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第365話 一歩でも足を踏み出せば……
しおりを挟む◆聖女メリダの視点
バエルは浄化の炎によって焼かれた。
私は腕を負傷したアイリスの下へと向かう。
アイリスは教皇の治療によってほぼ完治していた。ですが腕を焼かれるなど耐え難い痛みを伴ったはず、現にアイリスがあのように苦しむ叫び声は聞いたことがありませんでした。だからこそ私も自我を失うほど怒ってしまった。アイリスには謝らなければなりませんね。
「アイリス……怪我は大丈夫ですか?」
私は膝をつき寄り添い声をかける。
アイリスは痛みからか目を瞑って気を失っていたようで、ゆっくりと瞼が開き、しばらく視線を泳がし、私を見ると、目がぱっちりと開き。抱き着いて来た。
「あ!メリダ!大丈夫なの!どこも痛くないなの!」
優しい子、自分がとても怖い目に遭ったというのに私の心配をしてくれるのですね。
「アイリス、私は大丈夫ですよ。本当にありがとう」
私はアイリスの頭を撫でながらお礼を言った。
アイリスはきっと私の謝罪を求めはしないから……
「母ちゃんすまなかった!俺が不甲斐ないばっかりに、母ちゃんを危ない目に合わせちまった。イリス教教皇として、なにより息子として謝らせてくれ~」
教皇は頭を下げた。
いつまで経っても変わりませんね。
その顔……なんて情けない顔ですか。
「良いのです教皇、あなたは悪くない。………そう言ってもあなたは自分を責めるでしょう。ですので叱ることにします!母ちゃんて呼ぶなと何度言わせるんですか!」
私は軽く飛び上がり、拳を教皇の頭に叩き落とす。
「痛ぁ!」と声を漏らし頭を擦る教皇はなぜか嬉しそうで昔とやはり変わらない。
私が教皇と話をしていると、ブラック夫妻がやって来た。
「ブラックさん、ミルキーさん先程は助かりました」
「いえ、気にしないでください。このような戦いの場では当たり前のことです。それよりも聖杖結界を発動させたいと思います。申し訳ないのですが、急いで頂いても宜しいでしょうか」
「えぇもちろんです。それでは向かいたいと思います。ここは教皇に任せ、私達だけで向かいましょう」
「え!?かぁ、じゃない、聖女様それでは……」
「教皇安心してください。この二人はあなたを止めたほどの実力者、問題はありません、あなたはあちらで囚われているラキ達の救出と治療をお願いします」
「ん、う~ん……分かりました。それでは聖杖結界の発動はお願いします」
「えぇ、分かりました。それではブラックさん、ミルキーさん宜しくお願いしますね!」
「はい!それでは急ぎましょう」
ブラックさんはそう言って私を先導してくれた。
シュ~…………僅かに燻った浄化の炎が燃え尽きた。
グチャ…………崩れる顔、その下には違った顔があった。
………………▽
その頃、タクト達、王城に向かった部隊以外に、実はたった一人単独かつ先行で動いていた者が居た。
「はぁ~なんだ?なんだ?随分と騒がしくなってきたな~、ま!そろそろタクト達が侵入する頃だし、騒がしくもなるか、それじゃ~急いで探しに行きますか」
王城に単独で侵入したのはアンディー、危険なことに挑むのが大好きなドMである。
アンディーはタクトに頼まれある二つの目的のため行動していた。目的はボルジア公爵の居る場所を見つけること、当初話し合いではボルジア公爵は謁見の間に居る可能性が高いと予想はされたが、あくまで高いだけで居るとは限らない。それに侵入者が来たとなれば逃げはしないにしろ、どこかに隠れるかもしれない。そうなると見つけるのが困難になってしまう。そこで脅威を感知するスキルを持ち、かつ逃げ足が速いアンデイーが先行して侵入することになった。
「いや~……緊張感があってゾクゾクする。これはダンジョンとはまた違った感覚だ。確かに貴重な体験をさせてもらっている」
アンディーも流石に今回の侵入に関しては二の足を踏んでいた。王城に侵入?兵士達がゴロゴロと闊歩する中一人で行けって!オイオイどんだけ無謀だよ!と文句をタクトに言ってやった。しかし返ってきた言葉は、今回を見逃したら比較的合法で王城に侵入しても良いタイミングは来ないよ!と、……………確かに!私はまんまと乗せられた。
「ま~最終的には断るつもりもなかったが、思いの外得をしたかもしれない」
通路を進むとT字路に差し掛かる。
「うーん………右の方が黄色っぽいな~、でも黄色くらいならむしろ行っとけか、ん~~………ある程度はリスクを負わないといけないか、フッ!それに楽しそうだしな!」
右側の通路を進む。するとまたしてもT字路に差し掛かった、今度はすべて真っ黄色、注意しろってことだがどうするか、もう結構歩き回ったのに全然見つからないし、ボルジア公爵はもう隠れたかも、チッ、見つけたらこの緑色の玉、音玉を割って大きな音を出して呼ぶことになっていたが、難しそうだな。
「はぁ~、いつ使えるんだよこの緑の玉おえ!?」
オイオイまさか!?こ!これは!…………
「あれ~?こんなところで何をしてるの?」
この少年の声、それにこの真っ赤な色は……危険。
「あ~!お兄さん前会ったことありますよね!」
「き……気のせいじゃないかな~、似ている人って言うのはどこにでもいるもんだよ」
「あ~……確かにそう言いますもんね!でもボク記憶力良いんだ~、ちょっと一緒に来てよ!お兄さん」
「それはちょっと、うっ!?」
………………ダメだ!もう逃げられない。
もう周りが真っ黒だ。
一歩でも足を踏み出せば……『死』
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