58 / 252
保護と下山
しおりを挟む
「ピィーーー!!」
森の中から笛の音が聞こえます。
「アルチこっちであってる?」
そう言ってアルチに音がする方向を尋ねます。
だってさっきこっちから聞こえたと思って行こうとしたら逆だったんだもん・・・。
「マサト様、こちらです。そんなに遠くありませんし、ゴブリン達も音の方向に集まって来ているようです」
そう言ってアルチは先導をしてくれます。
「きぁ~~!!」 「いやぁ~~!!」 「こ、こっち来るな~!!」
森の中から複数の悲鳴や泣き声が聞こえて来ます。
うん、やっぱりこうなるよね・・・・。
転移現場に到着したゾルスが転移者に声をかけます。
「皆さん!!我々は敵ではなく皆さんを保護しに来ました」
そう言うゾルスに対し今回転移してきた人達は再度恐怖と混乱の坩堝です。
「きぁ~~!!」 「いやぁ~~!!」 「こ、こっち来るな~!!」「死にたくない!!」
転移者達は周りを囲むゴブリン軍団に、手近な石や木の枝など手に触れる物を投げつけています。
あ~だめだこれ・・・。
「ピロリ~ン♪」
【転移者との接触(1回目・二回目転移者以外) 1位 1452時間4分14秒】【ステータスポイント100・スキルポイント100付与】
そう思いながら転移者に声をかけます。
「みなさ~ん、落ち着いてください!このゴブリンは安全ですから!」
「てかこっちにも石とか投げないで!」
「落ち着いて~~~!!!」
ダメです、恐らく転移してきた人の目には自分は写っていない様な気がします。
「ヴオォォォォォォォォォ!!!!」
突然ゾルスが咆哮を上げます。
肌がビリビリとするような感覚がするくらいの大音量の咆哮のあと静寂が訪れます。
「みなさ~ん!落ち着いてくださ~い!このゴブリンは安全ですから心配しないでください!!」
そう言うと転移者の視線が自分に集まります。
うん、さっきっから此処に居たよ?むしろ今の言葉さっきも言ったよ?
そう思いながら再度転移して来た人たちに自分も転移した日本人でこのゴブリン達は安全だと伝えます。
「ほ、ほんとですか・・・」
やっと絞り出したような声で制服を着た女の子が聞いてきます。
どうやら見る限り高校生ぐらいと数人の大人の一団のようです。
「本当です、自分は2か月前にこの場所に転移してきた日本人で武内真人って言います」
そう言うと転移者達は警戒を解いていないものの安堵の顔を浮かべだします。
ですよね~。
いきなり胴丸付けた足軽風のゴブリンに囲まれた挙句、一際大きなゴツイゴブリンが話しかけてきて怯えない人居ないよね・・・。
そう思いながら転移者の一団に声をかけ、ここは魔物が多く生息する森の奥深くで、自分は転移者がこの場所に来るとネレースから聞いた旨、これから全員を町に連れていく旨、町まで魔物に襲われる心配はない旨を伝えます。
最初は怯えながら猜疑心の目で見ていた一団ですが、少し落ち着きを取り戻したようで話を聞いています。
「とりあえず、今から自分たちが拠点としている砦まで案内しますんで移動の準備をしてください」
そう言って一団に移動準備をお願します。
「おいおい!お兄さん、もう少し声かけてくれるの遅かったら俺があんたの配下のゴブリンをこの剣で皆殺しにする所だったぜ~!!」
そう言って高校生ぐらいの男が剣を掲げて立ち上がります。
うん、足震えてるよ?
そう思いながら高校生ぐらいの男に声をかけます。
「そう?よかったね?切りかからなくて、一応人間は襲わないように言ってあるけど攻撃された場合は反撃許可してるから切りかかってたら殺されてたかもよ?」
そう言うと高校生っぽい男は黙り込みます。
うん、君、安全とわかった瞬間に強気に出るってどうなの?
