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「……お前、器用に尻尾使うなぁ……『サル』の獣人か? そんな情報は聞いてないが……」
「『サキュバス』だッ!! 『サ』しか合ってないぞこのヤロー!」
今一度あいまみえ、言葉を交わすカオルとアドラ。
町が近くなってきて、いよいよ本気を出したのか、アドラは怒りの中に、時折『プロの顔』を覗かせるようになっていた。
「しかしまあ、私を冷静に観察する姿勢は評価しよう。そしてフレームレートを捉える能力もな。君が言う数字からして、君は秒間240fpsで物体を追うことができるようだね、人が認識できる限界と言われている数値だ。しかも、環境や体調に左右されず、常に視野の全体で240fpsを叩き出し、銃弾の軌道などの微細な動きを感知している。賞賛に値するよ」
「…………」
アドラの放つ威圧感に、カオルは口で応戦する。
「さらに驚くべきは、240fpsに対応するその身体だ。いくら動きを細かく認識したって、体がそれについていけないんじゃ仕方ないからね。その体は誰に強化してもらったんだい?」
「この脚は自前だ! 俺が鍛えたんだッ! 人の努力コケにしてんじゃあねーぞッ!」
「うっそマジで⁉︎ ……あー、それは失礼した。だがこれで1つわかったぞ。君の『F・P・S』は、やはり誰かから貰ったものだね。反応で察したよ、是非とも相手を教えてほしいな」
「言うわけねーだろこのアマ! どうしても知りてーなら、俺を倒して口割らせてみろッ! ……ネタが割れようがどーってことはねェー、お前が俺についてこれなきゃ意味無えんだからよォォォ~~ッ! オラいくぜ、『F・P・S』ッ!」
「そうだよねェー、そう言うと思った。 ——そこでアドラ! 君がどれだけ動けようが関係のない倒し方を思いついた……」
カオルは両手の石炭を見せつけるように掲げ、そしてアドラに突き出した。
「ここには大量の石炭があるッ! 他でもない、君や私たちが頑張って掘ったものだ。こいつを……そらっ」
石炭を放り投げたと思うと、カオルは間髪入れずに尻尾を振るい、その先のつるはしで、石炭を細かく砕いてしまった。
「リエフさんも一緒に! ほら投げて投げて! ユウくんは私が合図するまで待機!」
「わ、わかりましたサキヤ殿……」
リエフさんは訳もわからないまま、カオルと共に袋から石炭を取り出しては空中に放る。
投げては砕き投げては砕き、黒い粒子が辺りに散っていく。
「なんだ……なんのつもりだ……」
「油断したとこで塊を一発!」
相手が炭塵に気を取られた隙をつき、カオルは大きな石炭を、砕かずに投げつける。
「遅え! こんなもの、避けるまでもないッ!」
しかしそれは、結局アドラの手ではたき落とされ、地面にぶつかり割れてしまった。
(銃弾を見切る相手なんだから、こうなるのはわかってるはず……カオルは何を……?)
