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第六章
お洒落なランチと、あの人①
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フローリングに簡易モップをかけながら、時々立ち止まっては思い出して一人もだもだする。
そんなことを繰り返した結果、いつもの何倍も時間がかかってしまった。
ーー山田さんのことが好きだ。俺と、付き合ってほしい
ーーなにがあっても、俺は山田さんを信じるから。だから、大丈夫
ーー山田さんを傷つけないためなら、なんだってする。だから山田さんも少しずつでいいから、我慢しないで本音で話して
大澤係長からもらったたくさんのセリフを思い出しては、泣きそうになる。
それからその後の、素直になれなかった自分のことも。
私がここを出ていくと言った時の、係長の傷ついた顔。彼は誠心誠意を込めて伝えてくれたのに、私はなんてことを言ってしまったんだろう。
気を遣った、つもりだった。
面接を受ける予定の会社の前に立って、涙が溢れて止まらなくて、結局受けることすらできなくて。
そんな自分に、絶望した。
これじゃあ、次の仕事を見つけられない。
こんな私は相応しくないから。だから、離れようと思った。これ以上迷惑をかけないためにも。
なんて綺麗事を並べても結局は、これ以上情けない姿を見られたくないというただの見栄。私は、自分のことしか考えてなかったんだ。
「…もう、同じことしないようにしよう」
手で乱暴に目元を拭って、モップかけを再開する。
相手を思いやることと、自分本意に気を遣った気になることは違う。
もう、大澤係長にあんな顔をさせたくない。
ーー俺は山田さんのことが好きだ
私も、もうとっくに大澤係長のことが好きだ。
素直なこの気持ちを、胸を張ってそう伝えられるように。これからのことを、ちゃんと考えよう。
そんなことを繰り返した結果、いつもの何倍も時間がかかってしまった。
ーー山田さんのことが好きだ。俺と、付き合ってほしい
ーーなにがあっても、俺は山田さんを信じるから。だから、大丈夫
ーー山田さんを傷つけないためなら、なんだってする。だから山田さんも少しずつでいいから、我慢しないで本音で話して
大澤係長からもらったたくさんのセリフを思い出しては、泣きそうになる。
それからその後の、素直になれなかった自分のことも。
私がここを出ていくと言った時の、係長の傷ついた顔。彼は誠心誠意を込めて伝えてくれたのに、私はなんてことを言ってしまったんだろう。
気を遣った、つもりだった。
面接を受ける予定の会社の前に立って、涙が溢れて止まらなくて、結局受けることすらできなくて。
そんな自分に、絶望した。
これじゃあ、次の仕事を見つけられない。
こんな私は相応しくないから。だから、離れようと思った。これ以上迷惑をかけないためにも。
なんて綺麗事を並べても結局は、これ以上情けない姿を見られたくないというただの見栄。私は、自分のことしか考えてなかったんだ。
「…もう、同じことしないようにしよう」
手で乱暴に目元を拭って、モップかけを再開する。
相手を思いやることと、自分本意に気を遣った気になることは違う。
もう、大澤係長にあんな顔をさせたくない。
ーー俺は山田さんのことが好きだ
私も、もうとっくに大澤係長のことが好きだ。
素直なこの気持ちを、胸を張ってそう伝えられるように。これからのことを、ちゃんと考えよう。
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