…………まあ良い、我が名はイルヴァだ」
「イルヴァか、良い名前だ。俺は新道 圭、よろしくイルヴァ」
「……ふん」
「ふむ……ここか。ここに我が子がいるのか……あやつに何かあってみろ、八つ裂きにしてくれるわ」
スノウリーフに着いた途端にそんな言葉を吐き出す古龍の姿にぶるりと圭は身体を震わせる。
「そんな物騒な事は言わんでくれよ、心臓に悪い」
「貴様の心臓など知るものか」
そう言うなりずんずんとイルヴァは歩き出した。
「ああ、やっぱり不安だ……」
圭は疲れを隠せない表情で深いため息を吐く。
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