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第六章「みんな、幸せに」
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誕生日の決戦も近付いたある日、リリアンナは婚約者レオニルに申し入れ席を設けてもらった。命のやり取りももちろん重要なのだが、そちらを気にかけるあまりにケイティベルの婚約者問題をすっかり後回しにしてしまっていた。
やはり外国には嫁ぎたくないという妹の為、何が最善なのかを延々と考えたリリアンナ。もちろん、婚約者を交換することはやぶさかではないが、ケイティベルの気持ちを無視するやり方はよろしくない。それにエドモンドは、すぐに腹をすかせる食いしん坊という点を除けばなかなかに素敵な男性ではないかと、リリアンナは感じている。
レオニルにしても、ケイティベルへの愛はこちらが一歩引いてしまうほどに重く、もしも結婚となればそれはもう大切にしてくれるだろうとも思う。
結局決めるのはケイティベルだが、誕生日パーティーでエドモンドとの婚約を発表してしまえば、覆すことは非常に困難を極める。両親は聞く耳を持たない為、直談判するより他に手段ない。
というわけで、とにかく話し合いの場を設けようと考えたのだった。もちろん、ルシフォードとケイティベルも一緒に。
「ききき、今日も一段とあああ、愛らしいな……」
顔を合わせるなり、レオニルはがばっと鼻を抑える。彼の気持ちが分かるのはただ一人リリアンナで、彼女も出掛け前にまったく同じ行動をとっていた。
エトワナ家の三人がお揃いの色に身を包むのは、すでに見慣れた光景となりつつある。ケイティベルは薄水色のふわふわとした可愛らしいドレス、ルシフォードも同じ色を着調としたコートとブリーチズパンツ、そしてリリアンナもしっかりと薄水色のリボンで髪を結い上げていた。
「さすが殿下、私の弟妹がいかに愛らしくただそこにいるだけで素晴らしい存在であるか、すぐにご理解いただけて恐縮でございます」
「ああ、リリアンナに礼を言おう。君が連れて来てくれなければ、僕は生涯この貴重な時間を過ごすことが出来なかっただろう」
ずっと不仲とされてきた二人だが、愛でる対象が一致していると気が付いてからは、互いにこれでもかと心を許している。といっても、そこに愛が生まれることは永遠になさそうだが。同志という表現が一番しっくりとくるような、実に奇妙な関係へと変化した。
レオニルはケイティベルへの気持ちを、一応は隠そうと努力している。いくらリリアンナが認めたからとはいえ、婚約者の妹に邪な感情を抱くなどあってはならないことだと。
「お姉様は、レオニル殿下よりもエドモンド殿下の方が似合っていると思います」
王宮の謁見室にて設けられたこの席にはレオニルとエトワナ弟姉妹だけではなく、しっかりとエドモンドの姿もある。彼は自分がこの場にふさわしくないのではとはらはらしながらも、リリアンナに会えたことを内心では喜んでいた。
話をどう切り出そうかリリアンナは迷っていたが、それを真っ二つにぶった斬ったのはケイティベルだ。
「ねぇ、ルーシー。貴方もそう思うでしょう?」
「えっ、ぼ、僕?僕は……どうだろう」
ずけずけと遠慮なく思ったことを口にするケイティベルとは対照的に、ルシフォードはおどおどと戸惑っている。国は違えど王子が二人、不敬に当たるような発言をすれば怒られてしまう、と。
「ケイティベル。これは私の話ではなく、貴女自身のことなのよ?外国へ嫁ぎたくないのならば、エドモンド殿下にそれをお伝えしなければ」
「分かってるわ、お姉様。でも私、この前二人が話しているのを見て凄くお似合いだと思ったの!お姉様はレオニル殿下の前ではいつも怖い顔ばかりしているのに、エドモンド殿下にはそうじゃなかったから」
二人の醸し出す空気感は素敵だったと、ケイティベルは両手を組みながら瞳をきらきらと輝かせる。世界一美しく優しい大好きな姉には、うんと幸せになってほしい。今の彼女の頭の中には、自身の嫁ぎ先よりもリリアンナが最優先だった。