石炭を砕いたり砕かせたりする間に、アドラとの距離は縮まっていく。これじゃ自殺行為だ。
「よーしそろそろだな。……唐突だがアドラくん! 君は『粉塵爆発』をご存知かな⁉︎ 可燃性の粉が空気中に舞っている時に引火すると、大爆発を引き起こすって現象だ!」
「なっ……! テメェまさか……石炭で炭塵爆発をッ!」
アドラは爆発を警戒して、ついに足を止めた。
なるほど、石炭を散らして、頃合いを見計らって僕の銃で起爆させる作戦ってことだ。
「おお、知ってるんだね。勉強しててエラいぞー」
「あ…………?」
「カオル……?」
合図が来ると思っていたから、僕はカオルと引き金に意識を集中させていた。なのに、カオルはアドラの反応を見るだけで、それから何もしなかった。
「カオル、今のって『これから爆発させるぞ』って宣言じゃないの?」
念のため確認。
「いや、聞いてみただけ」
(ええ……)
この状況で、カオルはとことんカオルだ。まるで男をからかうことに命を捧げているみたい。
マルカもリエフさんも、いよいよドン引きし始めてる。
「テメエエエエエ! ブッ殺すッッッッッッ!!!」
数秒立ち尽くしていたアドラは、すぐに我に帰り、全身の筋肉を大きく駆動させて追いかけてきた。
凄まじいほどの殺意。僕の上に被さるマルカから、今にも泣き出しそうな息遣いが聞こえてくる。
それでもカオルは平常運転。
「ぶあーはっはっはっ! 騙されてやんのー! あのねぇアドラくん、粉塵爆発を人為的に起こすのって意外と難しいんだよ。それこそ、炭鉱という狭い空間で、炸薬式のパイルバンカーをぶちかましても起こせないほどにね。それをこんなだだっ広い山道で、しかも馬車での移動中にやろうなんて、無理に決まってるだろバーカ」
カオルはへらへらと笑い、とにかく煽る。足元でマルカが「もうやめて、ホントにやめて」と縋りついても気にしない。
そしてカオルは、マルカよりも僕の方を見て
「ユウくん、マナを頼む」
と言った——。
「散々バカにしやがって……テメーの頭を砕き散らしてやるッ! 死ねサキヤァァァァァッ!」
直後、見た中でも最速のスピードで、アドラが蹴りを放った。僕たちでは、もう防ぐことすらできないだろう。
カオルが何をするつもりなのか、どうして僕がマナを送っていることに気づいたのか、混乱する頭を振り払って、僕はカオルにマナを流すイメージを浮かべる。
荷台の上で、カオルのリュックの一部が光るのを感じた。あれはきっと、魔導書の光。
「終わりだアドラ——魔導の六、エクス・ライト」
足が届くより先に、カオルの唇が開き、閉じた。
刹那、彼女の手から球が現れ、アドラの顔の前——ほんの数ミリも離れていないところで刺すように煌めく。
「があ……っ」
サキュバスの放つ光に目を焼かれた男は、彼女に触れることもできずに、地に落ちた。
「よっしゃあああ大勝利! さあ出番だリエフさん、あいつを取り押さえて!」
「は⁉︎ いやそれは……」
「ここで逃したら私たちただの大罪人だよ! 急いで!」
勝利の余韻に浸る間もなく馬車を止め、リエフさんは部下と一緒に、アドラが動かないように手足を押さえる。しきりに「すみませんすみません」と呟きながらも、彼はライオンの獣人としての筋力を遺憾無く発揮した。
こちら側が完全に優位に立ったのを確認したカオルはニッコリ微笑み、その得体の知れない恐ろしさを孕んだ美貌で、上からアドラの顔を覗き込んだ。
「女というのは、武器をいくつも隠し持っている生き物なんだよアドラ。まさか魔法が使えるなんて思わなかっただろう? ——でも、本命はこっち」
そう言うと、カオルは彼の顔に手を添えて、そのまぶたを無理やり開かせた。
強烈な光に白んでいた視界が、ようやく色を取り戻した頃。
回復したアドラの目に真っ先に映ったのは、蒼く輝く淫魔の瞳。
彼は、目を合わせてしまった。
「あ、ああ…………」
数秒経つと、アドラの目から光が消え、次第に体はビクビクと痙攣し始めた
カオルが言っていた「私の能力」とは、これのことだ。男としてアドラを不憫に思うけれど、僕には何もできない。
「サキヤ殿……⁉︎ これは何ですか⁉︎ 何が起こっているのですか⁉︎」
「申し訳ありませんが、これについては簡単にお話することはできません。重ね重ね言いますけど、詮索はなしでお願いします。あ、もう手を離してもいいですよ」
異様なオーラを放つカオルの言葉に、リエフさんたちは従わざるを得なかった。
黙ってしまった彼らに代わって、今度は僕が質問をする。
「お疲れ様、カオル。でも、どうするの? この状態って、幻覚の中のカオルを……その、満足させるまで起きないんでしょ。だけどカオルはショタコンだから、普通の男じゃ満足しないって……」
僕は『アニキ』の時のことを思い出しながら聞いた。あの時は、おばあちゃんから貰った気付のポーションがあったからアニキは目を覚ましたけど、今はそれが無い。
「ああ、それね、嘘なんだ。」
「「え?」」
僕とマルカの声が重なった。
