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第47話 セドリック家
しおりを挟む主催者であり領主であられるセドリック・ヴァルト辺境伯の横には美しい奥さんと娘のアイリスが居た。アイリスはいつも綺麗なお洋服を着ていたが、今日はパーティーだからおめかしをしっかりとして可愛らしい。
初めにヴァルト伯爵の挨拶が行われて、今回のパーティーの趣旨を説明してくれた。ざっくり言うとこれからもより一層仲良く協力し合ってセドリック領を良くしていきましょうと言うこと、ま~当たり前の事で、同時にとても難しいことと思った。それと気になったのはある組織の動向について、組織の名はゴエティア、悪魔を使役して民衆の命を脅かす組織、特にここ最近では死の商人と言われる者が、人々の弱みにつけ込み悪魔と契約させて魂を奪い殺す事件が多発、これに対して国として動いていることの共有と協力願いをしていた。
もしかしたらこれが今回集められた最大の目的だったかも知れない。
「あれ?この話、まさか!?」
この時、俺の中であることが思い当たり、頭に血がのぼり熱くなっていた。
「タクト……どうしたの、顔、怖いなの……」
俺はハッとなり声のする方向を見ると、不安そうな顔をしてアイリスが見上げていた。
「タクトお腹でも痛いの?お医者さん呼ぼう」
アイリスは俺の手を引くが、俺はそれを止める。
「大丈夫だアイリス、ちょっと胸が痛かったかな、でも大丈夫耐えられる」
「そうなの?でもタクトとっても辛そうなの」
アイリスは俺の胸に手を当て優しく撫でる。
「お姉ちゃんが教えてくれたの、こうすると楽になるって、痛いの痛いの遠くへ飛んでいくなの~遠くの遠くに飛んでいけなの~」
俺はアイリスのかわいい仕草についつい笑ってしまった。
「やったーなの!笑ったなの!」
俺はアイリスの手をつかみもう片方の手で頭を撫でる。
「あ~本当だ!痛みがなくなったよ。アイリスは優しいな~」
「えへへ!」
屈託のない笑顔でアイリスは笑った。
本当に癒された。でももしパトリアさんの件も関係していたら………いや、今は考えるのを止めよう。せっかくアイリスが治してくれたんだから。
「もしかして君がタクトくんかな」
げぇ!?俺は声は出さなかったが、驚きとちょっとだけ拒否反応が出てしまった。
「こ、これはヴァルト辺境伯様、私のような者に声をかけて頂き光栄で御座います」
俺の住むセドリック領の領主様、どう相手をすれば、不敬罪にだけはならないようにしないと。
俺は内心超焦っていた。
「いや君、そんなに固くならないでくれたまえ、私はただ娘の友達に挨拶をしたいだけなのだよ」
ヴァルト様はアイリスと同じ銀髪で短く切り揃えられ、とても温厚そうな顔をしている。今も平民の俺に向けて笑顔を向けてくれていた。
「パパ、タクトなの、私の友達なの」
「あ~分かった分かった」
アイリスはヴァルト様の胸に飛び込むように抱きつき、それをヴァルト様が優しく抱き寄せ優しく頭を撫でている。
「タクトくん、娘のアイリスから聞いている。かわいい犬とかわいい妖精さんを連れて、アイリスと遊んでくれたと。とても楽しいと昨日、今日と大騒ぎだよ」
「はぁ~、もしかして困らせてしまいましたか?」
「いやいや、そんなことはない。こんなに嬉しそうなアイリスを見るのは姉のルナが家を出るまえまででね。言い訳になるが、私もそれなりに忙しい身で、アイリスに淋しい思いをさせてしまった」
ヴァルト様の目がより優しく親の目になっているのがよく分かった。俺の中で貴族って言うのは横暴で我儘なヤツばかりと勝手に想像していたが、この二人を見ているとまんざらそうとは限らないみたいだな。
「お~!ヴァルト卿、こちらに居られたか!」
こちらに来たのは目つきが鋭くやや耳障りで甲高い声をした赤と白のストライプと変わったスーツを着た男がガタイの良い護衛を連れてやって来る。
「これはシャックス閣下、お久しぶりで御座います」
ヴァルト様は丁寧なお辞儀をする。
「ええ、ヴァルト卿とは3年ぶりでしょうか、ここ最近では新しく鉱山を発見して、経済が潤っていると小耳に挟んでおります。それを良いことに国民の税収を減らしたと、さすがはローランの息子でありますな。これで国民の人気を取れます。あ~何とやり方が上手いことです」
なんだろうか、シャックス様の言い方はどうにも引っかかるような言い方をする。これではただの嫌味を言っているだけだ。
「ええ、おかげ様で国民の支持を受けることはそれなりに出来たと思います。ありがたい事です」
あれ?思ったよりヴァルト様の気にされていないのかな?