誕生日の決戦も近付いたある日、リリアンナは婚約者レオニルに申し入れ席を設けてもらった。命のやり取りももちろん重要なのだが、そちらを気にかけるあまりにケイティベルの婚約者問題をすっかり後回しにしてしまっていた。
やはり外国には嫁ぎたくないという妹の為、何が最善なのかを延々と考えたリリアンナ。もちろん、婚約者を交換することはやぶさかではないが、ケイティベルの気持ちを無視するやり方はよろしくない。それにエドモンドは、すぐに腹をすかせる食いしん坊という点を除けばなかなかに素敵な男性ではないかと、リリアンナは感じている。
レオニルにしても、ケイティベルへの愛はこちらが一歩引いてしまうほどに重く、もしも結婚となればそれはもう大切にしてくれるだろうとも思う。
結局決めるのはケイティベルだが、誕生日パーティーでエドモンドとの婚約を発表してしまえば、覆すことは非常に困難を極める。両親は聞く耳を持たない為、直談判するより他に手段ない。
というわけで、とにかく話し合いの場を設けようと考えたのだった。もちろん、ルシフォードとケイティベルも一緒に。
「ききき、今日も一段とあああ、愛らしいな……」
顔を合わせるなり、レオニルはがばっと鼻を抑える。彼の気持ちが分かるのはただ一人リリアンナで、彼女も出掛け前にまったく同じ行動をとっていた。
エトワナ家の三人がお揃いの色に身を包むのは、すでに見慣れた光景となりつつある。ケイティベルは薄水色のふわふわとした可愛らしいドレス、ルシフォードも同じ色を着調としたコートとブリーチズパンツ、そしてリリアンナもしっかりと薄水色のリボンで髪を結い上げていた。
「さすが殿下、私の弟妹がいかに愛らしくただそこにいるだけで素晴らしい存在であるか、すぐにご理解いただけて恐縮でございます」
「ああ、リリアンナに礼を言おう。君が連れて来てくれなければ、僕は生涯この貴重な時間を過ごすことが出来なかっただろう」
ずっと不仲とされてきた二人だが、愛でる対象が一致していると気が付いてからは、互いにこれでもかと心を許している。といっても、そこに愛が生まれることは永遠になさそうだが。同志という表現が一番しっくりとくるような、実に奇妙な関係へと変化した。
レオニルはケイティベルへの気持ちを、一応は隠そうと努力している。いくらリリアンナが認めたからとはいえ、婚約者の妹に邪な感情を抱くなどあってはならないことだと。
「お姉様は、レオニル殿下よりもエドモンド殿下の方が似合っていると思います」
王宮の謁見室にて設けられたこの席にはレオニルとエトワナ弟姉妹だけではなく、しっかりとエドモンドの姿もある。彼は自分がこの場にふさわしくないのではとはらはらしながらも、リリアンナに会えたことを内心では喜んでいた。
話をどう切り出そうかリリアンナは迷っていたが、それを真っ二つにぶった斬ったのはケイティベルだ。
「ねぇ、ルーシー。貴方もそう思うでしょう?」
「えっ、ぼ、僕?僕は……どうだろう」
ずけずけと遠慮なく思ったことを口にするケイティベルとは対照的に、ルシフォードはおどおどと戸惑っている。国は違えど王子が二人、不敬に当たるような発言をすれば怒られてしまう、と。
「ケイティベル。これは私の話ではなく、貴女自身のことなのよ?外国へ嫁ぎたくないのならば、エドモンド殿下にそれをお伝えしなければ」
「分かってるわ、お姉様。でも私、この前二人が話しているのを見て凄くお似合いだと思ったの!お姉様はレオニル殿下の前ではいつも怖い顔ばかりしているのに、エドモンド殿下にはそうじゃなかったから」
二人の醸し出す空気感は素敵だったと、ケイティベルは両手を組みながら瞳をきらきらと輝かせる。世界一美しく優しい大好きな姉には、うんと幸せになってほしい。今の彼女の頭の中には、自身の嫁ぎ先よりもリリアンナが最優先だった。
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