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18.その下腹部に淫紋を
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「ハァ……ハァ……」
「カ、カオルさん! しっかり!」
六道はもうどこかへ消え去ってしまったけれど、まだ気を抜くことはできない。
カオルの能力は元々、一度使っただけでも相当に体力を消耗する代物だ。それを3連続で撃ったのだから、その反動は計り知れない。
(しかも……2回目を放った時のあの燃えるような紅い瞳、あれはきっと、威力と引き換えに体への負担も大きくするものだ)
「ユウくん、どうしましょう……あ! ポーション! ポーションがあります! あれを飲めば……」
マルカはおろおろと慌てふためきながら、おばあさんから貰った薬をカオルに少し飲ませた。でも
「うっ、くぅっ……」
「ダメだマルカ、この薬はあくまで『傷治し』。今のカオルに使っても効果はないと思う……」
「だけどこのままじゃ!」
「とにかくカオルのラボに戻ろう、あそこならゆっくり休めるはず」
そう言うしかない自分が悔しい。彼女が身を挺してくれたから、僕はこうして無事でいられるのに、微塵たりとも報いることができない。
(それでも、ほんの少しでも、この人の力にならなきゃ)
2人でカオルを支えながらラボへ運ぶ。彼女の顔はつい先ほどの迫力が嘘だったかのように血の気が引き、肩越しに伝わる呼吸は今にも消え入りそうなほど弱々しかった。
彼女が死んでしまうのではないか、そんな予感が背筋を撫でる。それを払拭するように首を振り、僕は洞窟へ向かって歩いていく。
不意に、カオルが何かを喋り始めた。
「そんなこと……するわけには……」
「っ、カオル? 」
彼女は虚な目で、地を見つめたまま言葉を続ける。
「だって、ユウくんが……」
「どうしたの? 僕はここにいるよ」
彼女が何を話そうとしているのか分からない。まるでここにはいない誰かと喋っているようだ。
(まさか幻覚……くそっ、時間がない!)
一刻の猶予もない、1秒すら惜しい。
僕とマルカはできるだけ早く、それでいてカオルに無理をさせないペースを探りながら、茂った草の上を踏み進んでいく。
だけどそんな僕たちとは反対に、カオルは急に立ち止まり、自身を支えている腕の間をすり抜けた。
「カオルさんっ⁉︎」
マルカの呼びかけには答えず、彼女は体をふらつかせながら膝をつく。
「ユウくん……」
視線が重なる。普段は見上げてばかりの彼女の顔が、今は目の前にある。
彼女の瞳は虚なままで、けれどもその奥にはしっかりと僕の姿が映っていた。
「だ、大丈夫? カオル……」
「ユウくん、ごめんね」
「何を言って……──ッ⁉︎」
瞳に映る僕の影が大きくなっていく。
彼女の顔が近づいて
唇が、触れ合った。
(なっ──⁉︎)
「んっ……ふっ……」
僕の混乱をよそに、カオルは一心不乱に僕の『初めて』を染めていく。
繋がった唇は互いの熱を吸い合い、そして与え合う。
命の色が失われ、乾いていたはずの彼女のそこは、暖かな桜園のように艶やかに照り、清らかな瑞々しさと、人を飲み込んで離さない淫猥な湿りを取り戻していた。
「ふぁ……んむっ……ちゅっ」
僕の肩に添えられていただけだった彼女の手は、次第に腰へと降り始め、「逃がさない」と言わんばかりに僕を抱きしめる。
今の彼女はトレードマークである白衣を脱ぎ去り、その下の服は翼を出したせいでへそ周りが大きく破れ、柔らかそうでありながらも適度に引き締まった、薄く線が出る程度の腹部が露出されている。
無駄が無く、それでいて豊満なその体が、遠慮なく押し当てられた。
カオルの持つ心地良い体温と鼻腔をくすぐる甘い匂いにあてられ、もはや離れようという気は起きない。
むしろ、このまま全てを奪われてしまってもいい、そう思うほどだ。
(──これって本当に奪われてるんじゃないか?)