むしろさっきまで、一団の真ん中あたりで腰抜かしてたよね?
そう思いながら転移者の一団を連れて砦に向かいます。
恐らくこの速度だと砦まで3日はかかりそうだな・・・。
前回同様、むしろ人数が多い分前回より町まで日数がかかりそうです。
どうやら一団の内訳は大人の男性3人、大人の女性2人、女子高生23人、男子高生9人の37人のようです。
大人の5人に先生ですか?って聞いたら普通のサラリーマンとOLさんでした。
うん、転移者をどういうくくりで転送してるのか基準が分からん。いやネレースの事だから絶対適当だ。
そう思いながら一団を誘導しつつ山を下ります。
1時間くらいは異世界についての質問とかをしながら歩いていましたが2時間もしないうちに遅れ気味になる人が出てきます。
うん、やっぱりレベル補正ないからすぐに体力の限界来るよね。
そう思いつつ小まめに休憩をはさみながら山を下ります。
予想していた通り砦まで1/4位の所で夕方になりました。
とりあえず極力平坦な場所を探し、錬成術で地面を柔らかくしてゾルスやカウア達ミノタウロスが木を抜いて行きます。
アルチ達サンダーウルフとゴブリン軍団は散会して周辺警護に当たっています。
夜になったらゾルスとバルタやカウア達に魔物の死骸を渡してゴブリン軍団の兵糧代わりに運んでもらおう。
そう思いながら近くに居たゴブリン軍団の一隊に天幕を張る作業をしてもらいます。
一張で7.8人って聞いていたのでとりあえず6張り用意してもらいます。
その間ゾルスとバルタは石を積んで釜戸を作り火を起こして夕食の準備をしています。
「えっ、魔物が料理してる!!てか何か手際いいんだけど・・・」
そう言って驚いた顔で女子高生達が見ています。
そして男子高生たちは「ウゲェ魔物が作った飯かよ」とか思い思い口にしています。
うん、いやなら食べなくてもいいんだよ?アイテムBOXにパンと干し肉あったでしょ?それでも食べてなさい。
そんな会話を気にする事なくゾルスとバルタはテキパキと料理をしていきます。
「あ、あの~、武内さんって言いましたよね?助けに来ていただいて、こんな事言うのは重々承知していますが・・・あのゴブリンが料理してますけど食べても大丈夫なんですよね?」
そう言って声をかけて来たのはスーツを着た30代前半位の男性で山本さんだそうです。
「大丈夫ですよ。食材は町で仕入れた物ですし、衛生管理もしっかり教えてますし、前回、2回目の転移者の時から彼らが料理してますし」
そういうと山本さんは安心したように皆のもとにもどり説明をしています。
ですよね~転移後最初の食事がゴブリンが作ったご飯って心配ですよね~。
そう思いながらスーツや制服そして革靴では歩きづらいと思うのでアイテムBOXから着替えや運動靴肌着や下着などを出して今のうちに今日の着替えや今後しばらく必要な分の肌着や下着、洋服を各自選んでもらいます。
うん、女性陣の冷たいジト目に今回も射抜かれます・・・。
そうこうしているうちに食事が完成したようですので、全員に食事が出来た旨を伝えアイテムBOXから木のお椀とお皿、そしてスプーンとフォークを各自に渡していきます。
最初は恐る恐る口にしていましたが、食べだしたらバクバク食べ始めます。
うん、うちのゾルスとバルタは料理の腕は一流だよ。
文句を言っていた男子高生もバクバク食べています。
お前らはアイテムBOXあるパンでも食ってろ!!
