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第58話 謝罪は胃に悪いです!
しおりを挟む「えー私も行きたいなの!」
「申し訳ありません、旦那様からはタクト様のみお連れするように言われております。アイリス様はお待ちいただくよう…お願いします」
「アイリス我慢しろ。先に部屋に言ってニキ達と遊んでいてくれ」
「ワンちゃんなの!わーい先に言っているなのタクトもすぐ来るなの~」
アイリスははしゃぎながら俺の部屋へと行った。
タリアさんもそれに付いて行く。
「タクト様、ご協力感謝いたします」
メイドは深々と頭を下げる。一つ一つの所作が洗練されている流石は領主のメイドさん、それにフリフリ系のメイド服じゃなく、落ち着いた服装だ。これはこれで良いですな~
「タクト様……どうされましたか?」
おっといけない。ついつい本物のメイドさんに見とれてしまったぜ。
「いえ、なんでもないです。それでは行きましょうか」
俺は誤魔化すように領主様の下へ向かう。
…………………▽
「来てくれたか、タクトくん」
部屋に入ると、仕事部屋なのか?それとも書斎室?両隣に大量の本と書類が棚に置かれている。領主様の部屋にしては少し地味な気がするな~と思いながら部屋に入りまずは挨拶する。
「お待たせいたしました。私に何か御用でしょうか?」
「御用?タクトくんもわざとかい、娘を救われたんだ。領主として褒美の一つや二つ出るに決まってるじゃないか~」
あれ?なんでバロン様まで居るんだ?それに…
「バロン、確かにそうするつもりだが、お前が言うな私からちゃんと言う。お前は黙っていろ。いいな!」
え!?領主様の父上であるローラン様まで居る。
この部屋には、領主のヴァルト様、ローラン様そしてバロン様が集まって俺を待っていたようだ。
俺がどうして良いか分からず立ち尽くしているとヴァルト様が席を進めてくれた。
ウグッ……緊張するぞ!
俺の前にあるテーブルの向こうには、平民の俺より遥かに上の3人が座っており、これには胃がキリキリして痛む。う~異世界に胃薬とかあるかな~
「タクトくん、無事で良かったよ!まさか領主邸で行われるパーティーであんな襲撃が行われるなんて思いもしなかった。助けに行けずすまなかった」
手を膝に置き深々とと頭を下げるバロン様、その顔からは俺への謝罪と不甲斐なかった自分の二つが入り混じった辛そうな顔をしていた。俺としてはバロン様のせいなど微塵も思っていない。申し訳ないので早く声をかけないと。
「バロン様、頭を上げて下さい。ボクは無事でしたし、バロン様には何の落ち度もありませんから」
「タクトくんならそう言ってくれると思っていたけど、そんなことはないさ、大人として子供を守るのは義務だ!それを出来なかった時点で私には色々と足りなかったと思っている。だからすまなかった。でもこれ以上言うとタクトくんが困るだろうからこのくらいにしょうか」
バロン様はいつものように爽やかな笑顔をしてくれた。はぁ~良かった!この人は昔から真面目だから必要以上に思い詰めないか心配になるんだよ。
「それでは、我々からも謝罪と感謝を言わないといけないな~ヴァルト」
「えぇ、もちろんです父上、セドリック家を代表して礼を尽くさねばなりません!」
「ちょっと待って下さい!………謝罪は要らないです。胃がキリキリするんで!」
領主様からそんなことされたら身体がもたん!バロン様でお腹いっぱいだ!
「ヴァルト卿、タクトくんは平民ですし子供なのでそう言ったのは疲れるみたいです。私もなんとなく分かります」
「しかし、バロンそれではセドリック家として面目が立たなくないか?」
「ヴァルトもう良い、タクトくんがそうしたいならそうするべきだ」
「ですが父上、領主邸で起きたのは完全に我々の備えが足りていなかったからだ!それにアイリスまで奴らに………」
「お前の気持ちは分かっておる、それに関してはしっかりと何者が関わっていたか調べんとな!」
俺が余計なことを言ったからヴァルト様とローラ様が言い合いに、それに関わった者?今回の襲撃を画策した人物があの会場に居たってことか?
「ローラン様、今回の襲撃はゴエティアです!もしかしてそのメンバーが貴族様の中に居たってことですか!」
俺はつい気になりローラン様に質問をしてしまった。しかしローラン様は答えず、それに答えたのはバロン様だった。
「タクトくん、それについては気にしなくて良い!これは私達のするべきことだ。タクトくんはこれ以上今回のことに関わらない方が良い」
バロン様の顔が厳しくなった。
そうだよな子供の俺が関わることじゃない。
「申し訳ありません!手過ぎたことを言いました」
その言葉にローラン様が答える。
「少年、心配させるようなことになって、すまないな…必ず、君とアイリスに危害を加えた者を捕えることを約束しよう。セドリックの名にかけてな!」
それから、ヴァルト様とローラン様に感謝されゴエティアのアジトでの件について聞かれたのだがどうしょうと悩んでいたが良い答えが見つからず全部アンディーに助けて貰いました。子供のボクには何も出来ませんでした~と答えておいた。……あとは頼んだアンディー。
俺はこうして何とか解放された。途中アンディーに会ったので用を済ませてからアイリスが待つ部屋に戻る。ローム先生とニキになぜかどやされ、ご機嫌取りのため、食堂に言って美味しいご飯を持って行くのだった。
…………………▽
その頃、アンディーはローランに呼ばれ、話を聞かれていた。
立派な椅子に座り、アンディーはワインを飲みながらローランは資料を見ながら話をしている。
「アンディー良くやってくれた。お前に依頼して正解であったわ。アッハハ」
「笑い事じゃない。酷い目にあったぞ!久々に肝を冷やした」
アンディーはワインを片手に一口のみ、疲れた表情で思い出していた。
「なんだ?らしくないではないか、スリルは楽しめたのであろう」
ローランは少し腑に落ちなかった。確かに今回の案件はアンディーにとってはあまり好きなタイプの仕事ではなかった。アンディーは人を相手にするより謎解きや冒険と言った内容のスリルを好む。しかしスリルはスリル、こいつのことだから楽しんでいたと思ったのだが……
「前半はそれなりに、だがお前の孫娘が捕まったと聞いて、さすがに焦った。見捨てるわけにも……ま~タクトくんが居て助かった」
アンディーの表情が少し歪み、タクトくんの名を出した途端元の表情に戻る。
「ん?…少年はお前が助けてくれたと言っておったが少年はお前の助けになったのか?それならばもっと礼を言っておかねばならんかったな」
「………ん?…どうしたアンディーそんな顔をして」
アンディーが苦笑いをしている。
「あ~やられた。タクトくんは私がすべてやったと言ったんだね!勿体ない。ま~私も名誉とかに興味がないから面倒なのはごめんだ」
「アンディーどう言うことだ!話せ!」
「いや、止めておこう。それと毎度のことだが謝礼とか要らないんで、そこんところ宜しく」
アンディーはまた一口ワインを飲み、窓の景色を見て少し笑った。
「お前と言う男は欲がない。ま~だからこそ信用も出来ると言うものだ。だが話は聞かせてもらわんと困るぞ!」
ローランは食い下がる。
「別に良いだろう。孫娘は無事に助かったんだからただ一つだけ話しておかないとな」
アンディーの顔が真剣になり、そして強張っても見えた。
「ゴエティアの九王(くおう)が居た!」
それを聞きローランは動揺して手が震え書類を落とし床にばらまいたのだった。
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