頭が蕩けきる寸前、大切な思考がよぎった。カオルはサキュバスなんだ。他者の精気を糧とし、己の生命を保つ存在。
今、彼女は明らかに生命力を取り戻しているけれど、それは僕から吸収したものではないのか。
このままでは、僕の方が死ぬ可能性すらある。だけど、それで恩を返せるのならここで死んだっていいかもしれない。
そんなことを思っていると
“大丈夫よ、そのまま身を委ねて”
声が、聞こえた。転移する瞬間に聞こえたのと、同じように。
“ほら、周りをよく見て?”
どこから聞こえるのか、誰のものなのかも分からない声に従い、視線を周囲に向ける。
空中に、緑色に輝く細かい粒子のようなものが見えた。とりとめもなく彷徨う粒子もあれば、僕の体の中に入ってくるものもある。
そして、一度僕に入った粒子はさらに輝きを増して、カオルの方へ流れていく。
“それがマナ、あの子は使うのがちょっと苦手みたいだから、あなたが手伝ってあげて”
声はそこで聞こえなくなった。辺りに溢れかえっていた粒子の姿ももう見えない。
「ぷはっ、ユウくん…….ごめんね、ごめんね。あと少しだから……」
先刻よりも断然に血色が良くなった顔を向け、カオルはもう一度口づけをせがんだ。
僕は言われるがまま、身を委ねる。やっぱり何かを持っていかれる感覚はあって、だけどそれが僕の命ではないことが分かったから、安心して彼女の熱を感じられる。
「はわわ、はわわわわわわわわ……お二人ってそういう関係……」
マルカは赤くなった顔を手で覆い、そして指の隙間からたっぷりと僕たちの行為を覗き込んでいた。
少し恥ずかしいけど、なぜか悪い気はしない。
~~~~~
「よしっ、治った! ふい~助かったよユウくん」
長いようで短い時間を触れ合って過ごした後、気づくとカオルはいつもの調子に戻っていた。いや、いつもよりツヤツヤしている気がする。
「本当に、大丈夫なんですか……?」
未だに赤い顔のままのマルカが訪ねる。
「ああ! 自分でもあんまり分かってないけど治った。なーんか声が聞こえてね、『あの少年を喰え』だのなんだの。さすがにヤバいと思ったけどガマンできなくなっちゃって……改めてごめん……いや、ありがとう、ユウくん」
「気にしなくていいよ。まあ……僕も……」
「ん? もしかして私とキスできたのが嬉しかった~? やだなぁユウくん、そんなこと言われたらさすがにお姉さんも照れちゃうよ」
「そうじゃなくて! カオルの助けになれたことが嬉しいの!」
「またまた~」
わざとらしく体をくねらせて喜ぶサキュバスに向かって必死に抗議の声を上げる僕。マルカはそれを見て、微笑ましそうな表情になる。なんだろう、今度はちゃんと恥ずかしい。
「それにしても、カオルはああやってマナを使って若さを保っていたんだね。やっと理解できたよ」
照れ隠しとして、彼女の生命システムについての話題を投げる。
「マナ? 一体何のことだい? 私は20代くらいから、特に何もしてないけどこの姿のままだよ」
「え?」
彼女から帰ってきたのは、予想だにしない答えだった。
「命の危機レベルまで消耗したことなんて今までになかったし……あ、あと……そっちの経験もなかったから……ああいうコトをしたのは、ユウくんが初めて……キャー! 言っちゃった言っちゃたー!」
「ほほう、それはそれは。おめでとうございます~」
「ほ、本当にないの⁉ サキュバスなのに⁉」
謎の祝福ムードを遮って、今しがた打ち砕かれたばかりの概念を再確認する。
(僕にしたみたいに、誰かを介してマナを吸い取っているんだと思ってた。それを使って若返っているんだと……ん? でも人間界にマナは存在しないんだっけ?)
