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第一章「愛されぽっちゃり双子と悪役令嬢の姉」
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「ケイティベル。一つ確認させてちょうだい」
リリアンナは膝を折り、まだまだ小さな妹と視線を合わせる。十歳の令嬢にしては随分と幼いようにも感じるが、愛されているが故の素直さだと彼女は思っていた。
「な、なに?お姉様」
ここまで距離が近付いたのは初めてで、ケイティベルはあからさまに顔を強張らせている。双子にとって姉は、悪役令嬢と呼ばれる意地悪で冷酷な畏怖の対象でしかない。母ベルシアもことあるごとにリリアンナを批判していた為に、それが事実であると信じて疑わない。だって、見た目も態度も凄く怖いし全然優しくないし、と。
「貴女は本当に、エドモンド殿下との結婚を望まないのね?」
「えっ?どうしてそれを……?」
「お願いだから、貴女の素直な気持ちを教えてちょうだい」
深いロイヤルブルーの瞳の奥には、どんな考えが潜んでいるのかケイティベルには分からない。姉から嫌われていると思い込んでいる彼女は、果たして本当のことを打ち明けても良いのだろうかと、困ってしまった。助けを求めるようにルシフォードを見ても、彼も同じような反応をしていて頼りにならない。
「う、うん。私、外国には行きたくない。もし好きな人と結婚出来なくても、この国を出るなんて絶対に嫌なの」
「……そう。よく分かった」
勇気を出して本音を話したが、てっきり馬鹿にされるか叱責されるかのどちからかだろうと目を瞑って身構えていたケイティベルは、思ったよりずっと穏やかな声色が降ってきたことに驚き、顔を上げる。
「誕生日おめでとう、ケイティベル。ルシフォード。多幸の一年となることを祈っているわ」
リリアンナはそれだけ口にすると、音も立てずに立ち上がる。姉の不可解な行動に、双子は顔を見合わせた。
「お、お姉様……?どうしてそんなことを聞いたの?」
「もしかして、誰かに告げ口する気?ベルを傷付けたら、僕が許さないから!」
空色の瞳を揺らすケイティベルと、そんな彼女を庇うように前に出るルシフォード。いつも仲が良く一心同体の二人を、リリアンナはいつも羨ましく思っていた。
――お姉様、大好き!
そんな風に抱き締めてもらえる未来を、何度夢見たか分からない。けれどリリアンナが素直な気持ちを伝えるには、生まれた環境が悪過ぎた。誰にも祝福されず、認めてもらえず、悪役令嬢のレッテルを貼られて周囲から敬遠された。
どうして誰も本当の自分を理解してくれないのかと他者を責めたこともあったけれど、弟妹を見ていればその理由がよく分かる。いつも笑顔で明るくて、素直で可愛らしい。皆から愛される、リリアンナとは真逆の存在。結局は、すべて自分自身のせいなのだと。
「どう思おうと自由だけれど、これだけは言えるわ。貴方達に一切の非はないと」
ベルベットのドレスを優雅に翻し、リリアンナは去っていく。彼女の言動が何ひとつ理解出来ない二人だったが、背筋の伸びた後ろ姿と真っ白なうなじが妙に印象的で、しばらく視線を逸らせずにいたのだった。
リリアンナは膝を折り、まだまだ小さな妹と視線を合わせる。十歳の令嬢にしては随分と幼いようにも感じるが、愛されているが故の素直さだと彼女は思っていた。
「な、なに?お姉様」
ここまで距離が近付いたのは初めてで、ケイティベルはあからさまに顔を強張らせている。双子にとって姉は、悪役令嬢と呼ばれる意地悪で冷酷な畏怖の対象でしかない。母ベルシアもことあるごとにリリアンナを批判していた為に、それが事実であると信じて疑わない。だって、見た目も態度も凄く怖いし全然優しくないし、と。
「貴女は本当に、エドモンド殿下との結婚を望まないのね?」
「えっ?どうしてそれを……?」
「お願いだから、貴女の素直な気持ちを教えてちょうだい」
深いロイヤルブルーの瞳の奥には、どんな考えが潜んでいるのかケイティベルには分からない。姉から嫌われていると思い込んでいる彼女は、果たして本当のことを打ち明けても良いのだろうかと、困ってしまった。助けを求めるようにルシフォードを見ても、彼も同じような反応をしていて頼りにならない。
「う、うん。私、外国には行きたくない。もし好きな人と結婚出来なくても、この国を出るなんて絶対に嫌なの」
「……そう。よく分かった」
勇気を出して本音を話したが、てっきり馬鹿にされるか叱責されるかのどちからかだろうと目を瞑って身構えていたケイティベルは、思ったよりずっと穏やかな声色が降ってきたことに驚き、顔を上げる。
「誕生日おめでとう、ケイティベル。ルシフォード。多幸の一年となることを祈っているわ」
リリアンナはそれだけ口にすると、音も立てずに立ち上がる。姉の不可解な行動に、双子は顔を見合わせた。
「お、お姉様……?どうしてそんなことを聞いたの?」
「もしかして、誰かに告げ口する気?ベルを傷付けたら、僕が許さないから!」
空色の瞳を揺らすケイティベルと、そんな彼女を庇うように前に出るルシフォード。いつも仲が良く一心同体の二人を、リリアンナはいつも羨ましく思っていた。
――お姉様、大好き!
そんな風に抱き締めてもらえる未来を、何度夢見たか分からない。けれどリリアンナが素直な気持ちを伝えるには、生まれた環境が悪過ぎた。誰にも祝福されず、認めてもらえず、悪役令嬢のレッテルを貼られて周囲から敬遠された。
どうして誰も本当の自分を理解してくれないのかと他者を責めたこともあったけれど、弟妹を見ていればその理由がよく分かる。いつも笑顔で明るくて、素直で可愛らしい。皆から愛される、リリアンナとは真逆の存在。結局は、すべて自分自身のせいなのだと。
「どう思おうと自由だけれど、これだけは言えるわ。貴方達に一切の非はないと」
ベルベットのドレスを優雅に翻し、リリアンナは去っていく。彼女の言動が何ひとつ理解出来ない二人だったが、背筋の伸びた後ろ姿と真っ白なうなじが妙に印象的で、しばらく視線を逸らせずにいたのだった。
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