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ストーカーゾンビに追われて
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ストーカーに追われ、会えるのはもう病院の待ち合い室でしか手段がなくなってしまった。「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「なんで私達ってこんなになっちゃったんだろ……? 昔はもっと楽しかったのにさぁ……」
「……そうだな」
僕もそう思うよ。だけど―――――
「仕方ないだろ? 俺達は『そういう運命』だったんだよ」
「……そっかぁ……うんめいかあ……ならしかたないよねぇ……」
彼女は笑う。その顔はどこか寂し気で、しかし嬉しそうな表情をしていた。
「……でもね、私はやっぱり―――」
「―――んっ」
僕は彼女の唇を塞いだ。これで最後かもしれないから。
彼女の言葉を遮り、舌を絡める。そしてそのままベッドに押し倒した。
「……ふぅーっ……」
長いキスを終え、息継ぎをする。そしてまたすぐに口を塞ぐ。何度も、何度も。
何分経っただろうか。いつの間にか彼女も僕の首の後ろに手を回し、お互いを求め合っていた。
「――ぷはあっ! はぁ……はぁ……」
どれくらいの時間口づけを交わしていたのか分からない。ただとても幸せだったことだけは覚えている。
「ごめんね……お兄ちゃん……」
「いや……いいよ」
「ありがとう……」
彼女は涙を流しながら微笑むと、静かに目を閉じた。***
「うわああああ!!」
目が覚める。そこはいつも通りの病室で、隣には彼女が寝ていた。
どうやら昨日のことは夢だったようだ。時計を見ると時刻はまだ6時前だった。
「なんてリアルな悪夢だよ……」
まだ心臓が激しく動いている。汗もびっしょりかいていて気持ち悪い。シャワーを浴びて着替えたい気分だ。……まあいいか。今日は休日だしもう少しだけ彼女と過ごそう。
それから数時間後、看護師さんが来て朝ご飯を持ってきてくれた。
今日のメニューは味噌汁と白米、それと焼き魚である。
「いただきます」
「いっただっきま~す!」
二人で手を合わせ食べ始める。美味しいけどちょっと塩味が強いかな。
「ねえお兄ちゃん、今日は何するの?」
「ん?……そうだなあ……」
特に何も決めていない。というより考える暇がなかった。
「じゃあさ、公園に行ってみようよ!」
「えぇ……外に行くのか……。暑いし面倒くさいんだけど……」
「そんなこと言わずに行こうよぉ!」
彼女は駄々っ子のように腕をブンブン振り回す。この仕草を見るのも久しぶりだ。……よし分かった。
「じゃあ行くか」
「やったー! お兄ちゃん大好きぃ!」
彼女は勢いよく抱き着いて頬ずりしてくる。
全く現金な奴め。
***
外に出ると日差しが強く肌を刺した。空を見上げると雲一つない快晴が広がっている。まるで僕達の門出を祝うかのように太陽は輝いていた。
「あっちいなぁ……」
「もう夏だからね! ほら見てよお兄ちゃん! あの雲なんかソフトクリームみたいじゃない!?」
「確かに……言われてみるとコーンフレークにも見えなくはないな……」
こんなクソ熱い中でよくそんな元気でいられるものだ。感心してしまう。
「あ、でも待って……これは流石に無理かも……」
「おいおいしっかりしてくれよ。お前は俺の命綱なんだから」
「うぅ……ごめんなさい……」
僕は彼女に自分の財布を渡す。彼女はこれが無いと生きていけないのだ。
「それにしてもさぁ……」
彼女は僕の顔をまじまじと見つめてくる。
「なんだい? あんまり見つめないでくれよ。恥ずかしいだろ?」
「……本当に別人になったんだね。私とお兄ちゃん」
「そりゃそうだろ。俺はお前の兄貴であってお前の恋人ではないんだぜ?」
「そっか……うん……そうだよね……」
彼女は少し寂しそうな表情をした気がしたが、すぐに笑顔に戻った。
「でも良かったね! これで堂々とデートができるもんね!」
「ははっ、そうだな。それじゃあ行こうか」
僕らは手を繋ぎ歩き出す。これからどんなことが待っているかは分からない。だけどきっと楽しい日々になるだろう。だって、
「ねえお兄ちゃん! 次はどこに行こっか!?」
彼女が傍にいるんだから。
「ははっ、そうだな……まずは腹ごしらえでもするか。朝飯を食べてからまだ1時間も経ってないしな」
「賛成! じゃあパン屋さんに行こうよ! あそこのメロンパンは絶品なんだよ!」
「はいはい、分かったから引っ張らないでくれよ」
こうして僕の新しい人生が始まった。
―――妹を愛してしまった兄の物語が。
「――はっ!」
目が覚める。時刻はまだ深夜3時だった。「……ふう……」
息を整え、深呼吸をする。そしてゆっくりと体を起こした。
「……またか……」
最近になって夢の中に『彼女』が出てくるようになった。しかも決まって最後は同じシーンで終わる。
「……なんなんだよ……一体……」
彼女は僕にとってかけがいのない存在だ。それは間違いないのだが……どうしてこうも気になってしまうのか……。
「……寝るか……」
もう一度横になり目を閉じる。だが中々寝付くことができない。……仕方がない。少し夜風に当たってくるか。
ベッドから出て、部屋の窓を開けると生ぬるい空気が流れ込んできた。不快ではあるが、今の僕にはちょうど良い温度だ。
