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解放《ecdysis》
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「ふふっ、うれしいな」
期待は儚くも裏切られ、それが少女の答えだった。
「あ……なんなんだお前、おかしいのか……」
まるきり自分の言動を棚上げした言葉を吐くクルセイダーに、彼女は更に囁く。目線で、自身の胸元を示しながら。
「ねえ、もっと強く」
言われてみれば、彼女の胸を鷲掴みにしていた手から先ほどまでの暴力性はとうに失われ、今はただ添えているだけだった。
「ほら、こんな風に」
言いながらクルセイダーの手首を掴んだ彼女は、ぐいと自分の柔らかな胸に押し付ける。
「えっ」
その甘美な誘惑と、同時に襲い来る猛烈な違和感に、彼の思考は停止してしまったのだろう。ゆっくりと、自分の右腕を掴んだ彼女の白い手を見る。
その親指だけが、なぜだか赤く染まっていた。
「──うあ!?」
ようやく状況を理解した彼は、叫んでその手を振り払いながら後方へ離れようとし、ブルーシートに足を取られ盛大に尻もちをついてしまう。
かぶっていたフードも背に落ちて、まばらに染まった金髪があらわになる。裸電球に照らされた顔立ちと合わせて、年齢は三十手前というところだろうか。
「いたそう。腰だいじょうぶ?」
その姿を眺めながら、少女は言った。結束バンドで完璧に拘束されていたはずの左手の親指を、ぺろりと舐めながら。血のにじんだピンク色のそれは、拘束から皮膚ごと無理やりねじり抜いたことを示しているのだろう。
「さすがにちょっと痛かったけど、さっき胸をギュってしてくれたとき、まぎれてやったらバレなかったみたい。ふふ、びっくりした?」
呆けた顔で彼女の愛らしい声を聞いていた彼は、ふと更に重大な事実に気付き、周囲をきょろきょろ見回しはじめる。
「あ! もしかしてコレを探してる?」
そう言った少女はちょうど、自身の両脚を拘束していた結束バンドを、右手に持ったカッターナイフで切断したところだった。
ちなみにそちら側の親指に彼女は、血と皮膚の破片がこびり付いた結束バンドをぶら下げたままにしている。
──右腕を掴まれ動揺した瞬間、左手から凶器を掠めとられていたことに、彼はまったく気付けなかったのだ。
期待は儚くも裏切られ、それが少女の答えだった。
「あ……なんなんだお前、おかしいのか……」
まるきり自分の言動を棚上げした言葉を吐くクルセイダーに、彼女は更に囁く。目線で、自身の胸元を示しながら。
「ねえ、もっと強く」
言われてみれば、彼女の胸を鷲掴みにしていた手から先ほどまでの暴力性はとうに失われ、今はただ添えているだけだった。
「ほら、こんな風に」
言いながらクルセイダーの手首を掴んだ彼女は、ぐいと自分の柔らかな胸に押し付ける。
「えっ」
その甘美な誘惑と、同時に襲い来る猛烈な違和感に、彼の思考は停止してしまったのだろう。ゆっくりと、自分の右腕を掴んだ彼女の白い手を見る。
その親指だけが、なぜだか赤く染まっていた。
「──うあ!?」
ようやく状況を理解した彼は、叫んでその手を振り払いながら後方へ離れようとし、ブルーシートに足を取られ盛大に尻もちをついてしまう。
かぶっていたフードも背に落ちて、まばらに染まった金髪があらわになる。裸電球に照らされた顔立ちと合わせて、年齢は三十手前というところだろうか。
「いたそう。腰だいじょうぶ?」
その姿を眺めながら、少女は言った。結束バンドで完璧に拘束されていたはずの左手の親指を、ぺろりと舐めながら。血のにじんだピンク色のそれは、拘束から皮膚ごと無理やりねじり抜いたことを示しているのだろう。
「さすがにちょっと痛かったけど、さっき胸をギュってしてくれたとき、まぎれてやったらバレなかったみたい。ふふ、びっくりした?」
呆けた顔で彼女の愛らしい声を聞いていた彼は、ふと更に重大な事実に気付き、周囲をきょろきょろ見回しはじめる。
「あ! もしかしてコレを探してる?」
そう言った少女はちょうど、自身の両脚を拘束していた結束バンドを、右手に持ったカッターナイフで切断したところだった。
ちなみにそちら側の親指に彼女は、血と皮膚の破片がこびり付いた結束バンドをぶら下げたままにしている。
──右腕を掴まれ動揺した瞬間、左手から凶器を掠めとられていたことに、彼はまったく気付けなかったのだ。
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