白蛇さんはたぶらかす

極楽 ちどり

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たぶらかすまで

1-1

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初夏が好きだ。個人的に一年で一番過ごしやすい時期に感じる。ちんたら走りながらそんなことを考えた。



あずま 千尋ちひろ24歳、社会人。絶賛ダイエット中である。高卒で働きだしたので既に勤続6年目。一人暮らしだ。実家は出たきり帰っていない。音信もない。1年前に今の部屋に引っ越してからは、保証会社に頼んだので、もはや住所すら知らせていない。一応、メールだけ繋がっている。

私の住んでいる街は所謂ベッドタウンと呼ばれる街だ。都内の職場まで40分で着く。駅からマンションまでは徒歩で10分。広めのワンルームだ。家賃は6万円。なかなか気に入っている。


大した速さでもないのにヒーヒー言いながら、一応背筋くらいは伸ばそうと無駄な努力をしつつ足を動かす。おそらく周囲からは相当苦しそうに見えているのではないだろうか。しかし心配しないで欲しい。本人は意外と走ることに喜びを見出しているのだ。


さて、とりあえず。私がダイエットをするに至った話を聞いて欲しい。

つい一月ほど前のことだ。私は3年付き合った彼氏に振られた。いや、振られてやった。大事なことなのでもう一度言うけれど、振られて「やった」のだ。

付き合ったきっかけは、合コンという割とありがちなスタートだったけれど、3年という月日はなかなかに長いもので、それは私にとって大切なかけがえのない日々だった。告白してくれたのは彼だったけれど、付き合うまでのあのへたくそな駆け引きやなんかは楽しかったし、付き合いたては多分ラブラブだったし、少し時間が経って落ち着いてきて、喧嘩したり、別れ話が出たりもあったけれど、お互い理解しあえていたと思っていた。

好きだった。というか、ぶっちゃけこのまま結婚するんだろうなー、と思っていた。いつ、と具体的に考えていたわけではないし、その話題を出したこともなかった。ただ漠然と、そう思っていたのだ。
運命、だなんて子供の戯言みたいなことを僅かばかり感じていた。この人しかいないと、思っていた。まあ・・・思っていたのは私だけだったわけだけれど。


始まりと同様、終わりもまたありがちなものだった。


職場に新しく入ってきた女の子が気になってしまった彼は、私と関係を継続したまま、その子に手を出したらしい。で、しばらく二股していたらしい。


その日は土曜日だった。
夕方五時ごろだろうか、夜から予定があるという彼の家から出たが、彼の家の最寄り駅まで来たところで、定期を忘れてしまったことに気付いた。その時に連絡の一本でもしていればまた違ったのかとか、詮無いことを考えたりもするけれど、まあ結論はきっと変わらなかっただろう。
私は急ぎ足で彼のアパートに引き換えし、がちゃり、と合鍵で入った。そして視線をあげ、ちゅーをしている私の彼氏と知らない女に出くわした、というありがちすぎて泣きたくなるようなお決まりの浮気発覚だった。

固まったまま動けない私に彼はいろいろと言おうとして、結局言葉にならなかったらしく、言い訳をあきらめ「お前は一人でも大丈夫だろ?」という、え、なにそのテンプレクソ発言。なトンでも発言をぶちかました。あまりにありがちなシチュエーションに私のほうが思わず吹き出し、「おーけー。じゃあ着払いでいいんで私の荷物送ってねー」という別れの科白にしては軽すぎる言葉を残して合鍵をその場で返して家に帰ったのだ。


このあと一人でバーにでも行って、しっぽりとカクテル片手にマスターと話し込みながら少し泣いて、彼を過去にできたなら、私はもしかしたら大人なイイ女なのかもしれないが、現実には行きつけのバーなんてものはない。


情けない話だが、泣いた。

大泣きした。帰りの電車でも堪えきれずにぼたぼたと涙が止まらなかった。部屋にはいってから、バックを投げ、クッションを投げ、布団を投げ、ぬいぐるみを投げ、泣きわめいた。大好きだった。でももう絶対に戻れなかった。自身の性格上、裏切った彼をもう一度信頼するのはどうしたって無理だと分かっていた。誰より信頼していたからこそ、絶対にもう、無理だった。