そう思いながら自分も食事をとります。
うん、おいしい。
そして食事が終わると焚火を囲んで異世界の話と町までの行程を伝えます。
まずはレベルやステータスの事、魔法の事、ランキング特典の事、拠点としているプレモーネの町の事、この世界の事や転移者を取り巻く状況を話します。
全員は食い入るように聞き入り、都度質問をしていきます。
やはり急に異世界に飛ばされて混乱しているので自分たちを取り巻く現状や情報には興味があるようです。
因みに大人の男性3人と女性2人は同じ会社の同僚で、高校生組は同じ学校の同級生で学校の行事で福岡に来ていて博多駅で転移に巻き込まれたようです。
転移前の部屋には他の同級生も居たとの事ですが、この大陸が広い事と転移場所はランダムのようなので再会は難しそうだと伝えます。
うん、女の子たちからすすり泣きが聞こえて来ますが変な期待を持たせるより現実に目を向けて頂かないと今後が大変なので容赦なく現実を突き付けさせて頂きます。
そして夜も遅くなったので各自適当な人数でテントに入り寝るようです。
とりあえず自分もホームセンターで仕入れて来たワンタッチテントを広げて寝床を準備した後、ゾルスとバルタは、カウア達に魔物の死体を渡して周辺警戒にあたるゴブリン軍団に届けてもらい、自分は寝ることにします。
61日目
今回は悲鳴のモーニングコールは無いようです。
目が覚めてテントから出るとゾルスとバルタが朝食を作っていますが、その中に数人の女子高生が混ざって料理をしています。
この光景は予想外だ・・・。
そう思いながら声をかけると昨日最初に喋った女の子が挨拶をしてきました。
「おはようございます。」
「うん、おはよ~。ていうか昨日の今日でゴブリンと一緒に料理って度胸あるね」
そういうと女の子、松本さんという名前だそうですが、松本さんは笑いながら昨日の料理の手際を見て自分も手伝いがてら料理をしてみたくなったとの事です。
うん、前回も思ったけど女性陣は強い・・・。
それに比べて男性陣はテントからコソコソ覗いている状況です。
そんなこんなで朝食を済ませ、ゴブリン軍団に天幕を片付けてもらい出発準備をします。
そして出発前に前回の転移者同様にゴブリン軍団よって捕えら縛り上げられた魔物を槍で刺し殺してもらいます。
「た、武内さん?な、なんでこんなことをする必要があるんですか?」
そう言う山本さんに昨晩話したレベルの話を再度して安全かつ確実にレベルを上げる為だと伝えます。
レベルが上がってステータスが上がれば疲れにくくなるので一日の移動距離も伸びそれだけ早く町に着くことも伝えます。
そう言うと最初に槍を採ったのは女子高生達です。
「こ、この槍で刺せばいいんですよね?」
震えるような声で確認をしてきます。
「そうですよ、ただ足とか腕、それに腹とかは即死しないで騒ぐんで胸の辺り、心臓とか頭部を思いっきり刺してください」
そう言うと大きく深呼吸をし縛られた魔物の胸を目掛け槍を刺します。
「ザクッ」
っというような感じの音がして魔物が暴れしばらくすると動かなくなります。
緊張していたのか肩で息をして呼吸を整えています。
「1人2匹づつぐらい魔物を捕獲して来てますんでどんどん刺していってください」
そう言うと意を決したのか女子高生達とサラリーマン組が槍を持ち魔物を刺していきます。
ただ男子高生組はまだその光景を眺めているだけで槍を持とうともしません。
うん、ヘタレだ。
そう思いつつ男子高生組に声をかけ槍を持たせ魔物をつくよう促しますがなかなか刺せないようです。
遂には女子高生たちからブーイングが飛び出します。
さすがに男子高生組も女子たちのブーイングは堪えたようで意を決して魔物に槍を刺していきます。
うん、ヘタレが多いと出発が遅れるんだよね。
そう思いながら後処理をゴブリン軍団に任せ、というよりゴブリン軍団の食事の時間という事でアルチ達サンダーウルフに護衛と周辺警戒を任せ山を下っていきます。
