40 / 42
一章
第三十九話
しおりを挟む
圭は自身の心に住み着いていた黒い感情を吐き出して精神的に落ち着いたのか、憑き物が落ちたような表情をしながら歩いている。
イルヴァから見れば、先ほどの圭の姿は急に遠くを見たかと思えば、次の瞬間には確かな怒りを湛えた瞳で神を呪う言葉を吐き出したのだ。
正直なところ困惑していた。
だが、それと同時に不安でもあったのだ。
いつまた同じ眼をするか分からない。
あの瞳は暗く、怒りと絶望を内包しているように思えた。
もしかしたら圭が自分の前からいなくなるかもしれない、などとイルヴァは柄にもなく不安になった。
だからこそこう言うのだ。
「神はいない。もし仮にいるのであればそいつはただの屑だ。でなければこんな理不尽な事は起こらないはずだからな」
イルヴァは慰めのような言葉を口にした。
お前は正しいと、理不尽を呪うお前のその感情は正当なものだと擁護した。
その言葉の意味を理解したからか、フッと笑いながら何かを振り払うように頭を横に振った。
「そうだな……うん、きっとそうだ」
果たして神と呼ばれる存在が実在するのか、それは古龍にすら分からない。
* * *
少し暗い雰囲気を纏いながらもスノウリーフに帰って来た二人は、すぐに冒険者ギルドへ向かった。
ギルドに入って来た二人を迎えたのは、やはりと言うべきかヴァイオレットだった。
ヴァイオレットはこちらに来い、と言わんばかりにじっと圭の眼を見つめていた。
その目線に気づいたのかは定かではないが、圭は冒険者ギルドで唯一の知り合いの元に足を向けた。
そんな圭の姿にじとっとした眼で見ていた者がいたのだが、それに気がつく事は無かった。
「ようこそいらっしゃいました、圭さん。本日はどのような御用でしょうか」
そう言いながら微笑む彼女の姿を遠目から見ていた他の冒険者達は驚愕とざわめきをもって圭達の方を見た。
時折「どういうことだ?」とか「あのヴァイオレットさんが…………笑った、だと?」とか「そんな……馬鹿な…………」などと言った言葉が聞こえてきたとかこなかったとか。
「『パワーベア』の討伐が終わったからその報告でね」
そう圭が言うと、聞き耳を立てていた冒険者達は別の意味を込めた驚愕の目線を圭達に注いだ。
何せ『パワーベア』はここら辺ではかなり強いモンスターにあたる。
そのモンスターを倒せるのは当然の事ながらかなり実力がある冒険者でなければならない。
だが、圭達はそれほどの実力者に見えなかったのだ。
「もう終わったのですか、やはり早いですね」
ヴァイオレットはそう言いながらあたかもその結果が当然の事であるかのようにさらりと流した。
まあ、圭の実力をじかに目の当たりにしたのだ。
ヴァイオレットのその無反応も当然と言えるだろう。
イルヴァから見れば、先ほどの圭の姿は急に遠くを見たかと思えば、次の瞬間には確かな怒りを湛えた瞳で神を呪う言葉を吐き出したのだ。
正直なところ困惑していた。
だが、それと同時に不安でもあったのだ。
いつまた同じ眼をするか分からない。
あの瞳は暗く、怒りと絶望を内包しているように思えた。
もしかしたら圭が自分の前からいなくなるかもしれない、などとイルヴァは柄にもなく不安になった。
だからこそこう言うのだ。
「神はいない。もし仮にいるのであればそいつはただの屑だ。でなければこんな理不尽な事は起こらないはずだからな」
イルヴァは慰めのような言葉を口にした。
お前は正しいと、理不尽を呪うお前のその感情は正当なものだと擁護した。
その言葉の意味を理解したからか、フッと笑いながら何かを振り払うように頭を横に振った。
「そうだな……うん、きっとそうだ」
果たして神と呼ばれる存在が実在するのか、それは古龍にすら分からない。
* * *
少し暗い雰囲気を纏いながらもスノウリーフに帰って来た二人は、すぐに冒険者ギルドへ向かった。
ギルドに入って来た二人を迎えたのは、やはりと言うべきかヴァイオレットだった。
ヴァイオレットはこちらに来い、と言わんばかりにじっと圭の眼を見つめていた。
その目線に気づいたのかは定かではないが、圭は冒険者ギルドで唯一の知り合いの元に足を向けた。
そんな圭の姿にじとっとした眼で見ていた者がいたのだが、それに気がつく事は無かった。
「ようこそいらっしゃいました、圭さん。本日はどのような御用でしょうか」
そう言いながら微笑む彼女の姿を遠目から見ていた他の冒険者達は驚愕とざわめきをもって圭達の方を見た。
時折「どういうことだ?」とか「あのヴァイオレットさんが…………笑った、だと?」とか「そんな……馬鹿な…………」などと言った言葉が聞こえてきたとかこなかったとか。
「『パワーベア』の討伐が終わったからその報告でね」
そう圭が言うと、聞き耳を立てていた冒険者達は別の意味を込めた驚愕の目線を圭達に注いだ。
何せ『パワーベア』はここら辺ではかなり強いモンスターにあたる。
そのモンスターを倒せるのは当然の事ながらかなり実力がある冒険者でなければならない。
だが、圭達はそれほどの実力者に見えなかったのだ。
「もう終わったのですか、やはり早いですね」
ヴァイオレットはそう言いながらあたかもその結果が当然の事であるかのようにさらりと流した。
まあ、圭の実力をじかに目の当たりにしたのだ。
ヴァイオレットのその無反応も当然と言えるだろう。
0
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる