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第九章 邪神降臨
第312話 駄女神降臨
しおりを挟む◆蒼字(そうじ)の視点
神降ろし……神霊を招き迎えること、または巫女が神霊や死者の霊を自身に乗り移らせて、お告げを請うことを言う。
俺もかつて訳あって神降ろしを実際にやったことがある。しかもそいつは今や俺の式神として使役している犬の風太なわけなんだけど。
風太に関しては運良く全てが上手くいったから良かったけど、本来神降ろしは大変リスクを背負った儀式、神の怒りを買えば何が起こるか想像も出来ない。だから神に敬意や信仰心を伝えるために供物を用意する。つまり捧げ物が必要になるわけだか、それは神の好みにより全くバラバラだ。おとぎ話では生娘の命を百人以上や金銀財宝なんてものもあった。
そこで俺が言いたいのは、神に願うときにはそれ相応のことをしなければならない。無理難題でも、さてここで問題だ!では駄女神こと女神テュケには何が必要なのか?
「まだかなり遠い」
駄女神が神界からこの聖域に向かって来ているのは感じる。駄女神とは言え一応女神、必ずみんなを助けてくれるはず、早いところ来てこの邪神をぶっ倒してほしいが気配からしてまだしばらく時間がかかりそうだ。こうなったら俺が神降ろしで一気にこちらに呼び込むしかない。
運がいいんだか悪いんだかなんとも言えないが、神降ろしをするのに必須の縁は悪い意味で因縁と言えるがしっかりと俺にはある!呼び出すことは可能、問題はさっきも言ったが供物、俺に渡せるのは僅かばかりの魔力と命くらい、普通ならそれでも良いのかもしれないが相手は駄女神だしな~。一体何が良いんだ?
『死ね!』
バアル・ゼブルの一言でワラワラと生贄にされた亡霊が俺を呪い殺そうと向かって来る。
『筆払い』
俺は亡霊を筆に霊力(魔力)を込めて振り払う。
本当は破魔の筆払いをすれば消し飛ばすことが出来たのだが、悲しみと苦しみを纏う亡霊達を視ているとそれをする気にはならなかった。
「くっそ!このままじゃ……」
いくら可哀想だからと言って、このまま払いながら逃げていても捕まり呪いを受けるのは時間の問題。こうなったら一か八か、強制的に呼び出すしかない!
「うおぉぉぉーー」
筆に魔力を込めると筆が一回り二回りと大きくなり二メートル程の筆に変わる。
筆先が墨がつけたように黒くなり俺は筆を持って走る。
「うおぉぉぉーー」
神降ろしを行うには準備が必要、神を呼び出す陣を作らないといけないが、以前見てなんとなく分かったがあの駄女神はムカつくことに相当な力の持ち主、召喚するのには相当な霊力(魔力)を込めて巨大陣を作らないと通れない。
「そなた逃げるつもりか?私が逃がすわけがなかろう」
(違うわ!にげてねぇーよ!)
俺のやろうとしていることなど知る由もないから仕方ないがバアル・ゼブルは攻撃をして来た。
亡霊が俺を囲むように移動させバアル・ゼブル本人が接近戦で来た。
「ぐうーー!くっそー!つえー!」
巨大化した筆で扇の斬撃を受け止めるが、バアル・ゼブルの身体能力は俺を遥かに超えている。受け止めるとふっ飛ばされるわ。手が痺れるわで辛いぞ!
しかし俺はふっ飛ばされなからも陣を書くことを止めない!……と言うか止められない!一度陣を切るとやり直しなる。いやそれよりもやり直すだけの力が俺には残されていない。
「ガハッ!いってぇー」
バアル・ゼブルの攻撃を受け切れずに蹴りが腹部に刺さる。俺は血を吐きながら地面を転がった。
マズイぞ!これは、攻撃が躱せない!
え!?殺される!
俺は倒れた状態から四つん這いになり立ち上がろうとしていると、バアル・ゼブルが持っていた扇が数倍の大きさに変わっており、明らかにトドメを刺そうとしている。大ピンチだった。
「せいやぁー!」
可愛い声とは裏腹に強烈なパンチで鈍い音を出す一撃がバアル・ゼブルの腕を捉えた。扇の振り先は大きくズレ地面を切り裂く。
「リル!?」
「蒼字(そうじ)さん我慢出来ませんでした!ごめんなさい。助太刀します」
リルはそう言って強烈な飛び膝蹴りをバアル・ゼブルに向かってした。バアル・ゼブルは扇で受け止めるが、あまりの力に押し込まれた。
はぁ~まったく情けない。
下がっていると言ってこのザマか!
俺ってカッコワル~………。
でも今はそんなこと言ってる暇はないよな!
リルは俺を信じて助けに来てくれた。
ここでやらなきゃ!男がすたるってな!
「うおぉぉぉーー!」
俺は巨大な筆を扱いながら駆け抜ける。
巨大な陣が描かれ、そこには呪文と言葉が添えられる。しかしそれはこの世界の言葉ではなく日本語であった。
陣を描きながらずっと考えていた。女神テュケを呼び出すのに必要な物……まったく思いつきませんでした。
………陣の中央に書かれていた日本語。
『駄女神出てこいやぁーー!』
誰がこんなことで神降ろしが成功すると思うだろうか、しかし俺の直感が言っている。思いつきでやってしまったことではあるが、アイツならきっとバカにされて黙ってはいられないはず!
『ドゥあれが駄女神じゃーー!言ったヤツ出てこいやぁ!』
(あ!……釣れた。)
陣から黄金の光を放ちながら出てきたのは以前会った時より大きなサイズで美人なのは間違いないのに残念な感じが否めない女神様だった。
10
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