居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

第五章

新じゃがのコロッケと、本当の気持ち⑪

（俺はバカだ）

手を出す前に、もっとやるべきことがあった。彼女の体を求めるよりも、心を支えることに尽力すべきだった。

それを今さら後悔したところで、もう遅い。

今の俺にできるのは、過去を悔やむよりも全力で山田さんに寄り添うことだけ。

彼女が、それを許してくれるのなら。

いや。許してもらえるよう、誠意を尽くすだけだ。

それから山田さんは、ポツリポツリと心の内側を吐露してくれた。

少しずつ、少しずつ。

時折涙目になる姿を見るたびに、胸が軋んだ。

「ごめんなさい。会社の人の悪口みたいなこと」

「山田さん、これは悪口とは違う。事実だ」

「大澤係長は、私を信じてくれるんですか？」

打ち明けてくれた後も、不安げに揺れる瞳。今までどれだけの理不尽に耐えてきたんだろう。

考えれば考えるほど、腹が立って仕方ない。腑が煮えくりかえるとはまさにこのことかと、三十を目前にして初めて知った。

「当たり前だろ？誰がなんと言おうと、俺は君の味方だ。山田さんが嘘を吐くはずがない。今の今まで周りを気遣って黙って一人で抱え込んできた君が、そんなことするわけがない」

「大澤係長…」

「なにがあっても、俺は山田さんを信じるから。だから、大丈夫」

「…っ、ありがとう、ございます」

彼女の目尻に溜まった涙が一筋、ポロリと零れ落ちる。

抱き締めたい衝動を必死で抑え、代わりにもう一度ゆっくりと頭を撫でた。

山田さんは安心したように、瞼を閉じる。

今すぐにでも怒鳴り込みたい。山田さんを追い詰めたくせに、今もなおのうのうと会社に在籍している連中を。

だけどそんなことをしてもこの子は喜ばないと、容易に想像がつく。

俺に話してくれたのは、相手に報復したいからという理由ではないことは明白だ。

（絶対に許せない）

例え彼女が望んでいないとしても、このままでいいとはどうしても思えなかった。