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第七章 師弟の絆
第172話 バイモンとスティン
しおりを挟む「しかし人と悪魔の融合、これがとても
難しいんです。まだ完成にはほど遠い、
サンプルがまるで足りない。そこで
王都ラダマンテュスのみんなには僕に協力
してもらうことにしたんです」
「あんたの実験になんで王都のみんなが
協力しないといけないんだ!ふざけるな!」
ツグハちゃんやスラム街の人達が
こいつの実験の為に苦しめられていたと
思うと怒りが湧いてくる。
「別に協力してくれと頼むつもりはないよ。
あくまで協力と言う言葉の表現をしただけ、
僕は僕がしたい事をやるだけなんだ。
だからそんなに怒らなくて良いよ」
こいつ……やっぱりズレている。
話にならない。もうこいつはいらない……
俺は筆に魔力を込めると陽菜乃
(ひなの)が俺の前に手をかざし
攻撃をしないように止める。
「まだ、話を全部聞いていない!我慢して」
「はぁー分かったよ」
俺は筆を下ろした。
「それで僕にあと何か聞きたいのかな~?」
ニコニコと笑うバイモンとても機嫌が
良さそう。
「ヴィープ、あなたが流行らせたのでしょ、
スラム街で蔓延している薬物ヴィープは
その実験に関係するの?」
「もちろんさ、ヴィープは僕が作った
からね。ヴィープはいわゆる欲望の
増強剤と言ったところかな、悪魔の細胞を
定着させるに必要でね。まずは試し
やすいスラム街の住民でやっていたところさ」
「なるほど、確かに悪魔が取り憑き
やすい人間は欲望に忠実な心を持つ者、
だがそれならツグハちゃん、いや
スラム街の子供にかかっていた呪いは
なんだ!」
「あ~それの事ですね。それも関係
ありますよ。悪魔に人間を定着させる
だけでは足りないのです。彼らの栄養源と
なる純粋な人間、特に子供良いですね。
穢れていることはあまりありませんから、
そしてその者が苦しみを感じる時の
エネルギーが最も彼らの力を引き出
します。私が特別に作った魔獣に呪いの
牙を与え子供を狙わせました。
徐々に苦しみを増し更に恐怖する。
この時生まれるエネルギーは格別
でした」
………「はぁ!?」
さっき陽菜乃(ひなの)に止められた
のに一気に俺の怒りの沸点に到達した。
魔力を大量に放出しバイモンを威圧する。
「う~ん君も興味深い、是非とも実験に
付き合って貰おうかな」
俺の威圧程度では何も感じていない。
それどころかギラギラと俺に興味を示す。
「陽菜乃(ひなの)もう良いな!
こいつをブッ潰す」
「うん、良いよ」
陽菜乃(ひなの)は一歩下がった。
「とても良い!せっかくだ、試そう
アスモデウス君の力を見せてくれ」
「何を言ってる……お…ま…え?
カラダがぁー!」
アスモデウスの身体は今度は縮み
1メートルくらいの身長に、しかしそれと
真逆に両腕が太く肥大化し長さも
三メートルと長く伸び、見た目はなんとも
異様でアンバランスな変異を遂げた。
ブンッと腕を振るったと思うと風圧で
家や傍にある石柱が吹き飛んでいく。
かなりの怪力を持っている。
「さ~アスモデウス行ってらっしゃい」
ブンッと腕を地面に叩きつけロケットの
様に突進俺をそのデカい手で鷲掴みにし、
そのまま奥の壁まで飛んで行った。
「ししょ~、ホワイトさんは大丈夫です。
私達はあいつを相手しましょう」
「そうさ~ね、やるよ!」
◆スティンの視点
やっとだ!私がこの男を追って十五年、
相変わらずいけ好かない男だよ。
この男と会ったのは私が王宮魔術師と
して活動し始めた頃だろうか、バイモンも
凄腕の魔術師として関わることが多くなり
特にその頃から実験、研究と言う言葉を
よく聞いた。まさかあんな外道な行為を
裏で行っていたとは、私には一人息子が
居る。名前はラーゲン、二十二歳と若く
して名のある魔術師となり冒険者を
やっていた。
「魔術師になり母さんをいつか絶対に
超える」
それがラーゲンの口癖だった。
私は決まって「超えられるもんなら
超えてみな!」そう言い返してやった。
本当に私の子か疑いたくなるほど礼儀
正しく育った。それから結婚子供まで
作って、私もとうとうおばあちゃんかい、
認めたくないね~だけど孫娘が可愛くて
堪らない、おばあちゃんになってみるのも
悪くないそう思い始めた頃だった、
ラーゲンが居たパーティが行方不明に
なったのは、私は冒険者ギルドと
協力しすでに人が住んでいない
建物の地下でラーゲンを見つけた。
驚き、悲しみ、怒り、なんの感情か
分からない。けど自分の頬に冷たい物が
流れたのが分かった。無惨な息子の姿、
生きているようにはまるで見えない。
「あ~見つかってしまったか、
もうしばらくは良いと思っていたけど、
流石はスティンさんてすね」
男は淡々と喋る。息子を切り刻み頭に
メスを入れ切り開きながら、何故こんなに
普通でいられるのか?
「スティン、君の息子は素晴らしいよ!
あれだけ苦痛を与えても心が折れな
いんだ!素晴らしい実験材料だよ!」
「バイモンキサマ!殺してやる!」
その後の事ははっきりとは
覚えていない。私はバイモンも殴り
続けていたようで、バイモンは
まったく抵抗しなかったらしい、
私は息子がまだ生きていると聞いて
殴るのを止めた。
バイモンはそのまま投獄され、
息子は救急手術を
受け一命を取り留めた。
しかし息子はまだ目を覚まさない。
脳に直接魔術をかけられた後遺症に
より植物人間となってしまった。
生きてはいるでも生きられていない。
息子の妻と娘が泣いている姿が今でも昨日の
事のように思い出せる。
バイモンは数日後牢屋から忽然と姿を消し、
私は今度こそバイモンを殺す事を誓った。
「バイモン、あんたに私のすべてを
ぶつけるさ!」
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