ゴブリン軍団は食事が終わったら追い付いてくるでしょう。
62日目の朝、
今朝も女子高生達はゾルスとバルタと共に朝食を作っています。
さすがに昨晩は歩き疲れて料理の手伝いどころでは無かったようですが若いって良いですね~。一晩寝たら元気になっていますよ・・・。
とは言え予想以上に下山が進まずまだ砦までの道のりの半分にも届きません。
そうは言っても進まない事には行けないのでとりあえず食後に毎朝恒例となる捕えた魔物を刺す作業をしてもらいます。
さすがに2日目ともなると躊躇いも少なくサクサク刺していきます。
そして刺し殺した魔物は一行が出発後にスタッフが美味しく処理致しました。
63日目の朝
何とか転移場所から砦までの行程を半分を超え残すは1/3弱ぐらいの所に来ました。
あと2日位で砦到着でしょうか。
今朝も女子高生達はゾルスとバルタと共に朝食を作っています。
うん、キャッキャウフフと何か楽しそうなんですけど・・・。
女子高生適応力パネー。
そう思いながら朝食を食べて、恒例の魔物刺しを行い下山を再開します。
一応強行軍で砦まで今日中に行く案と余裕を持って2日で砦に行く案を提示しましたところ強行軍派はやはり少なく余裕をもって砦に行く方向で決まりましたので下山を開始します。
昼を回った頃、小休止を終え歩き始めた直後、
「ワァォォォォ~~~~~ン!!!」
突然アルチが遠吠えをします。
「アルチどうしたの?」
急に遠吠えをしたアルチに何が起きたのか確認をします。
「マサト様、プレモーネに残っていたイルチがこちらに向かって来ています」
「イルチが?なんで?」
「そこまでは分かりませんがイルチの遠吠えが聞こえました、今の遠吠えで我々の場所を概ね把握したと思いますので暫くしたら合流すると思います」
そういうアルチの言葉ですが、町に居るはずのイルチが自分を探して来るって事は絶対面倒事かトラブルが発生したって事だよね・・。
まあイルチから話を聞くまでは何が起きたか分からないのでとりあえず下山を続けます。
森の中から笛の音が聞こえます。
「アルチこっちであってる?」
そう言ってアルチに音がする方向を尋ねます。
だってさっきこっちから聞こえたと思って行こうとしたら逆だったんだもん・・・。
「マサト様、こちらです。そんなに遠くありませんし、ゴブリン達も音の方向に集まって来ているようです」
そう言ってアルチは先導をしてくれます。
「きぁ~~!!」 「いやぁ~~!!」 「こ、こっち来るな~!!」
森の中から複数の悲鳴や泣き声が聞こえて来ます。
うん、やっぱりこうなるよね・・・・。
転移現場に到着したゾルスが転移者に声をかけます。
「皆さん!!我々は敵ではなく皆さんを保護しに来ました」
そう言うゾルスに対し今回転移してきた人達は再度恐怖と混乱の坩堝です。
「きぁ~~!!」 「いやぁ~~!!」 「こ、こっち来るな~!!」「死にたくない!!」
転移者達は周りを囲むゴブリン軍団に、手近な石や木の枝など手に触れる物を投げつけています。
あ~だめだこれ・・・。
「ピロリ~ン♪」
【転移者との接触(1回目・二回目転移者以外) 1位 1452時間4分14秒】【ステータスポイント100・スキルポイント100付与】
そう思いながら転移者に声をかけます。
「みなさ~ん、落ち着いてください!このゴブリンは安全ですから!」
「てかこっちにも石とか投げないで!」
「落ち着いて~~~!!!」
ダメです、恐らく転移してきた人の目には自分は写っていない様な気がします。
「ヴオォォォォォォォォォ!!!!」
突然ゾルスが咆哮を上げます。
肌がビリビリとするような感覚がするくらいの大音量の咆哮のあと静寂が訪れます。
「みなさ~ん!落ち着いてくださ~い!このゴブリンは安全ですから心配しないでください!!」
そう言うと転移者の視線が自分に集まります。
うん、さっきっから此処に居たよ?むしろ今の言葉さっきも言ったよ?
