居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

第十三章

思い出のちらし寿司と、未来の夢⑥

箱根湯本駅に到着して、構内にあるカフェでちょっと遅めの昼食を摂る。

パンもカフェオレも、凄く美味しい。特に感動したのが、卵型の可愛らしい器に入った箱根プリン。

なめらかで食べやすくて、パンを食べた後でもペロリと平らげてしまった。

（これ、帰りにお土産に買って帰りたいなぁ）

「ずっと幸せそうな顔してる」

「だって幸せなんですもん」

「まだ特急乗ってカフェで飯食っただけだぞ」

「それでも十分最高です！」

この非日常感もそうだけど、新太さんとこんなに長い日数での旅行なんて初めてだから。

自分でも浮かれてる自覚はあるけど、緩みっぱなしの頬はどう頑張っても引き締まってくれない。

「新太さんには、日常の光景ですか？」

「いや、ロマンスカーなんか普段乗ることないからな。高校卒業して上京した時、こんな田舎から出られたのが嬉しくてしょうがなかったよ」

「とっても素敵なのに」

「俺の実家もっと奥のさらに田舎だしな」

「楽しみです」

「でも、不思議なもんだよな。来未といると、ここがすげぇいい場所に思えてくる」

「私は関係なく、いいところですよ。まだ駅に着いたばっかりだけど」

「そういう意味じゃないの」

新太さんは笑いながら、私の鼻を軽くつまんだ。

「ホント来未って、そこに存在してるだけで可愛いよ」

「…それ、ちょっとバカにしてますよね」

「してません？」

「もぉーっ」

「ハハッ」

新太さんの肩をポカポカと叩いても、楽しそうに笑われるだけ。

せめてもの抵抗で頬を思いきり膨らませてみたけど、横から指でつつかれて空気の抜ける音がして、余計に恥ずかしい思いをした。