「サキュバスなのにって……偏見はダメだぞ~ユウくん。250年経って初めてを経験する奴だっているんだよ……うん……。」
「あ、あの、サキュバスってそんなに男グセが悪い種族なんですか……?」
「じゃあ今までどうやって……あ! さっき声が聞こえたとか言ってたよね、その時に何か説明されなかった? マナの使い方とか、サキュバスの体の仕組みとか!」
質疑応答の方向をむりやり正し、どうにか謎を解こうとしてみる。
今後はできるだけカオルの命を削るような戦い方は避けたい。それでも万が一があったとしたら、また僕が回復役を担う必要がある。だから、もし効率の良いマナの流し方があるなら、それを知っておくべきだ。
「あ~言われてみれば色々と教えてくれてた気がする。でも意識は朦朧としてたし、ユウくんの唇が気持ちよくて……全く頭に入らなかったよ、えへへ」
「っ!……はあ、状況が状況だったし、仕方ないか」
頬を染めて笑う彼女が眩しくて、疑問はどこかへ飛んでいってしまった。
(そうだ、何を焦っているんだ僕は。情報がない時はじっくり観察して分析すればいい、向こうでもそうしてきたじゃないか。)
~~~~~
「それでは、日が沈む前に戻って報告をまとめましょうか。一応今回は『洞窟の調査』に来ているわけですからね」
「うん、そうだね────熱っ⁉」
カオルの体調も治り、そろそろ戻ろうかと準備を始めた瞬間、僕の下腹部が急に熱を持ち出した。
「な、なんなんだ一体……」
女性の前だということも忘れ、たまらずシャツとズボンをずらし、熱源を確認する。
異常な熱を放つ下腹部には、見るからに怪しい紋章が浮かび上がっていた。
紋章全体がネオンサインのようなピンクの光を放ち、しばらく経つと発光は収まった。
(これはまさか……淫紋⁉︎ こんなの漫画くらいでしか見たことないぞ!)
「ユ、ユウくん⁉ いきなりどうしたんですか……って、本当にどうしたんですか⁉」
マルカが僕の行動に目を丸くし、淫紋を見てさらに目を見張る。
僕はコレが刻まれた原因であるはずのサキュバスに目線を向け、暗に「どういうこと?」と問う。
彼女は彼女で、何が起きたか理解できずとも原因が自分にあることは察したらしく、何も言わずに舌を出してウィンクし、言外に本日何度目かの「ごめんね」を伝えてきた。
(どうして、こんな……)
草原の中を、静かで乾いた風が吹き抜けていく。日は傾きはじめ、西日がゆっくりと僕たちを照らし出す。
────穏やかで優しい日常の風景。その下には、自らの股間付近を晒す少年と、それをまじまじと覗き込む女2人の影が伸びていた。
「カ、カオルさん! しっかり!」
六道はもうどこかへ消え去ってしまったけれど、まだ気を抜くことはできない。
カオルの能力は元々、一度使っただけでも相当に体力を消耗する代物だ。それを3連続で撃ったのだから、その反動は計り知れない。
(しかも……2回目を放った時のあの燃えるような紅い瞳、あれはきっと、威力と引き換えに体への負担も大きくするものだ)
「ユウくん、どうしましょう……あ! ポーション! ポーションがあります! あれを飲めば……」
マルカはおろおろと慌てふためきながら、おばあさんから貰った薬をカオルに少し飲ませた。でも
「うっ、くぅっ……」
「ダメだマルカ、この薬はあくまで『傷治し』。今のカオルに使っても効果はないと思う……」
「だけどこのままじゃ!」
「とにかくカオルのラボに戻ろう、あそこならゆっくり休めるはず」
そう言うしかない自分が悔しい。彼女が身を挺してくれたから、僕はこうして無事でいられるのに、微塵たりとも報いることができない。
(それでも、ほんの少しでも、この人の力にならなきゃ)
2人でカオルを支えながらラボへ運ぶ。彼女の顔はつい先ほどの迫力が嘘だったかのように血の気が引き、肩越しに伝わる呼吸は今にも消え入りそうなほど弱々しかった。
彼女が死んでしまうのではないか、そんな予感が背筋を撫でる。それを払拭するように首を振り、僕は洞窟へ向かって歩いていく。
不意に、カオルが何かを喋り始めた。
「そんなこと……するわけには……」
「っ、カオル? 」
彼女は虚な目で、地を見つめたまま言葉を続ける。
「だって、ユウくんが……」
「どうしたの? 僕はここにいるよ」
彼女が何を話そうとしているのか分からない。まるでここにはいない誰かと喋っているようだ。
(まさか幻覚……くそっ、時間がない!)
