死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ

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第四章「集う変人と犯人への手掛かり」

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トレンヴェルド王国といえば、近隣国でも一、二を争うほどの繁栄国として名高い。どちらかというと閉鎖思考を持った国が多いのだが、トレンヴェルドは積極的に移民を歓迎する珍しい風土の国だ。その柔軟さで富を増やし、混乱を招かないよう統治を徹底する国王の手腕も見事だと称賛されている。
 二人の息子は父親の意志を受け継ぎ、それぞれが別分野で才能を開花させた。第二王子エドモンドは寡黙だが優しい性格で、剣の才能に恵まれた豪傑な美丈夫。特に銀の髪とブラックダイヤの瞳は珍しく、あらゆる国の令嬢から熱烈なアプローチを受けているのだとか。
 そんな彼はちょうどリリアンナと同じ十八歳で、ケイティベルとは九つ歳の差があるが、高位貴族間では特段珍しいことではない。エドモンドとの婚約はエトワナ侯爵家のみならず、このセントヴェルト王国の発展にも繋がる重要な縁と言える。
 ケイティベルが彼の相手に選ばれたことは、両親にとって最大の喜びだっただろう。エトワナ家の格を上げたいという野心もあるだろうが、可愛い我が子に地位と名誉を与えたいという純粋な親心も確か。たとえケイティベルが食事を摂れないほどに嫌がっても、将来きっと幸せになれると信じて疑わない。
 妹に心から寄り添ったのは、リリアンナとルシフォードだけ。姉のやり方が正しいとは断言出来ないが、精一杯寄り添おうとしてくれたその気持ちが、ケイティベルは嬉しくて堪らなかったのだ。
「お姉様、早く早く!」
「最近新しく出来たカフェのクリームケーキが絶品だって、お友達の間でウワサになってるの!」
 レオニルとの話し合いを終えた数日後、気分を変えようとリリアンナは双子を街へ誘った。実はこっそり誕生日に欲しいものを聞き出そうという思惑もあり、彼女は使命感に燃えている。大切な十歳の誕生日には、誰よりも素敵なプレゼントを贈りたいと。それから、絶対に死なせないという願掛けの意味も込めて。
 ちなみに、レオニルは非常に落ち込んだまま放置されている。リリアンナが慰めれば慰めるほど彼の罪悪感は膨らんでいくようなので、そっとしてやるのが一番だと判断した結果だ。レオニルはリリアンナに対し「君がそんなに感情的な性格だと思わなかった」と告げたが、彼女は至極冷静に「それはお互い様」だと返した。
「二人と出掛けられるなんて……」
「また泣いてる!」
「ほらハンカチ!」
 感極まってえぐえぐと嗚咽を漏らす姉の手を引きながら、ぽっちゃり双子はるんるんと街を散策する。浮かれているのは三人同じで、その様子を少し後ろから侍従が温かい眼差しで見つめていた。
 ウィンドウショッピング、カフェでお茶、木陰のベンチでのんびり。どれもこれも、双子にとっては日常だがリリアンナは初体験。
 小さな子どものようにロイヤルブルーの瞳をきらきらと輝かせては、恥ずかしそうに頬を染める可愛い姉に、ルシフォードとケイティベルは顔を見合わせて笑う。知れば知るほど、彼女のことがどんどん好きになっていった。
「次はあの雑貨屋さんに行きましょう!」
「その後は模型店に行きたいな」
「地球の果てでも喜んで付き合うわ」
 楽しい時間はあっという間に過ぎていき、夕暮れに差し掛かるとリリアンナの心は途端に物寂しさを感じる。姉としてあるまじきことだと思いながらも、この幸せが永遠に続けばいいのにと願わずにはいられない。
 情けない顔を二人に見られないようふいっと顔を逸らした先に、偶然小さな宝飾店が彼女の視界に映った。
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