「しばらく私に搾られる幻覚を見るのは本当だけどね、満足させるとか何とかは関係ないよ。ついでに言うと、私の意思で解除もできる。もし本当に自分でもコントロールできないような代物だったら、私はこの力で人を殺めてしまっていただろうね」
「な、なら、あの時はなぜ嘘をついたんですか?」
マルカが驚いた様子で、身を乗り出して聞く。
カオルは思い出すかのように顎に手を当てて、空を仰いだ。
「んー、ハッタリをきかせようとしたんだよ。だって、こぉ~んなにいい子のマルカをいじめてた奴らだぜ~? 痛い目見せてやろうと思ったんだ」
「あ、ありがとうございます……?」
カオルは心底楽しそうに、肩を組んでマルカに話す。やっぱり、男を相手にした時のカオルは特別強い。
「それじゃあ、このままアドラが目を覚ますまで待つ? 今のうちに縛ったりしておこうか」
少なくともアドラが死ぬことはないと確信した僕は、次のフェーズの用意をしようとカオルに聞く。
「いや、待つ必要はないよ。それと、ちょっと試したいことがある」
「試したいこと?」
「ああ。こいつは今、私の幻覚を見ているわけだろ? だから現実の私が話しかければ、あっちの私も連動するんじゃないかなって。その場合、体はむしろ縛らない方がいい。あっちの私と散々絡み合ってくれれば、情報もたくさん引き出せるかもしれない」
「そ、そんなうまくいきますかね……」
マルカはあまり乗り気じゃない。というか僕もだ。本気の殺意を向けてきた相手を、放っておいていいものだろうか。
「まあまあ、物は試しだ。おーいアドラ、聞こえるー?」
「うっ、あっ、……サキヤ……てめえ……」
「おお! 反応した!」
アドラは彼女の声かけに応じ、痙攣のリズムを変える。これはたぶん、本当に反応してる動きだ。
「今から君にいくつか質問をするよ。ちゃんと答えられたら、そのぶん気持ちよくしてあげる」
「お、俺は何も喋らねえぞ……あぐっ! うっ、うぅっ……」
アドラの声に段々と熱がこもっていくのを聞いたカオルは、とてもいやらしく口の端を上げた。
「ンフフ、実を言うと、一気に聞いて一気に答えてもらって、サッと解放してやるつもりだったんだが~……『質問はひとつずつ』と釘を刺されてしまったからね、ここは君の望み通りにしてあげよう」
(あっ……)
アドラの末路を察した僕は、真剣に彼の身を案じる。
「さあアドラ、ゆっくり味わえ……」
淫魔の尋問が始まった。
「『サキュバス』だッ!! 『サ』しか合ってないぞこのヤロー!」
今一度あいまみえ、言葉を交わすカオルとアドラ。
町が近くなってきて、いよいよ本気を出したのか、アドラは怒りの中に、時折『プロの顔』を覗かせるようになっていた。
「しかしまあ、私を冷静に観察する姿勢は評価しよう。そしてフレームレートを捉える能力もな。君が言う数字からして、君は秒間240fpsで物体を追うことができるようだね、人が認識できる限界と言われている数値だ。しかも、環境や体調に左右されず、常に視野の全体で240fpsを叩き出し、銃弾の軌道などの微細な動きを感知している。賞賛に値するよ」
「…………」
アドラの放つ威圧感に、カオルは口で応戦する。
「さらに驚くべきは、240fpsに対応するその身体だ。いくら動きを細かく認識したって、体がそれについていけないんじゃ仕方ないからね。その体は誰に強化してもらったんだい?」
「この脚は自前だ! 俺が鍛えたんだッ! 人の努力コケにしてんじゃあねーぞッ!」
「うっそマジで⁉︎ ……あー、それは失礼した。だがこれで1つわかったぞ。君の『F・P・S』は、やはり誰かから貰ったものだね。反応で察したよ、是非とも相手を教えてほしいな」
「言うわけねーだろこのアマ! どうしても知りてーなら、俺を倒して口割らせてみろッ! ……ネタが割れようがどーってことはねェー、お前が俺についてこれなきゃ意味無えんだからよォォォ~~ッ! オラいくぜ、『F・P・S』ッ!」
「そうだよねェー、そう言うと思った。 ——そこでアドラ! 君がどれだけ動けようが関係のない倒し方を思いついた……」
カオルは両手の石炭を見せつけるように掲げ、そしてアドラに突き出した。
「ここには大量の石炭があるッ! 他でもない、君や私たちが頑張って掘ったものだ。こいつを……そらっ」
石炭を放り投げたと思うと、カオルは間髪入れずに尻尾を振るい、その先のつるはしで、石炭を細かく砕いてしまった。
「リエフさんも一緒に! ほら投げて投げて! ユウくんは私が合図するまで待機!」
「わ、わかりましたサキヤ殿……」
リエフさんは訳もわからないまま、カオルと共に袋から石炭を取り出しては空中に放る。
投げては砕き投げては砕き、黒い粒子が辺りに散っていく。
「なんだ……なんのつもりだ……」
「油断したとこで塊を一発!」
相手が炭塵に気を取られた隙をつき、カオルは大きな石炭を、砕かずに投げつける。
「遅え! こんなもの、避けるまでもないッ!」
しかしそれは、結局アドラの手ではたき落とされ、地面にぶつかり割れてしまった。
(銃弾を見切る相手なんだから、こうなるのはわかってるはず……カオルは何を……?)