一刻の猶予もない、1秒すら惜しい。
僕とマルカはできるだけ早く、それでいてカオルに無理をさせないペースを探りながら、茂った草の上を踏み進んでいく。
だけどそんな僕たちとは反対に、カオルは急に立ち止まり、自身を支えている腕の間をすり抜けた。
「カオルさんっ⁉︎」
マルカの呼びかけには答えず、彼女は体をふらつかせながら膝をつく。
「ユウくん……」
視線が重なる。普段は見上げてばかりの彼女の顔が、今は目の前にある。
彼女の瞳は虚なままで、けれどもその奥にはしっかりと僕の姿が映っていた。
「だ、大丈夫? カオル……」
「ユウくん、ごめんね」
「何を言って……──ッ⁉︎」
瞳に映る僕の影が大きくなっていく。
彼女の顔が近づいて
唇が、触れ合った。
(なっ──⁉︎)
「んっ……ふっ……」
僕の混乱をよそに、カオルは一心不乱に僕の『初めて』を染めていく。
繋がった唇は互いの熱を吸い合い、そして与え合う。
命の色が失われ、乾いていたはずの彼女のそこは、暖かな桜園のように艶やかに照り、清らかな瑞々しさと、人を飲み込んで離さない淫猥な湿りを取り戻していた。
「ふぁ……んむっ……ちゅっ」
僕の肩に添えられていただけだった彼女の手は、次第に腰へと降り始め、「逃がさない」と言わんばかりに僕を抱きしめる。
今の彼女はトレードマークである白衣を脱ぎ去り、その下の服は翼を出したせいでへそ周りが大きく破れ、柔らかそうでありながらも適度に引き締まった、薄く線が出る程度の腹部が露出されている。
無駄が無く、それでいて豊満なその体が、遠慮なく押し当てられた。
カオルの持つ心地良い体温と鼻腔をくすぐる甘い匂いにあてられ、もはや離れようという気は起きない。
むしろ、このまま全てを奪われてしまってもいい、そう思うほどだ。
(──これって本当に奪われてるんじゃないか?)
頭が蕩けきる寸前、大切な思考がよぎった。カオルはサキュバスなんだ。他者の精気を糧とし、己の生命を保つ存在。
今、彼女は明らかに生命力を取り戻しているけれど、それは僕から吸収したものではないのか。
このままでは、僕の方が死ぬ可能性すらある。だけど、それで恩を返せるのならここで死んだっていいかもしれない。
そんなことを思っていると
“大丈夫よ、そのまま身を委ねて”
声が、聞こえた。転移する瞬間に聞こえたのと、同じように。
“ほら、周りをよく見て?”
どこから聞こえるのか、誰のものなのかも分からない声に従い、視線を周囲に向ける。
空中に、緑色に輝く細かい粒子のようなものが見えた。とりとめもなく彷徨う粒子もあれば、僕の体の中に入ってくるものもある。
そして、一度僕に入った粒子はさらに輝きを増して、カオルの方へ流れていく。
“それがマナ、あの子は使うのがちょっと苦手みたいだから、あなたが手伝ってあげて”
声はそこで聞こえなくなった。辺りに溢れかえっていた粒子の姿ももう見えない。
「ぷはっ、ユウくん…….ごめんね、ごめんね。あと少しだから……」
先刻よりも断然に血色が良くなった顔を向け、カオルはもう一度口づけをせがんだ。
僕は言われるがまま、身を委ねる。やっぱり何かを持っていかれる感覚はあって、だけどそれが僕の命ではないことが分かったから、安心して彼女の熱を感じられる。
「はわわ、はわわわわわわわわ……お二人ってそういう関係……」
マルカは赤くなった顔を手で覆い、そして指の隙間からたっぷりと僕たちの行為を覗き込んでいた。
少し恥ずかしいけど、なぜか悪い気はしない。
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「よしっ、治った! ふい~助かったよユウくん」
長いようで短い時間を触れ合って過ごした後、気づくとカオルはいつもの調子に戻っていた。いや、いつもよりツヤツヤしている気がする。
「本当に、大丈夫なんですか……?」
未だに赤い顔のままのマルカが訪ねる。
「ああ! 自分でもあんまり分かってないけど治った。なーんか声が聞こえてね、『あの少年を喰え』だのなんだの。さすがにヤバいと思ったけどガマンできなくなっちゃって……改めてごめん……いや、ありがとう、ユウくん」