幸いだったのは、現在の部屋は5階で最上階角部屋で、横にも下にも住人がいないことだろう。おかげでものすごい騒音騒ぎを通報されずに済んだ。

不幸だったのは、暴れたせいでお気に入りの瀬戸物でできた白蛇さんの置物を割ってしまったことだ。接着剤でくっつけたけれど・・・。

まあ、つまるところそういう訳で私は失恋して、その憤然やる方ない感情を友人の勧めでダイエットの方向に持ち込んだのである。


走るというのは、高校生以来だった。正直言ってフォームもスピードも笑っちゃうようなものだけれど、これがなかなか悪くない。ついでに、食事も野菜中心に変えてみたところ、あっさり体重は落ち始めた。適度な運動とバランスのいい適量の食事をとっていれば痩せるというが、その通りだった。大変気分がいい。

仕事は繁忙期で、帰りは大体終電だ。それから部屋について、いそいそと着替えて走りに行く。

そして大した距離を走っているわけでもないのに、ハーハーいいながら帰ってきて、ストレッチして、シャワー浴びて、寝て、また仕事に出かけるのだ。

自分が無理をしていることは誰より承知していたけれど、走って体重が落ちていくという、ひどく単純な努力と成果のスパイラルで私の精神はどうにかこうにか支えられていた。

口では、「浮気されちゃったらちょっと無理だわー」とか、「その現場に居合わせるなんて、なかやかない経験よね」とか最もらしくて、痛々しいウケを取りに行って、笑って見せていたけれど、胸の中で荒れ狂った嵐のような感情は何も解消されてなかった。


もうどうにもならない、戻りたい。戻れない。大好きで、刺し殺したいくらい憎い。この感情をなんて呼べばいいのかは、私にもわからなかった。


マンションのエントランスが見えるあたりまで走りついて、私は歩調を歩きに変えた。荒れた呼吸を整えながらサクサクと歩く。エレベーターの誘惑に打ち勝ち、えっちらおっちら階段を上った。

イヤホンを外しながら、ポケットにクリップで止めたシャッフルの停止ボタンを押す。右ポケットから小銭入れ兼キーケースを取り出して、ガチャン、と解錠する。私の現在の持ち物すべてが両手にあった。前はスマホも持って出ていたのだが、どうにも邪魔くさくて最近は走るときは持ち歩いてない。

ふー、と大きく息を吐きながら、玄関を入る。入ってすぐに鍵をしめ、チェーンロックまでするのはもう習慣だ。女性の都会の一人暮らしの常識だろう。

しゃがむのが面倒で、前屈姿勢でスニーカーの紐を緩める。



「おかえんなさい」

「ただ、・・・え?」



反射的に「ただいま」と言いそうになって、それが明らかに異常事態であることに、体が硬直する。

ここには一人暮らしで、彼氏とは別れた。兄弟はいない。合鍵を渡しているような男友達?そんなハレンチな友人はいない。

スニーカーを脱ごうとした姿勢で固まったまま動けない。どうしよう、鍵かけちゃった。っていうか、チェーンまでかけちゃった。

心臓が嫌な感じに脈を打った。

どうしよう、いやでも、絶対刺激しちゃだめだ、と思う。けど、もう刺激するとかそれ以前の問題じゃない?警察!とりあえず警察!どうやって!?電話!警察!!

早まりそうな呼吸を必死で抑える。どうしよう、頭上げられない。いっそお化けとかなら怖いだけでいいのだけれど・・・。怖いものが大嫌いなくせにそんなことを考える。

いや待て。もしかしたら、人生初の、ただの恐怖体験かも。お化け的な何かかも。実物ない的な奴かもしれない。

靴を脱ごうとした前屈姿勢から、そっと頭を上げる。どうでもいいけどこの体制辛い。私体固すぎないか。

暖簾のように垂れた前髪の隙間から裸足の脚が見えて、私の思考は絶望に染まる。足が生えてるってことは実態あるじゃないか。いやでも、動き始めてしまった動作を止めるのもよくない、気がする。そーっと、そーっと視線を上げた。

