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第四章「集う変人と犯人への手掛かり」
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――ネックレスやカフスボタンを二人に贈ったらどうかしら。
エトワナ領は宝石鉱山を有している為、リリアンナも宝石についてはそれなりに詳しい。素敵な意味の込もった石を選んで、それを身につけられる宝飾品に加工してプレゼントしたら喜んでもらえるのではないかと、そんな考えに胸が躍った。
二人が他の店を見ている間に少しだけ覗いてみようと、ふらふらと宝飾店へ向かう。頭の中は弟妹のことでいっぱいで注意散漫になっていた彼女は、その道すがらどんと誰かにぶつかる。
「申し訳ございません」
「いや、こちらこそ失礼いたしました」
即座に謝罪したリリアンナの眼前には、帽子を目深に被った男性。口元しか見えない為よく分からなかったが、背格好から女性ではないことは明らかだった。
「お詫びをしたいところですが、急いでいるのでこれで」
早急な口調でその場から立ち去った彼の背を見ながら、詫びをするのはこちらの方だったのにとリリアンナは思う。ふと足元に何かが落ちていることに気付き、それを拾い上げる。このセントラ王国では見慣れない紋章が刺繍された真っ白なハンカチを、彼女はまじまじと見つめた。
「これは確か、トレンヴェルド王家の紋章……」
散々調べたのだから間違えるはずはない。先ほどぶつかった人物はもしかするとエドモンドと関わりがあるかもしれないと、慌てて後を追いかけた。
「すみません、落とし物をされています!」
意外と体力のあるリリアンナは、あまり息を切らすこともなく彼を発見する。ぽんと背中を叩くと、大仰にびくりと反応された。
「ああ、ハンカチ。わざわざありがとうございます、では」
「不躾で申し訳ありませんが、もしかして貴方はエドモンド……」
「えっ!!なぜ僕だと分かったんですか!?」
リリアンナは「エドモンド殿下とお知り合いですか」と尋ねようとしたのだが、どうやら知り合いどころの話ではなかったらしい。彼はまんまと嵌められた!というような表情で驚いている。そしてリリアンナは、そんなエドモンドを見てぱちぱちと瞬きを繰り返していた。
「お姉様こんなところにいた!」
「あれっ?その方はお友達?」
「ちょっとルーシー!お姉様にお友達はいないんだから、そんなこと言っちゃだめよ!」
「そうだった、ごめんなさいお姉様!」
彼女に向かって、背後から双子が飛びついてくる。非常に失礼なことを言われているが、リリアンナにとってそれは重要ではない。可愛い可愛い弟妹に抱きつかれて、思わずうっとりと頬を染めた。
と、今は呆けている場合ではない。目の前で正体がばれてあたふたしている男性――もといエドモンドに向かって、彼女は恭しく膝を折った。
「不躾な振る舞いをどうかお許しください、殿下」
「殿下!?」
「あっ、間違えました!」
慌てて口を塞ぐリリアンナに、双子はぱちくりと顔を見合わせる。そしてエドモンドは、今度は急に腹を押さえてうずくまった。
「ど、どうかされましたか!?もしかして、誰かに奇襲を……っ!」
「い、いや。ほんの少し腹が……」
「まさか刺されて……!」
「腹が空いただけ、ですから」
頓狂な台詞に一瞬空気が凍りついたが、ルシフォードとケイティベルが耐えられず盛大に噴き出してしまう。ふっくらした手が白パンに見えて、エドモンドは思わずそれを掴んだ。
「お姉様、どうしよう?」
「そ、そうね。とりあえず、エトワナ家のお屋敷へ」
リリアンナはそう言うと、二人と一緒にエドモンドの腕を引っ張るようにして馬車へと向かう。空腹が極限に達していた彼の脳は正常な判断を失っており、小さな声で「白パンの妖精だ……」と呟きながらされるがままに引き摺られていくのだった。
エトワナ領は宝石鉱山を有している為、リリアンナも宝石についてはそれなりに詳しい。素敵な意味の込もった石を選んで、それを身につけられる宝飾品に加工してプレゼントしたら喜んでもらえるのではないかと、そんな考えに胸が躍った。
二人が他の店を見ている間に少しだけ覗いてみようと、ふらふらと宝飾店へ向かう。頭の中は弟妹のことでいっぱいで注意散漫になっていた彼女は、その道すがらどんと誰かにぶつかる。
「申し訳ございません」
「いや、こちらこそ失礼いたしました」
即座に謝罪したリリアンナの眼前には、帽子を目深に被った男性。口元しか見えない為よく分からなかったが、背格好から女性ではないことは明らかだった。
「お詫びをしたいところですが、急いでいるのでこれで」
早急な口調でその場から立ち去った彼の背を見ながら、詫びをするのはこちらの方だったのにとリリアンナは思う。ふと足元に何かが落ちていることに気付き、それを拾い上げる。このセントラ王国では見慣れない紋章が刺繍された真っ白なハンカチを、彼女はまじまじと見つめた。
「これは確か、トレンヴェルド王家の紋章……」
散々調べたのだから間違えるはずはない。先ほどぶつかった人物はもしかするとエドモンドと関わりがあるかもしれないと、慌てて後を追いかけた。
「すみません、落とし物をされています!」
意外と体力のあるリリアンナは、あまり息を切らすこともなく彼を発見する。ぽんと背中を叩くと、大仰にびくりと反応された。
「ああ、ハンカチ。わざわざありがとうございます、では」
「不躾で申し訳ありませんが、もしかして貴方はエドモンド……」
「えっ!!なぜ僕だと分かったんですか!?」
リリアンナは「エドモンド殿下とお知り合いですか」と尋ねようとしたのだが、どうやら知り合いどころの話ではなかったらしい。彼はまんまと嵌められた!というような表情で驚いている。そしてリリアンナは、そんなエドモンドを見てぱちぱちと瞬きを繰り返していた。
「お姉様こんなところにいた!」
「あれっ?その方はお友達?」
「ちょっとルーシー!お姉様にお友達はいないんだから、そんなこと言っちゃだめよ!」
「そうだった、ごめんなさいお姉様!」
彼女に向かって、背後から双子が飛びついてくる。非常に失礼なことを言われているが、リリアンナにとってそれは重要ではない。可愛い可愛い弟妹に抱きつかれて、思わずうっとりと頬を染めた。
と、今は呆けている場合ではない。目の前で正体がばれてあたふたしている男性――もといエドモンドに向かって、彼女は恭しく膝を折った。
「不躾な振る舞いをどうかお許しください、殿下」
「殿下!?」
「あっ、間違えました!」
慌てて口を塞ぐリリアンナに、双子はぱちくりと顔を見合わせる。そしてエドモンドは、今度は急に腹を押さえてうずくまった。
「ど、どうかされましたか!?もしかして、誰かに奇襲を……っ!」
「い、いや。ほんの少し腹が……」
「まさか刺されて……!」
「腹が空いただけ、ですから」
頓狂な台詞に一瞬空気が凍りついたが、ルシフォードとケイティベルが耐えられず盛大に噴き出してしまう。ふっくらした手が白パンに見えて、エドモンドは思わずそれを掴んだ。
「お姉様、どうしよう?」
「そ、そうね。とりあえず、エトワナ家のお屋敷へ」
リリアンナはそう言うと、二人と一緒にエドモンドの腕を引っ張るようにして馬車へと向かう。空腹が極限に達していた彼の脳は正常な判断を失っており、小さな声で「白パンの妖精だ……」と呟きながらされるがままに引き摺られていくのだった。
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