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夢クジラ(前編)
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ボクは夢の中を泳ぐ青い夢クジラ。
そこに、なやむ人がいるから、
そこに、生きる人がいるから……。
人がなやむたび、
夢の海に、黒い花が咲くから、
ボクはそれを食べる。
おいしいわけじゃないよ。
食べたら、なやんでいた人が、
笑顔になるから、
そうするんだ。
それが、ボクのしあわせ。
ある時、きづいた。
ボクのからだが、
灰色になっていることに。
「え、なんで……?」
浮かんだのは、黒い花。
でも、そんなわけないと、
ボクは黒い花を食べ続けた。
からだの色が、濃い灰色になっても、
ボクはやめなかった。
やめられなかった……。
「ねぇ、だいじょうぶ?」
通りがかった、ぴんく色の夢クジラさんが、
ボクの顔をのぞきこむ。
「キミ、そのままだと死んでしまう……」
「……どうして?」
そんな気はしていたけど、
理由までは知らない。
「黒い花を食べなかった?」
「……食べた」
「どうして、そんなこと……」
「……人が笑顔になったから」
ぴんく色の夢クジラさんは、
哀しい顔をした。
「黒い花を食べてはいけないの」
「どうして?」
「それが人の悪夢で生まれ、
人の涙で育つから」
「食べたら、みんな元気に!」
「悪夢は気をつけないという神さまの伝言。
黒い花を食べるのは、
その人の考える時間や可能性をうばうということ」
「ボクはいけないことをしたの?」
「……ええ」
「でも、苦しんでいる人を見ていられなくて」
「人を愛するなら、人を信じてあげて」
ボクはうつむいた。
そんなつもりなかったのに、涙があふれる。
透明な涙は、灰色になり、
灰色の涙は、色を濃くしていく。
「涙が止まらないなら、
とことん泣いていいの。
次に笑顔になるには、
どうすればいいか考えるのよ」
ぴんく色の夢クジラさんは、
それだけ言い残すと、
いつの間にか、ボクの足元に咲いていた、
黒い花を食べた。
その瞬間、ボクの涙は止まった。
でも、胸のモヤモヤは消えなかった。
「キチンと自分で考えないと、
次の方法もわからないの。
また同じことをするし涙も止まらないのよ」
「ごめん」
「いいのよ。もう、あたしは……」
そう言って、ボクに笑いかけてくれた、
真っ黒な夢クジラさん。
「……え?」
ボクは気づいた。
「どうして真っ黒なの……?」
「キミは、人の悪夢で育った、
黒い花を食べてきた。
夢クジラの黒い涙でも、
黒い花は生まれるのよ」
真っ黒な夢クジラさんの瞳の中に、
青い夢クジラに戻ったボクがいた。
ボクはイヤだと、
何度も何度も、首をふり続けた。
「死なないで!」
「あたしも、キミと同じだった。
死なせたくない仲間を、
黒い花のせいで、
死なせてしまったの」
「ボクのために死なないでよ……!」
ぴんく色の夢クジラさんだった、
真っ黒な夢クジラさんは、
いいえ、と優しく笑って、
黒い泡になって、消えてしまった。
ボクはひとりで考えた。
そして、黒い花を食べなくなった。
どんなに泣いても、
失くしたものはかえらない。
だけど……。
同じように悩む人や夢クジラたちを、
見守ることはできると思った。
それから、とても長い時が過ぎた。
「泣いているのです?」
初めて、ボクが見える人と出会った。
そこに、なやむ人がいるから、
そこに、生きる人がいるから……。
人がなやむたび、
夢の海に、黒い花が咲くから、
ボクはそれを食べる。
おいしいわけじゃないよ。
食べたら、なやんでいた人が、
笑顔になるから、
そうするんだ。
それが、ボクのしあわせ。
ある時、きづいた。
ボクのからだが、
灰色になっていることに。
「え、なんで……?」
浮かんだのは、黒い花。
でも、そんなわけないと、
ボクは黒い花を食べ続けた。
からだの色が、濃い灰色になっても、
ボクはやめなかった。
やめられなかった……。
「ねぇ、だいじょうぶ?」
通りがかった、ぴんく色の夢クジラさんが、
ボクの顔をのぞきこむ。
「キミ、そのままだと死んでしまう……」
「……どうして?」
そんな気はしていたけど、
理由までは知らない。
「黒い花を食べなかった?」
「……食べた」
「どうして、そんなこと……」
「……人が笑顔になったから」
ぴんく色の夢クジラさんは、
哀しい顔をした。
「黒い花を食べてはいけないの」
「どうして?」
「それが人の悪夢で生まれ、
人の涙で育つから」
「食べたら、みんな元気に!」
「悪夢は気をつけないという神さまの伝言。
黒い花を食べるのは、
その人の考える時間や可能性をうばうということ」
「ボクはいけないことをしたの?」
「……ええ」
「でも、苦しんでいる人を見ていられなくて」
「人を愛するなら、人を信じてあげて」
ボクはうつむいた。
そんなつもりなかったのに、涙があふれる。
透明な涙は、灰色になり、
灰色の涙は、色を濃くしていく。
「涙が止まらないなら、
とことん泣いていいの。
次に笑顔になるには、
どうすればいいか考えるのよ」
ぴんく色の夢クジラさんは、
それだけ言い残すと、
いつの間にか、ボクの足元に咲いていた、
黒い花を食べた。
その瞬間、ボクの涙は止まった。
でも、胸のモヤモヤは消えなかった。
「キチンと自分で考えないと、
次の方法もわからないの。
また同じことをするし涙も止まらないのよ」
「ごめん」
「いいのよ。もう、あたしは……」
そう言って、ボクに笑いかけてくれた、
真っ黒な夢クジラさん。
「……え?」
ボクは気づいた。
「どうして真っ黒なの……?」
「キミは、人の悪夢で育った、
黒い花を食べてきた。
夢クジラの黒い涙でも、
黒い花は生まれるのよ」
真っ黒な夢クジラさんの瞳の中に、
青い夢クジラに戻ったボクがいた。
ボクはイヤだと、
何度も何度も、首をふり続けた。
「死なないで!」
「あたしも、キミと同じだった。
死なせたくない仲間を、
黒い花のせいで、
死なせてしまったの」
「ボクのために死なないでよ……!」
ぴんく色の夢クジラさんだった、
真っ黒な夢クジラさんは、
いいえ、と優しく笑って、
黒い泡になって、消えてしまった。
ボクはひとりで考えた。
そして、黒い花を食べなくなった。
どんなに泣いても、
失くしたものはかえらない。
だけど……。
同じように悩む人や夢クジラたちを、
見守ることはできると思った。
それから、とても長い時が過ぎた。
「泣いているのです?」
初めて、ボクが見える人と出会った。
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