白い着物だ。足から順に明らかになって行く、その全貌を注意深く観察した。たぶん浴衣だ。着物の種類はよく分かんないけど、なんか浴衣っぽい。いやでも、男性の着物って女性のよりわかりづらいしな、どうなんだろう。とにかく白い和服だ。やっぱりお化けか?いやでも足生えてるし・・・。


っていうか肌白い。くそ、私より絶対白い。なんだあの白さ。



そう思った瞬間、男の脚が一歩前に、私の方に踏み出された。



びくぅっと体が顕著に反応して飛びずさりつつ、バランスを取る関係で視界が一気に開けた。
その瞬間、結論はでた。これは人間じゃない。お化けだ。と。

ちょっと安心した。暴漢に入られるよりはお化けの方がよほどましだ。

そんなことより前屈から一気に起き上がったせいでふらっと体制が崩れた。このまま倒れると、恐らく後頭部がドアに激突する。いやだ。絶対痛い。

スローモーションで思考が流れる。目を瞑るという命令が、どうにも瞼に届かない。後ろに倒れ込む瞬間、するり、と冷たくて滑らかな感触が私の手を掴み、がくんっと腕を引かれ、慣性の法則に頭を揺さぶられながら今度は逆に、引っ張られるまま前のめりに倒れ込んだ。思考はスローなままで、数瞬の出来事のはずなのに、コマ送りの映像を見ているようだ。視界の横を長い髪が揺れて流れていく。

白。その男は、その眼以外はどこもかしこも白かった。髪も肌も着物も全部。ただその目だけ、金色に光っていた。瞳孔が縦に細長い。どういうわけか蛇の目だと思った。


どさ―――


軽い衣擦れの音と共に体に軽い衝撃が走り、しかし精神にはとんでもない衝撃が走った。頬に触れる布の感触。普通に、とんでもなくリアルな感触だ。



 「・・・危なかった。大丈夫?」

 「・・・・」



呆然としたまま動けない。

肩を掴まれて、そっと密着していた体が離れた。覗き込むようにして白い顔が、切れ長の瞳孔の細い目が、私を見た。ああ、背が高いのか。

待て待て待て。お化けなのに触れてるってどういうことだ。それ暴漢と何も変わんなくない?アウトじゃない?過去形じゃないよ現在進行形で危ないよ。ちょっとなにこれ意味わかんないよこわいよこいつ誰。


 「千尋?」

 「っ!?」


名前を呼ばれ、完全に体固まる。全身がこわばっている。なんだ、え、名前知ってる?この人知ってる人?それともストーカー?

繋がれた手が離されることはなかった。そのまま、その異形の男としばし見つめ合う。喉が詰まったみたいに何も言えない。叫ぶべきか?いやでも、角部屋だし、隣に人入ってないし、下の部屋も確か空いてたし、うち5階の最上階だし。というか、もう絶対人間じゃない時点で叫んだところでどうなるというんだ。喰われるのか?性的な意味じゃなくて、食欲的な意味で。

男は何がおかしいのか、ふふっとずいぶんやわらかい笑い声をあげ、笑みを浮かべた。不覚にもどきりとする。なにこいつ、その目玉はともかくとして、ずいぶんと奇麗な顔してるな。

なぜか、自身の部屋を手を引かれて誘導される。なんだ、この状況は。どうしたらいいの。

連れてこられたのは、ワンルームながら、間仕切りとツッパリ棒カーテンで手作りした洗面所だ。誰が何と言おうがこれは洗面所だ。灯りのつく鏡だって設置したし、棚も設置したもの。

違うそこじゃない。今はそんなことどうでもいい。なんでお風呂場?なに、食べる前に洗うの?え、そゆこと?どうしよう、注文の多い料理店みたいにクリームを塗りこんでくださいとか言われたら。あはは・・・・・ダメだ想像つきすぎて全然笑えない。

血の気が失せる。サーっと自分が青ざめていく音を聞いたのは初めてだった。あーあ、なんかもうほんと最近よくないことばっか。喰われるのかな。正直死ぬのは別に・・・いや、勿論死にたいわけじゃないんだけど、死にたくない!って叫ぶほどの後悔はないっていうか、なんとなく生きてるだけだからあれなんだけど。でも喰われるのは別だ。痛いのはいやだ。自分が食われていくところとか絶対見たくない。ムリ。グロすぎる。


