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第59話 襲撃者を探せ
しおりを挟む「えーーもう帰えちゃうなの~」
領主邸でのパーティーが終わり、ことが落ち着いたので、俺達は帰ることになったのだが、アイリスが俺に抱きついて離してくれない。
「アイリス、ごめんな。ボクは帰らないと」
俺はアイリスの頭に手を乗せ撫でて落ち着かせる。
「イヤなの!もっとタクトと一緒にいたいなの!」
あれ~?上手くいかない。アイリスは拒絶されたと思ったのか余計強く掴まれる。
「タクト…アイリスさまと随分と仲良くなったのね!」
「あ!……ど…どうも」
アイリスに抱きつかれたまま、俺はノルンの怒気をピリピリと背中で感じていた。この後が怖い。
「アイリス、あまりタクトくんを困らせてはいけないよ。そんなことばかりしていては嫌われてしまう」
えっ!?……ヴァルト様まで挨拶に来てくれたの!
「う~ん、タクトに嫌われるのはイヤなの……でも」
ヴァルト様はアイリスを近づくとアイリスの頭を撫でて、話をする。
「アイリス、気持ちは分かる。しかし別れと言うものは必ず訪れるとのだ。な~に気にすることはない。今度はこちらから遊びに行けば良い」
「え!パパ、タクトのお家に遊びに行っても良いなの!」
アイリスは目をキラキラさせて期待でいっぱいになっている。ちょっと待って下さい。ヴァルト様、家はこの屋敷からすれば納屋みたいな物ですよ!絶対に無理ですから!と言える雰囲気ではない。アイリスは納得出来たのか、今は俺を見送る体勢に変わっている。助かったけど……さっきの話は本気なのだろうか……不安である。
「タクトまたなの!」
アイリスがブンブンと手を振る。かわいいな!
俺も馬車から顔を出し手を振って返した。
「ふ~なんとかなった~」
俺は帰れることにホッとして馬車の中に戻り席につくが、新たな危機に迫っていた。目の前にいるノルンの額に青筋が……ピクピクと動いているように見える。
「ね~タクト、アイリス様ってかわいいね!」
この質問は……超難問と言うか、正解のない問いと言ってもいいかもしれない。恐らく肯定しても否定してもノルンの機嫌を損ねるだけだ。考えろ!ここで間違えたら、このあとの約一週間の旅でずっとギスギスした雰囲気の中で過ごすことになる。
「そうだな。アイリスはかわいいよな……」
ムスッとするノルン。
そんな顔するなら聞くなよ!とそう思ってしまうが、それは女心が分からない男の考えなのである。
「……でもノルンはかわいいうえに美人だとボクは
思うよ!」
俺はニッコリと笑顔で答える。
もちろんそんなことを言えば、ノルンは顔を真っ赤にして恥ずかしがるのだが、今回は逃げ場がなかった。恥ずかしさに耐えられなくなったノルンはまさかの行動に出た。俺の意識を刈り取るため俺の顔面をぶん殴る。機嫌を取ることには成功したが想定外のダメージを負うことになった。う~痛い。
「まったくお前はわざと言ってるのか?それともアホなのか?」
アポロンは面倒くさそうに俺の頬に薬草を塗って治療をしてくれていた。
「俺はまだ回復魔法が使えないんだ!言っておくがこんなくだらない理由の怪我を親父に頼むなよ!」
「分かってる。ありがとうアポロン」
アポロンは少し口が悪いところがあるが、怪我をしている人を放ってはおけない性分、断ってもきっと簡単には引き下がらない。ある意味ノルンのツンデレに近いところがある。
「うっせー、怪我人は黙って景色でも見てろ」
俺はアポロンに言われた通り、馬車の窓から外を眺め、アンディーが上手くやってくれているかを考えるのだった。
………………▽
時は少し遡り、領主様達との話を終えた後のこと。
部屋に戻る途中でアンディーと会う。
「やー先程振りだね!どうしたんだい。そんな難しい顔をして?」
「いや、さっき領主様と話をして、今回の襲撃にパーティー参加者で関わっていた者がいたんじゃないかって言ってたから、そこが気になって」
「なるほど、そうだね、この屋敷に悪魔を侵入させるのは容易じゃない。主犯がここに居たかは分からないが何者かの協力者がいたのは間違いないないだろう」
ん~やっぱりいる可能性は高いのか、でもなんでだ?警備が厳しいから?それとも悪魔に対する特別な処置でもされているのか?
「ねぇーアンディーなんで悪魔を侵入されるのが難しいんだ?ボクもそいつ等に襲われたけど最初は顔色の悪い普通の人くらいにしか見えなかったけど?」
「そいつ等には悪魔が取り憑いていたはずだ、ならこの屋敷には入れない。なぜなら屋敷の周りには強力な退魔結界が張られているから、もしも入れるとしたら正門だが、そこではお前も検査を受けたはずだ」
「もしかして、あの水晶みたいな物のことか?」
それを聞いてこの屋敷に来た時を思い出す。
「そうだ、参加者は全員、魔標石(まひょうせき)を腕に当てられ、悪魔の痕跡を確認される。これは悪魔特有の魔力を検知して色が変わる石のだが、つまりそこで発見されていなかったのなら、屋敷の何者かが怪しくなる」
「なるほど……う~ん、それが一番怪しいのか……」
「そう言うこと、でも他にも考え始めたら可能性は
ある」
「そうだよな!スキルが厄介だな、もしかしたら透明化してこっそりと正門を突破したり幻術の類でだまくらかすとか、方法は多くあるけど、それを複数人が扱ったとは考えにくいか」
「さすがはタクトだ!良いところに気がつく、今回の襲撃者にはそれ程強い悪魔がいなかったと思うから現実的には門番の兵士達がもっとも怪しいだからすでに彼らはヴァルト伯爵の命で拘束されているが決定的な証拠もないから、どうして良いか困っている」
「ふ~んそっか、取り敢えず被害はこれ以上増えないのは良いことだ。アンディー正門に行こう」
「ん?今更正門に行っても仕方がないんじゃないか?何か証拠でも落ちてないか探すつもりかい?」
「ま~ま~良いから良いから」
俺はアンディーを連れて正門に向かう。
………………▽
正門には10人程の兵士が詰めており、今は襲撃を受けた日とは別の兵士が対応している。
「何を見に来たんだ!タクト」
「ま~焦るなって、ボクのスキルの中でちょうど良い道具があるんだ~」
俺はツールボックスからメガネを取り出しかける。
「さ~ってここからは運次第だけどやる意味はある」
このメガネでは最大2日前までしか過去の映像を確認出来ない。襲撃者がそれよりも前に入ったら終わりだ、だけど襲撃者の様子からそれはないんじゃないかと思っている。
メガネの力で過去の映像を確認する。これが想像以上に面倒だった。だけどやった甲斐はあったな!
「ビンゴ!犯人みっけ!」
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