シャックス様もヴァルト様の返答を聞いても特に変わった様子もなく。まるで興味がないようにすら見える。
シャックス様は一度アイリスを見て、それから俺の方に視線を移す。
「おや?こちらの方は見覚えがありませんね。どちらのご子息かな」
まさか俺が声をかけられるとは思わず固まる。
「こちらはバロン男爵の友人のご子息でタクトくんと申します」
俺が動揺したことに気がついて代わりにヴァルト様が答えてくれた。
「バロン……あの男か、ほう~つまり平民か、よくここに顔を出せたものだ。ま~バロンのヤツではそこまで頭が回らんか、剣だけの無能な男よ!」
シャックス様は明らかに不快な顔をして、俺と言うかバロン様のことを悪く言う。腹立つな~ぶん殴ってやりたい!
しかし、平民である俺が貴族、それも上級貴族に手をあげたとなれば、俺はもちろんのこと家族である父さんと母さんにまで危険が及ぶ、くそ~我慢しろオレ!
俺は腕をぷるぷるさせながら我慢した。
「シャックス、そのくらいにして貰おう。我が友人を愚弄することはお前でも許さんぞ!」
現れたのはヴァルト様によく似た壮年の男。
「お~これはこれは、ローラン殿も居られましたか、こんなところで油を売って宜しいのか、あなたが居られなければ王都が大変なことになりますぞ。クッハハハ」
シャックスはいやらしく笑う。
「フッ……失礼した。確かに少々言い過ぎた。非礼を詫びるぞ!ローラン殿、それと平民の少年」
シャックスは言葉では謝っているが、おそらくなんとも思っていない。この男は何を考えているかさっぱり分からない。
シャックスはそのまま、軽く挨拶をすませるとそのままどこかに行ってしまった。
「まさかあの男が来ていたとは、父上が居て助かりました」
「あ~別に大したことはない。そもそも呼んでいないのであろう。私に対するただの嫌がらせだ。むしろお前には迷惑をかけた」
「いや、良いんだ父上、それよりもタクトくんすまない君には何の関係もないのに巻き込んでしまった」
ヴァルト様が眉間にシワを寄せ申し訳無さそうに平民である俺に謝った。
「いえ、そんな畏れ多い。私めは………」
俺はこのまま何も言わなくて良いのか?いつもお世話になっているバロン様に申し訳ないと思わないのか!
「少年よ!言ってしまえ、あやつに聞こえようとも私とバロンで黙らせてやるわ!」
ローラン様はニッと笑う。
本当にローラン様やヴァルト様は、俺の貴族のイメージとだいぶ違うや!
「ヴァルト様すいません!あの男に凄く腹が立ちました。正直ぶん殴りたかったです!………は!?」
やべぇ!勢いで言っちゃった。
ヴァルト様なんてポカーンとして固まってるよ。
「ガッハハハ、良いぞ少年、もっと言ってやれ!な~バロンよ」
ローラン様の後ろからバロン様が現れる。
「はぁー無茶言わんで下さい。うちは男爵ですよ。何個上だと思っているんですか!」
「なんじゃと!?そんなことでどうする!それにお前が男爵で良いと断り続けるからこう言うことになるんだ!さっさと上に上がれ!」
ローラン様の言葉を笑って受け流すバロン様。そして話を終えると俺の前に来る。
「タクトくん、まずはすまない、そしてありがとう。私のために怒ってくれたのだね!本当に嬉しく思う。だけど無茶はしないでくれよ。君にもしものことがあれば私は悲しい、それにノルンも悲しむ。だからお願いだ」
バロン様は俺の肩に手を置き優しく微笑んだ。
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