 「さっきは大丈夫だった?頭、打たなかった?」
 「・・・・・」


ぽかん。と、私はまさにそんな表情をしているに違いなかった。心底心配そうな視線のおかげか、蛇を思わせる目でもずいぶん優しい印象に見える。ぶしつけだとは思ったが、まじまじと男を見てしまった。


 「お風呂、沸かしておいたから、さきに入っておいで?ご飯、温めておくから」
 「・・・・・」


なんだこれは。一体どういう事だ。あれ私、そういえば彼氏とかできたんだっけ?これはあれなの?爬虫類系彼氏?むしろ嫁?いや待て落ち着け。違う。断じて違う。初対面だ。こんな一回会ったら絶対忘れないような容姿の男を忘れるわけがない。


 「千尋?本当に大丈夫?やっぱり頭打ったの?」


そうか。そうだな。頭打ったのかもしれない。とりあえず、お風呂入って落ち着こう。いろいろなことに対して首を振りながら。私はふらふらと服を着たまま浴室へと入った。

「ゆっくりつかるんだよ?」という言葉と、去っていく足音と、カーテンを閉めるしゃっていう音がして、私はそこにへたり込んだ。うちは狭いながらにバストイレ別の部屋なので、小さな洗面台と湯気で曇った鏡、シャワー、洗面道具を入れたカゴという、本当に普通の、よくある一人暮らしのお風呂場だった。ソックスが濡れる。もわんとした湯気が漂っていた。蛇男の言うとおり、広くもない湯船には、たっぷりと湯が張ってあった。


えっと・・・・ええと・・・頭、打ったんだっけ?むしろこれから打てばいいんだっけ?よろよろと立ち上がって、そのまま風呂に浸かろうとして、おもわず「じゃなくって!」と自分に突っ込んだ。何風呂にはいろうとしてるんだそうじゃないだろう馬鹿か。っていうか服着てるから。

こんな知らない奴がいる部屋で無防備に風呂なんぞ入れるか。汗流したいけど!走ってきたんだから汗だくなんだけど!布なんて何の防御力もなさそうだけどでも食べにくそうだし、ないよりましだ。

残念ながら今手元にあるのは音楽プレーヤーとイヤホンと、小銭が少々のみだ。スマホすら、ベッドで充電中とか全然笑えない。警察呼ぶってどうやって呼ぶつもりだったんだ私。窓から「パトカー!」とか?あほか。

とりあえず、武器だ。武器。えっと、マジ○クリンでいいや。もう。これくらいしかない。実家にいた頃、これで黒光りするヤツを撃退したこともあるし、蛇男にだってきくんじゃないか。目つぶしくらいにはなりそうだ。

私はそっと風呂場から出て、四つん這いで洗面所(自作)のカーテンの下を持ち上げ、そっと様子を伺った。



男はキッチンに立っていた。後ろ姿が見える。お玉をもって鍋をくるくるしてるようだ。髪奇麗だなおい。白髪の癖につやつやとかどういう事なの。


あ、お味噌汁のいい匂いしてる。おみそしる。じゅるり。しばらく食べてない。走ったしお腹減った。あの黄色いのだし巻き卵かな。めっちゃ奇麗にまかれてるな。すごっ!あー、なんかごま油のいい匂いしてる。なんだろう。炒め物かな。はっ、ホウレン草の胡麻和えがある!大好物!

