器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

ダンジョン100階層にて

テーブルの上に並べられた本の山、そしてその近くに無造作に置かれた様々な武器や防具、カトレアは何故か楽しそうに部屋の端に置かれた品々を漁っては次々に積んでいる。

「いや、いきなり私の質問に答えないと殺すとか言ってたのに、なぜ急に修行モードに切り替わるの？　色々教えて力が付いたらカトレアを倒そうとするかもしれないのに…」
「そうね、まあそれで倒されて消滅するならそれはそれでいいけど、まあカツヒコの事だからそんな事はしないでしょ？　なんたって私をここから出してくれるなんて言った人間は初めてだしね」

えっ？　言ってないよ！
ていうか口調変わってない？
何故にフレンドリーになったら急に女の子口調？

それに、ここから出れたら何したい？　って聞いた記憶はあるけど、出すなんて一言も言ってないよ？
確かに長年こんなところに閉じ込められていた事にも同情する言葉は言ったかもしれないけど、どこをどう聞き間違えたらそうなるんだ？

そんな事を心の中でツッコミながらも、とりあえず、逃げれないし、魔法や剣技なんか教えてくれるみたいだから教えてもらうけど…。
なんか自分の感覚がおかしくなってる気がする…。
ダンジョンの最下層でノーライフキングに修行を付けてもらうのを普通に受け入れてるし…。

「それで解放するって言ってもこの結界をどうするの？　普通に考えて解除できるとは思えないんだけど」
「そうね、この結界は神聖属性で出来ているから、貴方が結界の元を発見して解除すればいいのよ。　まあ出来なかった時は諦めて私がここに居続けるだけだから」

そうサバサバとした感じで話しながら、教材となるだろう書物と武器などを用意している。
うん、最初の印象と全く違うな、心なしか楽しそうだし…。
最初は明らかにアンデッドの親玉で生ある者の命を刈り取る為だけに存在している感じだったのにな。

「さて、じゃあまずはこの魔導書の中から貴方と相性の良さそうな物から覚える所から始めようかと思うけど、その前に、貴方は魔法についてどの程度知識があるの？」

そう言うカトレアに、一通り使える魔法を伝えると、なんか、大きくため息を盛大につかれた気がする…。

「要は、魔法については初歩というか基本しか知らないという事ね！　そのくせ魔法を変にアレンジして使ってるようだけど、普通は貴方が使ってる浄化魔法はそんな風に使うなんて普通しないわよ！　何？そのスプレーのようなイメージって、そんな使い方出来る人間がこの世界に何人いるか…」
「それは特殊で間違った使い方をしてるって事？」

そう言うとカトレアは呆れたように首を横に振り、自分の使い方は熟練の人でも使えないだろう応用の極みだと説明した。
どうやら浄化魔法は普通、目の前の物、せいぜい1～2メートル以内に魔力を集めて浄化するだけで普通は噴射して離れた距離にある物を浄化したりしないらしい。
うん、イメージとしてスプレーを噴射する感じで使ってたんだけど違うんだ…。

そう言われても、色んなラノベ読んだりしてたから、魔法＝イメージって感じなんだよね…。

だから発動時にこんな感じ？　的なイメージをしながら使ってたら出来たみたいな？
とは言えカトレアいわく、この世界ではその考え方がイレギュラーらしい。
どうやら、この世界の人は、魔法はこういう物！　って感じの固定観念があるらしく、固定観念を覆すイメージをするのが苦手なようです。

「とりあえず、貴方の普通じゃない魔法の使い方は置いておいて、魔法について説明するわよ」

そう言って、カトレアは魔法について説明を始める気満々だ。
まずは座学か…。

これで講習中に寝たら殺されるだろうな…。