そう思いながら再度転移して来た人たちに自分も転移した日本人でこのゴブリン達は安全だと伝えます。
「ほ、ほんとですか・・・」
やっと絞り出したような声で制服を着た女の子が聞いてきます。
どうやら見る限り高校生ぐらいと数人の大人の一団のようです。
「本当です、自分は2か月前にこの場所に転移してきた日本人で武内真人って言います」
そう言うと転移者達は警戒を解いていないものの安堵の顔を浮かべだします。
ですよね~。
いきなり胴丸付けた足軽風のゴブリンに囲まれた挙句、一際大きなゴツイゴブリンが話しかけてきて怯えない人居ないよね・・・。
そう思いながら転移者の一団に声をかけ、ここは魔物が多く生息する森の奥深くで、自分は転移者がこの場所に来るとネレースから聞いた旨、これから全員を町に連れていく旨、町まで魔物に襲われる心配はない旨を伝えます。
最初は怯えながら猜疑心の目で見ていた一団ですが、少し落ち着きを取り戻したようで話を聞いています。
「とりあえず、今から自分たちが拠点としている砦まで案内しますんで移動の準備をしてください」
そう言って一団に移動準備をお願します。
「おいおい!お兄さん、もう少し声かけてくれるの遅かったら俺があんたの配下のゴブリンをこの剣で皆殺しにする所だったぜ~!!」
そう言って高校生ぐらいの男が剣を掲げて立ち上がります。
うん、足震えてるよ?
そう思いながら高校生ぐらいの男に声をかけます。
「そう?よかったね?切りかからなくて、一応人間は襲わないように言ってあるけど攻撃された場合は反撃許可してるから切りかかってたら殺されてたかもよ?」
そう言うと高校生っぽい男は黙り込みます。
うん、君、安全とわかった瞬間に強気に出るってどうなの?
むしろさっきまで、一団の真ん中あたりで腰抜かしてたよね?
そう思いながら転移者の一団を連れて砦に向かいます。
恐らくこの速度だと砦まで3日はかかりそうだな・・・。
前回同様、むしろ人数が多い分前回より町まで日数がかかりそうです。
どうやら一団の内訳は大人の男性3人、大人の女性2人、女子高生23人、男子高生9人の37人のようです。
大人の5人に先生ですか?って聞いたら普通のサラリーマンとOLさんでした。
うん、転移者をどういうくくりで転送してるのか基準が分からん。いやネレースの事だから絶対適当だ。
そう思いながら一団を誘導しつつ山を下ります。
1時間くらいは異世界についての質問とかをしながら歩いていましたが2時間もしないうちに遅れ気味になる人が出てきます。
うん、やっぱりレベル補正ないからすぐに体力の限界来るよね。
そう思いつつ小まめに休憩をはさみながら山を下ります。
予想していた通り砦まで1/4位の所で夕方になりました。
とりあえず極力平坦な場所を探し、錬成術で地面を柔らかくしてゾルスやカウア達ミノタウロスが木を抜いて行きます。
アルチ達サンダーウルフとゴブリン軍団は散会して周辺警護に当たっています。
夜になったらゾルスとバルタやカウア達に魔物の死骸を渡してゴブリン軍団の兵糧代わりに運んでもらおう。
そう思いながら近くに居たゴブリン軍団の一隊に天幕を張る作業をしてもらいます。
一張で7.8人って聞いていたのでとりあえず6張り用意してもらいます。
その間ゾルスとバルタは石を積んで釜戸を作り火を起こして夕食の準備をしています。
「えっ、魔物が料理してる!!てか何か手際いいんだけど・・・」
そう言って驚いた顔で女子高生達が見ています。
そして男子高生たちは「ウゲェ魔物が作った飯かよ」とか思い思い口にしています。
うん、いやなら食べなくてもいいんだよ?アイテムBOXにパンと干し肉あったでしょ?それでも食べてなさい。
そんな会話を気にする事なくゾルスとバルタはテキパキと料理をしていきます。