口の中に溜まった涎を飲み込んだのと、男が振り向いたのはたぶんほとんど同時だった。


ばっちりと目が合う。しばらく固まる。いつの間にか前進していたらしく、カーテンから上半身が完全に出ていた。はっとして慌ててカーテンの奥にひっくり返るようにしてすっこんだが、足音は近づいてきてカーテン越しに止まった。ゆらゆらと揺れる白地のカーテンに黒い人影ができた。


「千尋?どうしたの?」


心臓がばくばくと音を立てる。尻餅をついて背中をお風呂場のドアに預けた状態で、武器(マジッ〇リン)を握りしめた。


「お腹すいちゃった?」


せわしなくなってしまいそうな呼吸を、唇をかみしめて耐える。ここで息をひそめたところで何の意味もないことなんてわかっていたけれど、そうしないではいられなかった。様子を伺っていると、ストン、と男の影がいきなり落ちるようにして縮んだ。影の様子からして、どうやらしゃがんだらしい。

それから、特に躊躇うこともなくカーテンが開け放たれた。武器を構える間もなくて、私は竦んだまま動くことができなかった。目を閉じることがどうしてもできなくて、男を凝視する。どうにも困ったような顔をしていた。やっぱり、随分きれいな顔をした男だ。爬虫類っぽいけど。目玉も怖いけど。

男はへらっと笑うと、頬をひっかくようにして掻きながらゆっくりと口を開いた。


「怖がらせちゃったね。大丈夫だよ。なーんもしない。お味噌汁も温まってるし、グリルの中に鮭も焼けてるからね。ご飯も炊けてるよ。一緒に食べたかったけど、仕方ないね。お風呂に入ってから、食べて。
じゃあおやすみなさい」


男の姿がゆら、と蜃気楼か何かみたいにゆらいで、それから吸い込まれるようにして掻き消えて、ごろん、と何かが転がった。

そこには、ひびが入ってしまったお気に入りの白蛇の置物が、無造作に転がっていた。


武器を構えたまま、そっちに近づく。お気に入りの置物に間違いない。そのキリッと凛々しいお顔も接着された傷跡も、間違いない。つん、と指先でつついてみる。ころころと動くけれど、それだけだ。普通の瀬戸物だ。そうっと持ち上げてみる。大変手に馴染むいつも通りの感触だ。

すわ白昼夢か、とキッチンを見るが、湯気の立つ鍋も、色とりどりの和風なおかずも、そこにはちゃんとあった。


恐怖が霧散していく。なんだ、と思った。いや、摩訶不思議な出来事だけれど。超不思議だけど。

私はマジック〇ンをその場において立ち上がると、宮島で買った鳥居の置物の向こう、定位置に白蛇の置物を戻した。それから、ありがたくお風呂を頂くことにした。


体を洗い、湯船につかる。恐怖心の残滓がまだ胸につかえていたけれど、それも、なんだ白蛇さんか、という思いが上回っていて、すぐ消えてしまいそうだ。なんでだろ。白蛇さん、割っちゃったのに、なんでごはん?っていうかこんなことあるの?不思議―。とりあえず、警察呼ばないでよかったー。

お風呂をあがると、パイル素材のパーカーとショートパンツタイプの部屋着に着替え、タオルドライで済ませた髪でペタペタとキッチンの前に行く。言われた通り、グリルには焼き鮭が入っていて、炊飯器には白米が入っていた。何とも豪勢な御夕飯だ。それらを盛り付けて、ベッドの手前にあるローテーブルに並べ、ソファに座る。白蛇さんの置物を見ていただきます、と頭を下げ、そういえば、白蛇さんも一緒に食べるつもりだったみたいなこと言ってたな、と思ってちらり、と視線を向ける。


「し・・・・、白蛇さん」


返事はない。いや普通返事とかないんだけど。いやでも、どうしよう。彼もおなかがすいているんだろうか。だとしたら悪いことをした気がする。たとえ突然現れて、めちゃくちゃ怖い思いをしたとしてもだ。小さな鳥居の向こうの小さな置物にもう一度声をかける。


「白蛇さん・・・・、ご飯、ありがとうございます。・・・あの、・・・・・一緒に食べませんか・・・?」


たぶん。おそらく。

私は寂しかったのだ。ひどく温もりに飢えていて、だから、何だかどうにも偏屈な私が心を許せそうな、異形の男の出現に少しばかり、心が躍ったのだ。

一言でいうならば、血迷ったというべきだろう。



私の発言による状況の変化は顕著だった。

白蛇さんの置物がぎゅるん、とねじれて、本物の蛇みたいにとぐろを巻きなおした。陶器の艶やかさはそのままに、だ。そうしてちろちろとその桃色の舌を数度出し入れすると、鳥居をくぐってこちらへやってきた。そうして私の目の前でぽふん、とずいぶんかわいらしい音と白い煙を立てて、瞬く間にさっき料理を作っていた男に大変身した。わお、本当に白蛇さんが擬人化したやばい。