石炭を砕いたり砕かせたりする間に、アドラとの距離は縮まっていく。これじゃ自殺行為だ。
「よーしそろそろだな。……唐突だがアドラくん! 君は『粉塵爆発』をご存知かな⁉︎ 可燃性の粉が空気中に舞っている時に引火すると、大爆発を引き起こすって現象だ!」
「なっ……! テメェまさか……石炭で炭塵爆発をッ!」
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「おお、知ってるんだね。勉強しててエラいぞー」
「あ…………?」
「カオル……?」
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「カオル、今のって『これから爆発させるぞ』って宣言じゃないの?」
念のため確認。
「いや、聞いてみただけ」
(ええ……)
この状況で、カオルはとことんカオルだ。まるで男をからかうことに命を捧げているみたい。
マルカもリエフさんも、いよいよドン引きし始めてる。
「テメエエエエエ! ブッ殺すッッッッッッ!!!」
数秒立ち尽くしていたアドラは、すぐに我に帰り、全身の筋肉を大きく駆動させて追いかけてきた。
凄まじいほどの殺意。僕の上に被さるマルカから、今にも泣き出しそうな息遣いが聞こえてくる。
それでもカオルは平常運転。
「ぶあーはっはっはっ! 騙されてやんのー! あのねぇアドラくん、粉塵爆発を人為的に起こすのって意外と難しいんだよ。それこそ、炭鉱という狭い空間で、炸薬式のパイルバンカーをぶちかましても起こせないほどにね。それをこんなだだっ広い山道で、しかも馬車での移動中にやろうなんて、無理に決まってるだろバーカ」
カオルはへらへらと笑い、とにかく煽る。足元でマルカが「もうやめて、ホントにやめて」と縋りついても気にしない。
そしてカオルは、マルカよりも僕の方を見て
「ユウくん、マナを頼む」
と言った——。
「散々バカにしやがって……テメーの頭を砕き散らしてやるッ! 死ねサキヤァァァァァッ!」
直後、見た中でも最速のスピードで、アドラが蹴りを放った。僕たちでは、もう防ぐことすらできないだろう。
カオルが何をするつもりなのか、どうして僕がマナを送っていることに気づいたのか、混乱する頭を振り払って、僕はカオルにマナを流すイメージを浮かべる。
荷台の上で、カオルのリュックの一部が光るのを感じた。あれはきっと、魔導書の光。
「終わりだアドラ——魔導の六、エクス・ライト」
足が届くより先に、カオルの唇が開き、閉じた。
刹那、彼女の手から球が現れ、アドラの顔の前——ほんの数ミリも離れていないところで刺すように煌めく。
「があ……っ」
サキュバスの放つ光に目を焼かれた男は、彼女に触れることもできずに、地に落ちた。
「よっしゃあああ大勝利! さあ出番だリエフさん、あいつを取り押さえて!」
「は⁉︎ いやそれは……」
「ここで逃したら私たちただの大罪人だよ! 急いで!」
勝利の余韻に浸る間もなく馬車を止め、リエフさんは部下と一緒に、アドラが動かないように手足を押さえる。しきりに「すみませんすみません」と呟きながらも、彼はライオンの獣人としての筋力を遺憾無く発揮した。
こちら側が完全に優位に立ったのを確認したカオルはニッコリ微笑み、その得体の知れない恐ろしさを孕んだ美貌で、上からアドラの顔を覗き込んだ。
「女というのは、武器をいくつも隠し持っている生き物なんだよアドラ。まさか魔法が使えるなんて思わなかっただろう? ——でも、本命はこっち」
そう言うと、カオルは彼の顔に手を添えて、そのまぶたを無理やり開かせた。