「あ、あの~、武内さんって言いましたよね?助けに来ていただいて、こんな事言うのは重々承知していますが・・・あのゴブリンが料理してますけど食べても大丈夫なんですよね?」
そう言って声をかけて来たのはスーツを着た30代前半位の男性で山本さんだそうです。
「大丈夫ですよ。食材は町で仕入れた物ですし、衛生管理もしっかり教えてますし、前回、2回目の転移者の時から彼らが料理してますし」
そういうと山本さんは安心したように皆のもとにもどり説明をしています。
ですよね~転移後最初の食事がゴブリンが作ったご飯って心配ですよね~。
そう思いながらスーツや制服そして革靴では歩きづらいと思うのでアイテムBOXから着替えや運動靴肌着や下着などを出して今のうちに今日の着替えや今後しばらく必要な分の肌着や下着、洋服を各自選んでもらいます。
うん、女性陣の冷たいジト目に今回も射抜かれます・・・。
そうこうしているうちに食事が完成したようですので、全員に食事が出来た旨を伝えアイテムBOXから木のお椀とお皿、そしてスプーンとフォークを各自に渡していきます。
最初は恐る恐る口にしていましたが、食べだしたらバクバク食べ始めます。
うん、うちのゾルスとバルタは料理の腕は一流だよ。
文句を言っていた男子高生もバクバク食べています。
お前らはアイテムBOXあるパンでも食ってろ!!
そう思いながら自分も食事をとります。
うん、おいしい。
そして食事が終わると焚火を囲んで異世界の話と町までの行程を伝えます。
まずはレベルやステータスの事、魔法の事、ランキング特典の事、拠点としているプレモーネの町の事、この世界の事や転移者を取り巻く状況を話します。
全員は食い入るように聞き入り、都度質問をしていきます。
やはり急に異世界に飛ばされて混乱しているので自分たちを取り巻く現状や情報には興味があるようです。
因みに大人の男性3人と女性2人は同じ会社の同僚で、高校生組は同じ学校の同級生で学校の行事で福岡に来ていて博多駅で転移に巻き込まれたようです。
転移前の部屋には他の同級生も居たとの事ですが、この大陸が広い事と転移場所はランダムのようなので再会は難しそうだと伝えます。
うん、女の子たちからすすり泣きが聞こえて来ますが変な期待を持たせるより現実に目を向けて頂かないと今後が大変なので容赦なく現実を突き付けさせて頂きます。
そして夜も遅くなったので各自適当な人数でテントに入り寝るようです。
とりあえず自分もホームセンターで仕入れて来たワンタッチテントを広げて寝床を準備した後、ゾルスとバルタは、カウア達に魔物の死体を渡して周辺警戒にあたるゴブリン軍団に届けてもらい、自分は寝ることにします。
61日目
今回は悲鳴のモーニングコールは無いようです。
目が覚めてテントから出るとゾルスとバルタが朝食を作っていますが、その中に数人の女子高生が混ざって料理をしています。
この光景は予想外だ・・・。
そう思いながら声をかけると昨日最初に喋った女の子が挨拶をしてきました。
「おはようございます。」
「うん、おはよ~。ていうか昨日の今日でゴブリンと一緒に料理って度胸あるね」
そういうと女の子、松本さんという名前だそうですが、松本さんは笑いながら昨日の料理の手際を見て自分も手伝いがてら料理をしてみたくなったとの事です。
うん、前回も思ったけど女性陣は強い・・・。
それに比べて男性陣はテントからコソコソ覗いている状況です。
そんなこんなで朝食を済ませ、ゴブリン軍団に天幕を片付けてもらい出発準備をします。
そして出発前に前回の転移者同様にゴブリン軍団よって捕えら縛り上げられた魔物を槍で刺し殺してもらいます。
「た、武内さん?な、なんでこんなことをする必要があるんですか?」
そう言う山本さんに昨晩話したレベルの話を再度して安全かつ確実にレベルを上げる為だと伝えます。