至近距離の奇麗な顔に少しばかり鼓動が早まるのは女性の性ってことにしてほしい。現金なもので、白蛇さんの置物が動いているんだと思ったら、不思議なことはあるものだ、と思いつつも、その目玉も全然怖くはなくなってしまった。

白蛇さんははにかんだような、少し戸惑ったような笑みを浮かべて私の目をのぞき込むように見下ろしながら聞いてきた。


「ご飯、一緒に食べていいの?」

「え、と・・・はい。あの、私とでよければ是非」


さっき散々怯えてしまったから、遠慮されているんだろうか。なんだか申し訳ない。むしろ彼がこの豪勢な晩御飯を作ってくれたのだし、すみません、いただきますといわなければならないのは私のほうだ。


「白蛇さんが、」

「ニシキ」

「え?」


白蛇さんが作ってくれたんだし、と言おうと押した言葉は途中で遮られ、私は小首を傾げながら問い返した。


「私の名前はニシキっていうんだ。ね、そう呼んで?」


ひぃいっなんでいきなりそんなセクシーボイスで名乗るんですか。ちょ、やめて!耳に毒!


「千尋?」


いつの間にか抱きかかえるように体温の低い手が私の背に回っていた。え、なに、え。うっとり目を細めないで、やめて、エロいよこの人なんなの。

ひどく甘ったるい声で名前を呼ばれて背筋がぞくんっと震えた。ちょっと、近いよ。え、なに。なんなの。この状況どういうことなの。


「さあ、呼んで?」

「っ」


あわあわしていると、冷たい指先が私の唇をするりとたどった。促されたまま、その名を舌で転がすみたいにして呼ぶ。


「に、ニシキ、さん」

「ふふふっありがとう」

「え、ちょ、んむっ!?」


ニシキさんの端正な顔が近づいてきて、はっとした私はあわてるが、唇をたどった指が顎にかかり、やんわりと固定されて、そのまま大した抵抗もできないまま、口づけられた。

びっくりして、逃げるために腕をつっぱろうとしたが、それもやんわりと背中に回された腕で抱き込まれあっさりと抑え込まれる。

唇で食むようにそっと添わせるように、キスされる。少し冷たいその唇はひどく優しく押し当てられていて、びっくりするほど気持ちがよかった。

舌でなぞられるわけでもないのに、じれったくなるような熱が下腹部にたまっていく久々の感覚に焦りと期待が渦巻く。

ど、どうしようっと何に対してだかもはやわからない疑問を抱きかけたところで、する、とただ添えられていただけの腰の手がゆっくりとさらに抱き込むように力を込めて横にスライドした。

びくっと体が震えたのは反射だ。ぞわり、と寒気に似た感覚が腰から背中にかけて走っていく。息を詰める。

はあ、と触れ合ったままほんのわずかに離れたニシキさんの唇から吐息が漏れた。それに誘われるように私も吐息を吐く。視線が交わる。目元だけで笑みを作って彼はあわてるわけでもなく、またゆっくりと唇を添わせてきて、今度は舌が吐息を吐き出したまま半開きになっていた唇の中に侵入してきた。いや違う。私は彼の舌が入ってくるのを待っていたのだ。焦りなんてどこかに消えて、もうほとんど欲望が脳みそを占めていた。