「気にしなくていいよ。まあ……僕も……」
「ん? もしかして私とキスできたのが嬉しかった~? やだなぁユウくん、そんなこと言われたらさすがにお姉さんも照れちゃうよ」
「そうじゃなくて! カオルの助けになれたことが嬉しいの!」
「またまた~」
わざとらしく体をくねらせて喜ぶサキュバスに向かって必死に抗議の声を上げる僕。マルカはそれを見て、微笑ましそうな表情になる。なんだろう、今度はちゃんと恥ずかしい。
「それにしても、カオルはああやってマナを使って若さを保っていたんだね。やっと理解できたよ」
照れ隠しとして、彼女の生命システムについての話題を投げる。
「マナ? 一体何のことだい? 私は20代くらいから、特に何もしてないけどこの姿のままだよ」
「え?」
彼女から帰ってきたのは、予想だにしない答えだった。
「命の危機レベルまで消耗したことなんて今までになかったし……あ、あと……そっちの経験もなかったから……ああいうコトをしたのは、ユウくんが初めて……キャー! 言っちゃった言っちゃたー!」
「ほほう、それはそれは。おめでとうございます~」
「ほ、本当にないの⁉ サキュバスなのに⁉」
謎の祝福ムードを遮って、今しがた打ち砕かれたばかりの概念を再確認する。
(僕にしたみたいに、誰かを介してマナを吸い取っているんだと思ってた。それを使って若返っているんだと……ん? でも人間界にマナは存在しないんだっけ?)
「サキュバスなのにって……偏見はダメだぞ~ユウくん。250年経って初めてを経験する奴だっているんだよ……うん……。」
「あ、あの、サキュバスってそんなに男グセが悪い種族なんですか……?」
「じゃあ今までどうやって……あ! さっき声が聞こえたとか言ってたよね、その時に何か説明されなかった? マナの使い方とか、サキュバスの体の仕組みとか!」
質疑応答の方向をむりやり正し、どうにか謎を解こうとしてみる。
今後はできるだけカオルの命を削るような戦い方は避けたい。それでも万が一があったとしたら、また僕が回復役を担う必要がある。だから、もし効率の良いマナの流し方があるなら、それを知っておくべきだ。
「あ~言われてみれば色々と教えてくれてた気がする。でも意識は朦朧としてたし、ユウくんの唇が気持ちよくて……全く頭に入らなかったよ、えへへ」
「っ!……はあ、状況が状況だったし、仕方ないか」
頬を染めて笑う彼女が眩しくて、疑問はどこかへ飛んでいってしまった。
(そうだ、何を焦っているんだ僕は。情報がない時はじっくり観察して分析すればいい、向こうでもそうしてきたじゃないか。)
~~~~~
「それでは、日が沈む前に戻って報告をまとめましょうか。一応今回は『洞窟の調査』に来ているわけですからね」
「うん、そうだね────熱っ⁉」
カオルの体調も治り、そろそろ戻ろうかと準備を始めた瞬間、僕の下腹部が急に熱を持ち出した。
「な、なんなんだ一体……」
女性の前だということも忘れ、たまらずシャツとズボンをずらし、熱源を確認する。
異常な熱を放つ下腹部には、見るからに怪しい紋章が浮かび上がっていた。
紋章全体がネオンサインのようなピンクの光を放ち、しばらく経つと発光は収まった。
(これはまさか……淫紋⁉︎ こんなの漫画くらいでしか見たことないぞ!)
「ユ、ユウくん⁉ いきなりどうしたんですか……って、本当にどうしたんですか⁉」
マルカが僕の行動に目を丸くし、淫紋を見てさらに目を見張る。
僕はコレが刻まれた原因であるはずのサキュバスに目線を向け、暗に「どういうこと?」と問う。
彼女は彼女で、何が起きたか理解できずとも原因が自分にあることは察したらしく、何も言わずに舌を出してウィンクし、言外に本日何度目かの「ごめんね」を伝えてきた。
(どうして、こんな……)
草原の中を、静かで乾いた風が吹き抜けていく。日は傾きはじめ、西日がゆっくりと僕たちを照らし出す。
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