「……星、綺麗だな……」
暗闇の中で煌めく光は、どこか神秘的で、美しいものに感じた。
「あれは……オリオン座か……」
「なんだ?」
「なんで私達ってこんなになっちゃったんだろ……? 昔はもっと楽しかったのにさぁ……」
「……そうだな」
僕もそう思うよ。だけど―――――
「仕方ないだろ? 俺達は『そういう運命』だったんだよ」
「……そっかぁ……うんめいかあ……ならしかたないよねぇ……」
彼女は笑う。その顔はどこか寂し気で、しかし嬉しそうな表情をしていた。
「……でもね、私はやっぱり―――」
「―――んっ」
僕は彼女の唇を塞いだ。これで最後かもしれないから。
彼女の言葉を遮り、舌を絡める。そしてそのままベッドに押し倒した。
「……ふぅーっ……」
長いキスを終え、息継ぎをする。そしてまたすぐに口を塞ぐ。何度も、何度も。
何分経っただろうか。いつの間にか彼女も僕の首の後ろに手を回し、お互いを求め合っていた。
「――ぷはあっ! はぁ……はぁ……」
どれくらいの時間口づけを交わしていたのか分からない。ただとても幸せだったことだけは覚えている。
「ごめんね……お兄ちゃん……」
「いや……いいよ」
「ありがとう……」
彼女は涙を流しながら微笑むと、静かに目を閉じた。***
「うわああああ!!」
目が覚める。そこはいつも通りの病室で、隣には彼女が寝ていた。
どうやら昨日のことは夢だったようだ。時計を見ると時刻はまだ6時前だった。
「なんてリアルな悪夢だよ……」
まだ心臓が激しく動いている。汗もびっしょりかいていて気持ち悪い。シャワーを浴びて着替えたい気分だ。……まあいいか。今日は休日だしもう少しだけ彼女と過ごそう。
それから数時間後、看護師さんが来て朝ご飯を持ってきてくれた。
今日のメニューは味噌汁と白米、それと焼き魚である。
「いただきます」
「いっただっきま~す!」
二人で手を合わせ食べ始める。美味しいけどちょっと塩味が強いかな。
「ねえお兄ちゃん、今日は何するの?」
「ん?……そうだなあ……」
特に何も決めていない。というより考える暇がなかった。
「じゃあさ、公園に行ってみようよ!」
「えぇ……外に行くのか……。暑いし面倒くさいんだけど……」
「そんなこと言わずに行こうよぉ!」
彼女は駄々っ子のように腕をブンブン振り回す。この仕草を見るのも久しぶりだ。……よし分かった。
「じゃあ行くか」
「やったー! お兄ちゃん大好きぃ!」
彼女は勢いよく抱き着いて頬ずりしてくる。
全く現金な奴め。
***
外に出ると日差しが強く肌を刺した。空を見上げると雲一つない快晴が広がっている。まるで僕達の門出を祝うかのように太陽は輝いていた。
「あっちいなぁ……」
「もう夏だからね! ほら見てよお兄ちゃん! あの雲なんかソフトクリームみたいじゃない!?」
「確かに……言われてみるとコーンフレークにも見えなくはないな……」
こんなクソ熱い中でよくそんな元気でいられるものだ。感心してしまう。
「あ、でも待って……これは流石に無理かも……」
「おいおいしっかりしてくれよ。お前は俺の命綱なんだから」
「うぅ……ごめんなさい……」
僕は彼女に自分の財布を渡す。彼女はこれが無いと生きていけないのだ。
「それにしてもさぁ……」
彼女は僕の顔をまじまじと見つめてくる。
「なんだい? あんまり見つめないでくれよ。恥ずかしいだろ?」
「……本当に別人になったんだね。私とお兄ちゃん」
「そりゃそうだろ。俺はお前の兄貴であってお前の恋人ではないんだぜ?」
「そっか……うん……そうだよね……」
彼女は少し寂しそうな表情をした気がしたが、すぐに笑顔に戻った。
「でも良かったね! これで堂々とデートができるもんね!」
「ははっ、そうだな。それじゃあ行こうか」
僕らは手を繋ぎ歩き出す。これからどんなことが待っているかは分からない。だけどきっと楽しい日々になるだろう。だって、
「ねえお兄ちゃん! 次はどこに行こっか!?」
彼女が傍にいるんだから。
「ははっ、そうだな……まずは腹ごしらえでもするか。朝飯を食べてからまだ1時間も経ってないしな」
「賛成! じゃあパン屋さんに行こうよ! あそこのメロンパンは絶品なんだよ!」
「はいはい、分かったから引っ張らないでくれよ」
こうして僕の新しい人生が始まった。
―――妹を愛してしまった兄の物語が。
「――はっ!」
目が覚める。時刻はまだ深夜3時だった。「……ふう……」
息を整え、深呼吸をする。そしてゆっくりと体を起こした。
「……またか……」
最近になって夢の中に『彼女』が出てくるようになった。しかも決まって最後は同じシーンで終わる。
「……なんなんだよ……一体……」
彼女は僕にとってかけがいのない存在だ。それは間違いないのだが……どうしてこうも気になってしまうのか……。
「……寝るか……」
もう一度横になり目を閉じる。だが中々寝付くことができない。……仕方がない。少し夜風に当たってくるか。
ベッドから出て、部屋の窓を開けると生ぬるい空気が流れ込んできた。不快ではあるが、今の僕にはちょうど良い温度だ。
「……星、綺麗だな……」
暗闇の中で煌めく光は、どこか神秘的で、美しいものに感じた。
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