「んっ、ふ・・・」


くちゅ、と小さな粘着質な音を立てて舌を絡めとられた。ニシキさんの舌は少し薄くて、長くて、ちょっとだけ冷たかった。

舌の表面をこするようになぞられ、上あごの凹凸をたどられ、ほほの内側をなめとられ、体中から力が抜けていく。

ひやり、と肩が外気に触れて初めて、ニシキさんの手がふしだらに私の部屋着を脱がしにかかっていることに気が付いたけれど、キスが気持ちよすぎてもはやどうでもよかった。


「ん、・・・んぐっ!?、んっんっ、んっ」


霞がかった思考でされるがままキスにおぼれていると、ぐにゅり、とちょっと他人には舐められたことがないような奥のほうまでニシキさんの舌が迫ってきた。さすがに慌てるが、ぼやけた思考での抵抗はどうにもワンテンポ遅いらしく、その行為が辞められることはなく、むしろ私がやわらかくいさめられてしまう。顎にあったはずの手はいつの間にか後頭部に回っていて、やさしく私の髪に埋まり、力の入っていない私の首を支えていた。そんな状況で抵抗らしい抵抗ができようはずもない。

舌に舌が巻き付き、搾り取るような動きをされる。強い力ではない。舐めるようなやわらかい力加減で扱かれる。けれどそれによって巻き起こる感覚は未知のもので、暴れだしたくなるような経験したことのない疼きが下腹部にずんと重たくたまっていく。首を振ろうとするが後頭部の手がそれを許さない。ぎくんっと腰が跳ねるが、それも腰に回された手にやさしく拘束される。


「んふぅ!んう!んっ、んんー!、んっ・・・・んーー!」


胸の締め付けがなくなる。でもそんなことはどうでもよかった。子宮がぐずぐずと疼く。まるで挿入されてるみたいな快感が脳みそに直撃していた。

これはなんだ。こんなキス知らない。っていうか人間じゃ絶対にできないからこんなの。舌、舌が変になっちゃう。やだ、だめ。

必死に抵抗する。だめだ、なんか変だ。これだめ。折りたたまれて押しつぶされている手で必死にニシキさんの着物をつかむ。涙が出る。元カレとのそれで泣いたことなんてもちろんない、どころか、イったことすらないのに。なんだこれは。頭がおかしくなりそうで怖い。

びくっびくっとなんどもはしたなく腰が跳ねる。足なんてとっくの昔に力が入っていないのに、彼に支えられて立った姿勢のままだ。

もうだめだ、と頭が真っ白になりそうな、ほんの一歩手前で、くちゅ、と今までのキスが嘘だったのかと思うようなかわいらしい音を立てて舌が解放された。


「んはっ、ふっはぁっ、はっ」

「はあっ、ふふっ。かーわいい。蕩けた顔してる」


頬を涙が伝い落ちる。呼吸が整わない。もう全然、何にも考えられない。このキスとは言い難い行為がひどく気持ちがいいということしか頭になかった。

腫れぼったい唇を親指で拭われて、そのヒヤッとした感触にすらぶるりと体が震えた。


「にし、き、さん」


舌がしびれていて、発音が怪しい。


「私ばっかり食事していてはだめだね。ほら、おいで?」


おいで、といいながらも、彼は私をひょいっと軽々しく抱き上げて、ソファに座ると、その膝の上に横抱きのまま私を座らせた。まだ頭の芯がしびれていて回復できていない私は、されるがままだ。


「千尋、何を食べたい?」


何を言われているのかさっぱり理解できずに首をかしげると、チュッと口づけられる。


「よくわかっていないね?いいよ。じゃあ最初はお味噌汁かな」


にこにこと上機嫌な笑顔でニシキさんは私を抱いたまま体を倒してテーブルからお椀をとる。その時、合わせから彼の白い胸板がのぞいて、ぞくっとする。触りたい。

頭がぼーっとしたままの私は、その欲求のままにするっと袷から手を差し込んだ。ぴくっと彼が反応したのが指先で分かった。だめだったか、と思って彼を見上げると、にこにこと「続きをどうぞ?」と促された。そして私を見下ろしたままお椀を口に当てて、それを少し傾けると、そのまま私に口づけた。


え、なに?どゆこと?


