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第371話 門番クロア、クリエ
しおりを挟む◆バロンの視点
真っ白な濃い霧、これによって私達は分断されてしまった。ここに居るのは、私以外に妻のスカーレット、娘のノルン、そして火の勇者イグニスにジェーが居た。
私は昔ここで勤めていたこともあり、だいたいの現在地を把握することが出来、霧の中を進む。
「この霧……邪魔だな」
私は鞘から剣を抜き一振り、斬撃は霧を飛ばし目の前が開けていく。
「ん~……予想通りか、まさか真正面に来てしまうとはな。ツイていない」
私達が居るのは主城門、兵士達が最も守りを固めている場所、霧の影響もあってか、いつもより兵士が集まっている。五十人程か、だが問題はそこではない。この主城門にはあの二人、ドルフ兄弟が守っている。
ドシーン……ドシーン……と足音が聞こえる。
「久しぶりだな。クロワ、クリエ、元気にしていたか」
現れたのは五メートル近くの身長を持つ大男が二人、プレートアーマーと言う人体の全身を覆う金属板で構成された鎧を着用し、一人は太刀の様な長い剣を持ち、もう一人はクローと言う爪状の武器を両手に着けていた。
「ご無沙汰しております。バロン様」
「私達は元気が取り柄なので、この通り今も門の番人を任されております。バロン様」
二人は深々と頭を下げる。
「二人ともよしてくれないか、私はもう貴族を辞めて一般人、平民なんだ、気軽に話してほしい」
「そうはいきません!」
「あなたは我らの師」
「その程度のことで……」
「我らの恩は消えはせぬ!」
この二人、相変わらず息が合っている。
交互に喋っているにも関わらず繋ぎ目がない。
「変わらないな。私がお前達に武器の扱い方を教えたのは三カ月ほどだぞ。大したことはやっていないさ」
「そんなことはありません。あなたが居なければ、私達はただの力を振り回す木偶の坊であった」
「我らに戦う技術、そして戦う意味を教えてくれた。バロン様には感謝している」
「フッ…そうか、でもすまないな。私はお前達を裏切るようなことをしなくてはならない。せめて正々堂々相手をさせてもらう」
クロワとクリエの二人は眉間にシワを寄せ難しい顔をする。
「そうでしたか、侵入者はあなた達ですか」
「…………辛い…ですが!我らはこの場を守る者、恩人と言えど通しませんぞ!」
「あ~それで構わない。それでは相手は私が務めよう。すまないがみんなは兵士達を頼む。出来れば大怪我はさせない様に頼む」
ノルンは私が一人で戦うことに不満に思い文句を言っていたが、すぐにスカーレットに黙らされる。イグニスとジェーは面倒くさそうに剣を抜き兵士と戦闘を開始した。
「バロン様!それで行きますぞ!」
「いざ!尋常に勝負です!」
グワッと目を見開き、二人は飛びつくような勢いで向かって来る。クロワは居合斬りのように力をため最速の抜刀を放つ。私はそれに対抗するように同じ速さで抜刀、剣は激突しギリギリと動きを止める。
剣が止めると大きく外側からクリエの長い腕が伸びて来た。手にはクローをはめている。当たれば腹部を引き裂かれ致命傷になり得る鋭い一撃、私は腰に差していた短剣を引き抜き受け止める。
「うん!二人とも武器の扱い方が一段と様になってきている。そして何より兄弟特有の息の合った攻撃、見事だ!」
「そのようなお言葉……」
「我らにはまだ早いかと……」
「ですが!嬉しく思います」
「それでは続きと参りましょう!」
クロアとクリエが武器を動かそうとした瞬間、二人の両腕と両脚に、ほぼ同時に痛みが走る。動こうとしても脚の腱が切られまったく動かすことが出来ず、さらに腕の腱も切られたことで受け身を取れず転倒する。
「「ぐぅっ、ゴッフッ」」
二人は同時に咳き込む。
「ここまでだな。クロワ、クリエ」
私は剣を鞘に収める。
周りを見ると他に居た兵士達もスカーレット達に倒されていた。
「そのようです………門番として情けない」
「ですがパロン様とまた剣を交えられたこと嬉しく思います」
「本当に相変わらずだな~。私のことをそこまで褒めてくれるのはお前達だけだよ。………本当にすまない。ここを通らせてもらう」
「はい、分かりました」
「ご武運を!」
クロワ、クリエは少し上半身を起こしバロンを見送る。その顔は負けたというのに悲壮感はなく、むしろ晴れ晴れとしていた。
私は笑顔で応える。しかしその瞬間血飛沫が飛び散った。クロワとクリエの二人の顔が痛みで歪む。
「ダメですよ。クロワ、クリエ………あなた達は門番なんだから死んでも敵を止めないと」
門の奥から一人の剣士がこちらに歩いて来る。
爽やかな顔をしたその男に猛獣のような闘志を持ち、そして獲物を見つけたと喜ぶ。
来たか……国最強の騎士トリスタン
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