強烈な光に白んでいた視界が、ようやく色を取り戻した頃。
回復したアドラの目に真っ先に映ったのは、蒼く輝く淫魔の瞳。
彼は、目を合わせてしまった。
「あ、ああ…………」
数秒経つと、アドラの目から光が消え、次第に体はビクビクと痙攣し始めた
カオルが言っていた「私の能力」とは、これのことだ。男としてアドラを不憫に思うけれど、僕には何もできない。
「サキヤ殿……⁉︎ これは何ですか⁉︎ 何が起こっているのですか⁉︎」
「申し訳ありませんが、これについては簡単にお話することはできません。重ね重ね言いますけど、詮索はなしでお願いします。あ、もう手を離してもいいですよ」
異様なオーラを放つカオルの言葉に、リエフさんたちは従わざるを得なかった。
黙ってしまった彼らに代わって、今度は僕が質問をする。
「お疲れ様、カオル。でも、どうするの? この状態って、幻覚の中のカオルを……その、満足させるまで起きないんでしょ。だけどカオルはショタコンだから、普通の男じゃ満足しないって……」
僕は『アニキ』の時のことを思い出しながら聞いた。あの時は、おばあちゃんから貰った気付のポーションがあったからアニキは目を覚ましたけど、今はそれが無い。
「ああ、それね、嘘なんだ。」
「「え?」」
僕とマルカの声が重なった。
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「な、なら、あの時はなぜ嘘をついたんですか?」
マルカが驚いた様子で、身を乗り出して聞く。
カオルは思い出すかのように顎に手を当てて、空を仰いだ。
「んー、ハッタリをきかせようとしたんだよ。だって、こぉ~んなにいい子のマルカをいじめてた奴らだぜ~? 痛い目見せてやろうと思ったんだ」
「あ、ありがとうございます……?」
カオルは心底楽しそうに、肩を組んでマルカに話す。やっぱり、男を相手にした時のカオルは特別強い。
「それじゃあ、このままアドラが目を覚ますまで待つ? 今のうちに縛ったりしておこうか」
少なくともアドラが死ぬことはないと確信した僕は、次のフェーズの用意をしようとカオルに聞く。
「いや、待つ必要はないよ。それと、ちょっと試したいことがある」
「試したいこと?」
「ああ。こいつは今、私の幻覚を見ているわけだろ? だから現実の私が話しかければ、あっちの私も連動するんじゃないかなって。その場合、体はむしろ縛らない方がいい。あっちの私と散々絡み合ってくれれば、情報もたくさん引き出せるかもしれない」
「そ、そんなうまくいきますかね……」
マルカはあまり乗り気じゃない。というか僕もだ。本気の殺意を向けてきた相手を、放っておいていいものだろうか。
「まあまあ、物は試しだ。おーいアドラ、聞こえるー?」
「うっ、あっ、……サキヤ……てめえ……」
「おお! 反応した!」
アドラは彼女の声かけに応じ、痙攣のリズムを変える。これはたぶん、本当に反応してる動きだ。
「今から君にいくつか質問をするよ。ちゃんと答えられたら、そのぶん気持ちよくしてあげる」
「お、俺は何も喋らねえぞ……あぐっ! うっ、うぅっ……」
アドラの声に段々と熱がこもっていくのを聞いたカオルは、とてもいやらしく口の端を上げた。
「ンフフ、実を言うと、一気に聞いて一気に答えてもらって、サッと解放してやるつもりだったんだが~……『質問はひとつずつ』と釘を刺されてしまったからね、ここは君の望み通りにしてあげよう」
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