意味が分からないまま、しかしキスが気持ちのいいものと理解している体は当たり前のように口を半開きにしてそれを受け入れた。

ゆっくりと温いお味噌汁が口に流し込まれる。人の体温が混じったそれが普通なら気持ち悪く感じそうなものなのに、何の抵抗感もなく、こくりと飲み込んだ。


「おいしい」

「そう?もっと?」

「ん。もっと」

「ふふっ、はい。ちょっと待って」


何度か口移しでお味噌汁を与えられる。少しばかり正気付いてきた私は、もちろん自分で食べようとお椀に手を伸ばしたのだが、そのたびにあの、舌に巻き付いて扱かれるという意味の分からないキスをされて、頭のねじが緩む。結局、焼き鮭も卵焼きもホウレンソウの胡麻和えもきんぴらごぼうも口移しで与えられる羽目になった。ひな鳥かよ。


「はぅっ、んはっ、も、んんっ」


ぐじゅっとまた舌を扱かれて、体ががくんっと痙攣する。これはなんなのか。頭が白くなりそうな、爆発してしまいそうな、ひどく恐ろしい感覚だ。

また放り出されてしまいそうな感覚に蹴りがついてしまいそうなその瞬間のほんのわずか手前で、唇が解放され、私は荒い呼吸を繰り返す。


「もうお腹いっぱい?」


にこにこしながら私の頬をなでる彼にこくこくと何度かうなずいて見せる。


「それはよかった。じゃあ今度は私がいただこうかな」


言ってる意味はまるで分からなかったけれど、彼がものすごくエッチなことを考えているのはその表情からダダ漏れだった。ちょっと引く。色気が滴ってる。もはや怖い。身の危険を感じるレベルだ。いやここまでぐでんぐでんにされていて今更だけれど、なんかますますやばそうだ。


「ねえ、千尋。正直に答えてね?」


包み込むようにして私の頬に手を添えながら、額を合わされた。もう視界には彼の瞳孔が縦に割れた目しか入らない。


「絶頂とか、オーガズムとか、要はイったことってある?」

「っ・・・・」


思わず目をそらした。

イったふりをしたことは何度となくあった。だって傷つけたくなかったのだ。気持ちいいのは本当だ。私は別に、不感症ではないつもりだし、元カレと、その、えっちするのは嫌いじゃなかった。

でもイくというのが一体どういったものなのかといわれると、とんとわからないのだ。経験がないのだから、仕方がない。イけないというのが、なんだかひどく申し訳なくて、最終的に私はイったふりをしてしまったのだ。それからはもう、嘘をつき続けるしかなくて、適当にそんなふりを、演技をしていた。


「ないんだね?ふふっうれしい」

「え」

「ね。さっき何回か頭が白くなりそうになった?」


ニシキさんの問いに素直にうなずく。あの感覚は怖かったのだ。もうごめんだ。よしよし、と子供にするように頭をなでられる。気持ちがいい。


「怖かったの?ずっと抵抗してたけど」

「・・・・・」


また目をそらす。沈黙が肯定であることは正確にくみ取られてしまったらしい。ふふっとやわらかい笑い声が降る。


「怖かったんだね。いいんだよ。もうほんとにかわいいなぁ、千尋。私が、千尋にたくさん気持ちのいいこと教えてあげる」


どうにも怪しい発言に思わず彼へと視線を戻した。なんか、ぼんやり、ニシキさんの目が光って見える。やさしそうなんだけど、でも、体が動かない。

ニシキさんの口がぱかって開いて、細くとがった牙がのぞいた。その先端から透明なよだれとは違う液体が垂れている。


それまでとは違った寒気が背筋を流れるけれど、脳内がマヒしたままなのか何なのか、まあいいか、と思った。本当に食べられてしまうのだとして、先に毒で死ねるなら楽でよさそうだ。

どうにも私の瞼は反抗的らしくて、どうしても目を閉じることができない。その牙を直視するのをやめられない。

牙が迫る。私の首筋に埋まる。つぷっと、驚くほど痛みを感じさせずにそれは血管への侵入を果たした。熱い何かが体内でジワリと広がる感覚がした。そして牙はすぐに引き抜かれる。「あ」と間抜けな声が漏れた。
どうしよう、血管から溶けて行ったりするのかな。でも蛇って丸飲みだよね。私も丸飲みなのかな。

傷口から耳の裏までをべろりと長い舌で舐め上げられる。


「ちょっと怖いのくらい吹き飛ぶくらい、気持ちよくしてあげるからね?」


じり、と噛まれた首筋がしびれるように疼いた。






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