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ORDER01. 殺意の生クリーム
エピローグ
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それから三カ月が経ったが、依然として棗累と結は発見されていない。
累と親しい人間の噂では遺体と心中したのだろうと言われているが、正直なところ葵も噂と同じ事を思っている。帰ってくる事は無いだろう。
だがそれは漠然とした印象ではなく、累が失踪した現場の状況とリゼの存在がそう思わせていた。
あの後、何度訪ねてもLizetteには辿り着けなかった。
たしかに存在したあの場所は更地になっていて、まるで最初から何も無かったようだった。
建物が残っているのなら引越したと思えるが、全てが消えたのだ。不動産屋に問い合わせたら、三年間空き地のままでだという。
けれど葵の手元にはリゼのくれたミルクティがあり、それは消えていない。
(リゼさんが連れて行ったのかもしれない。だってここまで面倒見てくれるなんて、それこそ偶然じゃありえない)
オーダーしたのは累の母親だとしても、では母親をLizetteに連れて行ったのは誰なのだろうか。
葵があの店に辿り着いたのは累の母親に連れて行ってもらったようなものだ。元々存在しない場所に立ち入る事ができたのはあの案内があったからだとしか思えない。ならば累の母親は誰に案内をして貰ったのだろうか。
(きっと累先輩が案内したんだ。お母さんを助けるために)
累の母親がリゼを頼ったのは自分は動く事ができないからだ。
今もまだ眠り続け、意識が戻る見込みは低いと言われている。
Lizetteに入る条件が動けない事だとしたら、きっと棗累も動けない状態になっているのだ。
けれど全ては憶測でしかない。
葵も最初にLizetteを知ったのは母親の紹介だったし、生死を問う証拠ではない。
(あれ?お母さんてどこでLizetteの事知ったの?)
今更ながらそんな事に気付き、葵はテレビを見ている母の隣に座った。
「ねえ、お母さんてどうやってLizetteの事知ったの?」
「リゼット?何それ」
「オーダーケーキのお店。郵便局の先にあった」
「へえ。そんなお店あったの。オーダーケーキって、オリジナルのケーキ作ってくれるの?」
「……何言ってんの。お母さんがパンフレット見せてくれたじゃない」
「パンフレット?何の?ケーキの?」
母は意味が分からないようで、きょとんと目を丸くして首を傾げた。
あの芸術的なケーキを忘れるなんてあるはずがない。
どうしたの、と葵の母は心配そうな顔をした。さんざん心配かけたせいか、少々か保護になっているのだ。
「何でもない。ケーキ食べたいなーって」
「あら、珍しいわね」
「たまにはね」
お店探そう、と適当な事を言って部屋へ戻りLizetteを検索してみるけれどやはり何もヒットしない。
オーダーケーキのお店はたくさんあるけれど、あの芸術的なケーキには巡り合えない。
(……でもLizetteに入る時はオーダーケーキが必用な時。なら会えない方が良いって事なのかな)
葵のオーダーケーキは全て食べ終わった。
手元に残ったのは紅茶だけだ。これを使う事はもう無い。
「さよなら」
葵は三カ月前のミルクティをようやく捨てた。
累と親しい人間の噂では遺体と心中したのだろうと言われているが、正直なところ葵も噂と同じ事を思っている。帰ってくる事は無いだろう。
だがそれは漠然とした印象ではなく、累が失踪した現場の状況とリゼの存在がそう思わせていた。
あの後、何度訪ねてもLizetteには辿り着けなかった。
たしかに存在したあの場所は更地になっていて、まるで最初から何も無かったようだった。
建物が残っているのなら引越したと思えるが、全てが消えたのだ。不動産屋に問い合わせたら、三年間空き地のままでだという。
けれど葵の手元にはリゼのくれたミルクティがあり、それは消えていない。
(リゼさんが連れて行ったのかもしれない。だってここまで面倒見てくれるなんて、それこそ偶然じゃありえない)
オーダーしたのは累の母親だとしても、では母親をLizetteに連れて行ったのは誰なのだろうか。
葵があの店に辿り着いたのは累の母親に連れて行ってもらったようなものだ。元々存在しない場所に立ち入る事ができたのはあの案内があったからだとしか思えない。ならば累の母親は誰に案内をして貰ったのだろうか。
(きっと累先輩が案内したんだ。お母さんを助けるために)
累の母親がリゼを頼ったのは自分は動く事ができないからだ。
今もまだ眠り続け、意識が戻る見込みは低いと言われている。
Lizetteに入る条件が動けない事だとしたら、きっと棗累も動けない状態になっているのだ。
けれど全ては憶測でしかない。
葵も最初にLizetteを知ったのは母親の紹介だったし、生死を問う証拠ではない。
(あれ?お母さんてどこでLizetteの事知ったの?)
今更ながらそんな事に気付き、葵はテレビを見ている母の隣に座った。
「ねえ、お母さんてどうやってLizetteの事知ったの?」
「リゼット?何それ」
「オーダーケーキのお店。郵便局の先にあった」
「へえ。そんなお店あったの。オーダーケーキって、オリジナルのケーキ作ってくれるの?」
「……何言ってんの。お母さんがパンフレット見せてくれたじゃない」
「パンフレット?何の?ケーキの?」
母は意味が分からないようで、きょとんと目を丸くして首を傾げた。
あの芸術的なケーキを忘れるなんてあるはずがない。
どうしたの、と葵の母は心配そうな顔をした。さんざん心配かけたせいか、少々か保護になっているのだ。
「何でもない。ケーキ食べたいなーって」
「あら、珍しいわね」
「たまにはね」
お店探そう、と適当な事を言って部屋へ戻りLizetteを検索してみるけれどやはり何もヒットしない。
オーダーケーキのお店はたくさんあるけれど、あの芸術的なケーキには巡り合えない。
(……でもLizetteに入る時はオーダーケーキが必用な時。なら会えない方が良いって事なのかな)
葵のオーダーケーキは全て食べ終わった。
手元に残ったのは紅茶だけだ。これを使う事はもう無い。
「さよなら」
葵は三カ月前のミルクティをようやく捨てた。
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