氷結セシ我ガ世界

晴れのち曇り

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一章

第三十五話

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「圭!圭!返事をせんか!?」

「坊主!しっかりしろ!」

 イルヴァと店主は最初の悲鳴を聞いた時からずっと圭に語りかけていた。
 しかし、その声が圭に届いているようには思えない。
 何度も叫び、杖を持ちながら悶えていた。
 時折圭は口を開いていたが、イルヴァが耳を近づけても掠れた息しか聞こえなかった。
 声にならない悲鳴を上げる圭の肩を揺らしながら大声で呼び続けてはいるものの、効果があるかすら分からない。

「せっかく出来た旅の道連れだ!そう簡単に逝かせてたまるか!まだ、始まってすら無いのだぞ!?
 娘ももうすぐで我の元から去る!それが定めだ!分かる!だが……それでも……一人は寂しいのだ……
 我を一人にするな…………!」

    *    *    *

 イルヴァは一人だった。
 孤独感に苛まれていた。
 伝説の古龍であるが故に、圧倒的強者であるが故に。
 自分の娘でさえ己に追いつく事は出来ない。
 それ故距離を感じていた。
 それが自然な事だと諦めていた。だが、そんな時に現れたのが圭だ。

 あの男は突然現れた。
 娘が拐われ、怒り狂っている時に運悪く姿を自分の前に晒してしまった。
 当然攻撃した。
 だが奴は耐えた、古龍の攻撃を耐えたのだ。
 面白いと思った、その小さな身体に内包された強大な力が。
 まあ、当然我の方が強かったが。
 それでも我の攻撃を躱し、耐えた存在は少ない。

 此奴ならと思った、娘の捜索に役に立つかと思った。
 だと思ったら、下手人を知っていると言う。
 案内させた、当たり前だな。
 思いの外早く見つかった、安心した。
 娘が拐われた時は生きた心地がしなかった、我も親だからな。

 冒険者になった、執拗に我を殺しに来る羽虫以下の存在だ。
 そんなものに我はなった、あの男と共に旅をすると決めたからだ。
 存外に悪い気はしなかった、あの男と一緒だからだろうか。

 そう言えば圭は異世界人らしい、珍しいが全くいなかったわけではない。
 我は圭をふわふわした雲のような存在だと感じていた。
 その理由が分かった、居場所が無いからか。
 文字通り圭には何も無い、財産も家族も。
 それに気がついた時哀れに思った、同時に共感を覚えた。

 武具屋に行く事になった、冒険者なら無くてはならない物だろう。
 それを失念するとは、本当に異世界から来たのだなと思った。

 我の武器は簡単に決まった、タダでくれると言う。
 ラッキーだ、次は圭だな。



 何故こうなった、どうして止めなかった。








 何故圭の力を過大評価していたのだろう。
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