レベルが上がってステータスが上がれば疲れにくくなるので一日の移動距離も伸びそれだけ早く町に着くことも伝えます。
そう言うと最初に槍を採ったのは女子高生達です。
「こ、この槍で刺せばいいんですよね?」
震えるような声で確認をしてきます。
「そうですよ、ただ足とか腕、それに腹とかは即死しないで騒ぐんで胸の辺り、心臓とか頭部を思いっきり刺してください」
そう言うと大きく深呼吸をし縛られた魔物の胸を目掛け槍を刺します。
「ザクッ」
っというような感じの音がして魔物が暴れしばらくすると動かなくなります。
緊張していたのか肩で息をして呼吸を整えています。
「1人2匹づつぐらい魔物を捕獲して来てますんでどんどん刺していってください」
そう言うと意を決したのか女子高生達とサラリーマン組が槍を持ち魔物を刺していきます。
ただ男子高生組はまだその光景を眺めているだけで槍を持とうともしません。
うん、ヘタレだ。
そう思いつつ男子高生組に声をかけ槍を持たせ魔物をつくよう促しますがなかなか刺せないようです。
遂には女子高生たちからブーイングが飛び出します。
さすがに男子高生組も女子たちのブーイングは堪えたようで意を決して魔物に槍を刺していきます。
うん、ヘタレが多いと出発が遅れるんだよね。
そう思いながら後処理をゴブリン軍団に任せ、というよりゴブリン軍団の食事の時間という事でアルチ達サンダーウルフに護衛と周辺警戒を任せ山を下っていきます。
ゴブリン軍団は食事が終わったら追い付いてくるでしょう。
62日目の朝、
今朝も女子高生達はゾルスとバルタと共に朝食を作っています。
さすがに昨晩は歩き疲れて料理の手伝いどころでは無かったようですが若いって良いですね~。一晩寝たら元気になっていますよ・・・。
とは言え予想以上に下山が進まずまだ砦までの道のりの半分にも届きません。
そうは言っても進まない事には行けないのでとりあえず食後に毎朝恒例となる捕えた魔物を刺す作業をしてもらいます。
さすがに2日目ともなると躊躇いも少なくサクサク刺していきます。
そして刺し殺した魔物は一行が出発後にスタッフが美味しく処理致しました。
63日目の朝
何とか転移場所から砦までの行程を半分を超え残すは1/3弱ぐらいの所に来ました。
あと2日位で砦到着でしょうか。
今朝も女子高生達はゾルスとバルタと共に朝食を作っています。
うん、キャッキャウフフと何か楽しそうなんですけど・・・。
女子高生適応力パネー。
そう思いながら朝食を食べて、恒例の魔物刺しを行い下山を再開します。
一応強行軍で砦まで今日中に行く案と余裕を持って2日で砦に行く案を提示しましたところ強行軍派はやはり少なく余裕をもって砦に行く方向で決まりましたので下山を開始します。
昼を回った頃、小休止を終え歩き始めた直後、
「ワァォォォォ~~~~~ン!!!」
突然アルチが遠吠えをします。
「アルチどうしたの?」
急に遠吠えをしたアルチに何が起きたのか確認をします。
「マサト様、プレモーネに残っていたイルチがこちらに向かって来ています」
「イルチが?なんで?」
「そこまでは分かりませんがイルチの遠吠えが聞こえました、今の遠吠えで我々の場所を概ね把握したと思いますので暫くしたら合流すると思います」
そういうアルチの言葉ですが、町に居るはずのイルチが自分を探して来るって事は絶対面倒事かトラブルが発生したって事だよね・・。
まあイルチから話を聞くまでは何が起きたか分からないのでとりあえず下山を続けます。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
322
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる