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第四章「集う変人と犯人への手掛かり」
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調べていくうちにどうでもいいことばかりが明るみになり、肝心の犯人については目星が立たないまま。現状が濃過ぎて、時間が経つにつれ二人の中に「あれはただの夢だったのでは?」という感情が湧いてくるが、今思い出しても背筋が凍るような緊張感が体に走る。
「兄にもしょっちゅう呆れられているんです。近しい間柄の人達以外には知られないよう、普段は気を張っているのですが……」
事情を知らないエドモンドの何気ない台詞を聞いたルシフォードが、はっとしたように目を見開く。
――無理よ兄さん、私もう我慢出来ない!今すぐこの手で、あの白豚双子を殺してやる!
――悪いな、子豚ちゃんたち。恨むならこの国を恨んでくれ。
「そういえばあの時、兄さんって言ってた……」
ケイティベルはパニックに陥っていた為、あの時の記憶は曖昧だ。彼女だけでも必死に逃がそうとしていたルシフォードは、ずっと絡まっていた一本の糸がぴんと解けるような感覚を感じ、思わず立ち上がった。
「ルーシー?どうかした?」
「ベル、僕思い出したんだ!」
言葉もままならない彼の気持ちを瞬時に察したケイティベルは、すぐに視線で姉に助けを求める。そんな二人を見て、リリアンナは即座に立ち上がった。
「両殿下、大変申し訳ございません。ルシフォードとケイティベルが揃って体調を崩したようですので、本日はこれにて失礼させていただきます」
「えっ、急にですか?」
「昔からよくあることなのです」
得意の無表情と有無を言わせぬ口調で、彼女は弟妹の手を引く。二人の王子を前にしてこれほど強気な態度が取れる令嬢は、きっとリリアンナを置いて他にいないだろう。
姉に連れられ返事すら待たず来賓室を後にした双子は、緊張の面持ちで溜息を吐いている。ルシフォードの雰囲気に当てられて、ケイティベルまでが泣きそうに眉を下げた。
「大丈夫よ、ルシフォード。ゆっくりで構わないから、落ち着いて話して」
人気のない廊下の端にやって来たリリアンナは、二人の正面にしゃがみ込み視線を合わせると、落ち着かせるように静かに頷く。
「さっきエドモンド殿下が『兄さん』って呼んでるのを聞いて、僕思い出したんだ。そういえばあの時の女の子も、側にいた男の人を兄さんって呼んでたって」
二人はシーツを被っていた為、犯人の顔をはっきりと見ていない。覚えがあるのは声と性別くらいで、それも時間と共に記憶から薄れつつある。
甲高い金切り声には、明らかに悪意と憎しみが込められていたように思う。少なくとも、誰かに依頼されたからという雰囲気ではなかったのだ。
「これまで調べてきた限り、知り合いに思い当たる人物はいない。であればその兄妹は、私達とは面識のない可能性が高いわ」
「ずっと思い出せなくてごめんなさい」
「ルシフォードが謝る必要なんて何ひとつないのよ」
悲しげに俯く弟を優しく抱き締め、ゆっくりと背中を撫でてやる。小刻みに震えていた体が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「あのパーティーの参列者全員当たってみたけれど、それらしい者は見当たらなかった。けれどもう一度念の為、兄妹かそれに近しい間柄の男女に絞って調査してみるわ」
「ありがとう、お姉様」
「大切な二人の命は、私が絶対に守ってみせるから」
ルシフォードとケイティベルの話では、双子を庇ってリリアンナ自身も殺されてしまう。けれど彼女の頭には、自身の身の安全など頭の隅にも浮かんでいなかった。
これまで碌に姉らしいこともしてやれなかった、それを心から後悔している。やり直しのチャンスと言えば聞こえは悪いが、リリアンナにとっては神に感謝したいほどの幸運に他ならない。身命を賭してでも、二人の命を奪わせはしないと。
「兄にもしょっちゅう呆れられているんです。近しい間柄の人達以外には知られないよう、普段は気を張っているのですが……」
事情を知らないエドモンドの何気ない台詞を聞いたルシフォードが、はっとしたように目を見開く。
――無理よ兄さん、私もう我慢出来ない!今すぐこの手で、あの白豚双子を殺してやる!
――悪いな、子豚ちゃんたち。恨むならこの国を恨んでくれ。
「そういえばあの時、兄さんって言ってた……」
ケイティベルはパニックに陥っていた為、あの時の記憶は曖昧だ。彼女だけでも必死に逃がそうとしていたルシフォードは、ずっと絡まっていた一本の糸がぴんと解けるような感覚を感じ、思わず立ち上がった。
「ルーシー?どうかした?」
「ベル、僕思い出したんだ!」
言葉もままならない彼の気持ちを瞬時に察したケイティベルは、すぐに視線で姉に助けを求める。そんな二人を見て、リリアンナは即座に立ち上がった。
「両殿下、大変申し訳ございません。ルシフォードとケイティベルが揃って体調を崩したようですので、本日はこれにて失礼させていただきます」
「えっ、急にですか?」
「昔からよくあることなのです」
得意の無表情と有無を言わせぬ口調で、彼女は弟妹の手を引く。二人の王子を前にしてこれほど強気な態度が取れる令嬢は、きっとリリアンナを置いて他にいないだろう。
姉に連れられ返事すら待たず来賓室を後にした双子は、緊張の面持ちで溜息を吐いている。ルシフォードの雰囲気に当てられて、ケイティベルまでが泣きそうに眉を下げた。
「大丈夫よ、ルシフォード。ゆっくりで構わないから、落ち着いて話して」
人気のない廊下の端にやって来たリリアンナは、二人の正面にしゃがみ込み視線を合わせると、落ち着かせるように静かに頷く。
「さっきエドモンド殿下が『兄さん』って呼んでるのを聞いて、僕思い出したんだ。そういえばあの時の女の子も、側にいた男の人を兄さんって呼んでたって」
二人はシーツを被っていた為、犯人の顔をはっきりと見ていない。覚えがあるのは声と性別くらいで、それも時間と共に記憶から薄れつつある。
甲高い金切り声には、明らかに悪意と憎しみが込められていたように思う。少なくとも、誰かに依頼されたからという雰囲気ではなかったのだ。
「これまで調べてきた限り、知り合いに思い当たる人物はいない。であればその兄妹は、私達とは面識のない可能性が高いわ」
「ずっと思い出せなくてごめんなさい」
「ルシフォードが謝る必要なんて何ひとつないのよ」
悲しげに俯く弟を優しく抱き締め、ゆっくりと背中を撫でてやる。小刻みに震えていた体が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「あのパーティーの参列者全員当たってみたけれど、それらしい者は見当たらなかった。けれどもう一度念の為、兄妹かそれに近しい間柄の男女に絞って調査してみるわ」
「ありがとう、お姉様」
「大切な二人の命は、私が絶対に守ってみせるから」
ルシフォードとケイティベルの話では、双子を庇ってリリアンナ自身も殺されてしまう。けれど彼女の頭には、自身の身の安全など頭の隅にも浮かんでいなかった。
これまで碌に姉らしいこともしてやれなかった、それを心から後悔している。やり直しのチャンスと言えば聞こえは悪いが、リリアンナにとっては神に感謝したいほどの幸運に他ならない。身命を賭してでも、二人の命を奪わせはしないと。
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