死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ

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「第二章 この状況を、有効活用することにしました」

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「お姉様ってやっぱり、とんでもない天邪鬼さんなのね」
「え……っ?」
「それに、めちゃくちゃ照れ屋さんだし」
「あの……っ?」
 責められれば責められるほど、リリアンナの顔が熟れたプラムに瓜二つになっていく。今回のことで二人は、姉は自分達の味方だとさらに確信を持つことが出来た。
「ごめんなさい、お姉様を試すような真似をして」
「な、なんのことだか、さっぱり分からないわ」
 彼女はあたふたと取り乱しながら、用もないのにかちゃかちゃと茶器を触る。今日の二人は朝から様子がおかしく、いつもとは雰囲気も違うと心配になった。
 いや、愛らしく可憐でいつまでも眺めていたくなるような可愛らしさは健在なのだが、普段ならリリアンナを恐れて近寄って来ない。
 それが今日は、手を握られたり遊びに誘われたり、本当に心の底から幸せと喜びを噛み締めている反面、私なんかに頼るほど不安なことがあるのかもしれない……、と考えると可哀想でたまらない。
 赤面した顔をぱたぱたと手扇で仰いで冷ましながら、どんな言葉をかけてやるのが正解かと悩む。そんなリリアンナが口を開く前に、二人は同時に勢いよく彼女に抱きついた。
「な、ななな……っ!」
 せっかくほんの少しだけ落ち着いたというのに、とうとうリリアンナの思考回路はぱん!と盛大な音を立てて破裂してしまった。

――ああ、もうだめこれ以上隠しきれない!可愛くて柔らかくて温かくていい匂いがして、まるでふわふわの白い雲に包まれて空を漂っているみたいだわ……。

 リリアンナの目は恋する乙女のように、とろんと甘く垂れ下がる。我慢の限界に達した彼女が勢いよく抱き締め返そうとしたその時、ロイヤルブルーの瞳に二人の泣き顔が飛び込んできて、ぴたっと手を止めた。
 ケイティベルとルシフォードは顔を真っ赤に染めながら、ひくひくとしゃっくりを繰り返す。ぽろぽろとこぼれ落ちる涙は、まるで互いに競い合っているかのようにどんどん溢れて止まらない。
 突然の弟妹の大号泣に焦ったリリアンナの指が、ティーポットにぶつかる。それが運悪く椅子の角に当たり、派手な音を立てて割れた。彼女が庇うように覆い被さったおかげで二人は怪我をしなかったが、破片が掠ったリリアンナの手の甲にはじわりと血が滲んでいた。
「お姉様が怪我を……!」
「これくらい平気よ、なんともない」
 その言葉を聞いた瞬間、双子の脳裏にあの恐ろしい記憶が蘇る。今と同じように自分達を庇い、自分は平気だと嘘を吐いた。最後の最後まで、リリアンナは自らの命と引き換えに守ろうとしてくれたのだ。
 裏腹な態度も、眉間の皺も、冷たい表情も、なにもかも関係ない。二人にとってはそれが事実で、姉は最初からずっと味方だった。怖がる必要なんてどこにもありはしなかったのだ、と。
「う、うわあぁぁん!お姉様ごめんなさいいぃ!!」
「僕達ずっと、お姉様に酷い態度ばっかりだった!!」
「本当の悪役は、私達だったんだわ!!」
 さらに火がついたようにわんわんと泣き叫び始めた二人を見て、リリアンナまで泣いてしまいそうになった。なにがこの子達をこんなにも悲しませているのだろうと、胸が軋んでずきずきと痛む。
「大丈夫、大丈夫よ。どうか落ち着いて、ゆっくり呼吸をするの」
 絨毯の上にぺたんと座り込んでしまった二人をしっかりと抱き寄せると、リリアンナは優しいリズムでとんとんと背中を叩く。ほんの少しゆらゆらとからだを揺すって、なるべく声をひそめながら耳元で囁いた。
 意外と低めのハスキーボイスは心地良く、まるで小舟に揺られているような気持ちよさにだんだんと心が凪いでいく。しゃっくりはすぐに止まらないが、大きな泣き声はもう聞こえなくなった。
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