59 / 75
第七章「いざ、双子同士の対決へ!」
1
しおりを挟む
♢♢♢
「準備は良い?」
「もちろんよ!」
天高く輝く満月に見守られながら、エトワナ家の愛されぽっちゃり双子ルシフォードとケイティベルは、頭から勢いよくシーツを被った。
全員の反対意見を押し切り、二人は行動に出る。あの夜、自分達の代わりに命を落とした姉リリアンナを思い、絶対に同じ運命は辿らないと心に誓う。
けれどそれは、他の誰かであろうと変わらない。レオニルやエドモンドが傷付くところを見るのも嫌だ。記憶が残っているというアドバンテージを利用して、きっと全員無事に終わってみせると。
以前の二人ならば、こんな風に勇気を出すことは出来なかった。姉以外の誰もが無条件に優しく、暖かな温室の中擦り傷のひとつさえ重病のように心配してもらえた。リリアンナは無表情で恐ろしく、関わり合いにはなりたくない。だっていつか、自分達を傷付けるかもしれないから。
その誤解は、もうとっくの昔に土の中に埋めた。目に見えるものだけが真実ではないと学び、何かを守る為には強くならねばならないと決心した。
「今度こそシーツでぐるぐる巻きにならないよう、絶対に勝つわよルーシー!」
「うん、頑張るよベル!僕の側から離れちゃダメだからね!」
怖くないと言えば嘘になるが、今夜は十歳の誕生日。本来ならば冬の到来を告げる木枯らしに身を震わせる時期だが、二人の邪魔をするまいと風はぴたりと止んでいる。空から降り注ぐ山吹色の光のおかげで、転ばずに済む。ぱりっと糊のきいたシーツは、体に纏わりつきにくい。それからリリアンナが焚いてくれたお香のおかげで、部屋まで迷わず進んでいける。まるで隣で手を握ってくれているかのようで、二人は心強さを感じていた。
「平気ですか?リリアンナ嬢」
「はい、エドモンド殿下」
主役が消えたと騒がれないよう、リリアンナとエドモンドはホールの中心で注目を集めることに徹していた。本当は弟妹の側を離れたくなどないが、あの二人の中でリリアンナが刺された記憶がトラウマとなっている。
――あの子達が無事なら、私の命なんてどうなっても構わないのに。
それを望まれていないと分かっていても、無意識のうちに視線が扉の方へ向いてしまう。もしも読みが外れていたら、もしも予期せぬ事態が起こってしまったらと、否定的な考えばかりが浮かびなかなか消えてくれない。
彼女の華奢な体は小刻みに震え、もとより白い肌から一層血の気が失せている。その様子に気が付いているのは、隣に立つエドモンドだけ。
婚約者レオニルの姿が見えないことに数人は疑問を抱いているが、二人の不仲は周知の事実。それよりも、鉄仮面リリアンナの様子がすっかり変わってしまったのはエドモンドとの出会いがきっかけではないかと、無粋な憶測で貴族達は色めき立っていた。
「リリアンナ嬢。僕と踊っていただけますか?」
エドモンドは明るくにこりと微笑みながら、彼女に向かって手を伸ばす。ファーストダンスはすでにレオニルと済ませていたが、あくまで形式的なもの。家族以外の他の男性と踊った経験もなく、リリアンナは僅かに動揺する。が、エドモンドの様子を見てそろそろと彼の手を取った。
「殿下、謹んでお受けいたします」
まるで大切な宝物でも扱うかのように彼女を優しくエスコートしながら、少しでも早く震えが治ればいいと心から願った。宮廷楽師達は、他国の王子がダンスを踊るのだからと一層演奏に力を入れ、その音色はエトワナの屋敷中に響き渡る。それこそ、他の部屋で多少の物音がしても誰も気付かないほどに。
「準備は良い?」
「もちろんよ!」
天高く輝く満月に見守られながら、エトワナ家の愛されぽっちゃり双子ルシフォードとケイティベルは、頭から勢いよくシーツを被った。
全員の反対意見を押し切り、二人は行動に出る。あの夜、自分達の代わりに命を落とした姉リリアンナを思い、絶対に同じ運命は辿らないと心に誓う。
けれどそれは、他の誰かであろうと変わらない。レオニルやエドモンドが傷付くところを見るのも嫌だ。記憶が残っているというアドバンテージを利用して、きっと全員無事に終わってみせると。
以前の二人ならば、こんな風に勇気を出すことは出来なかった。姉以外の誰もが無条件に優しく、暖かな温室の中擦り傷のひとつさえ重病のように心配してもらえた。リリアンナは無表情で恐ろしく、関わり合いにはなりたくない。だっていつか、自分達を傷付けるかもしれないから。
その誤解は、もうとっくの昔に土の中に埋めた。目に見えるものだけが真実ではないと学び、何かを守る為には強くならねばならないと決心した。
「今度こそシーツでぐるぐる巻きにならないよう、絶対に勝つわよルーシー!」
「うん、頑張るよベル!僕の側から離れちゃダメだからね!」
怖くないと言えば嘘になるが、今夜は十歳の誕生日。本来ならば冬の到来を告げる木枯らしに身を震わせる時期だが、二人の邪魔をするまいと風はぴたりと止んでいる。空から降り注ぐ山吹色の光のおかげで、転ばずに済む。ぱりっと糊のきいたシーツは、体に纏わりつきにくい。それからリリアンナが焚いてくれたお香のおかげで、部屋まで迷わず進んでいける。まるで隣で手を握ってくれているかのようで、二人は心強さを感じていた。
「平気ですか?リリアンナ嬢」
「はい、エドモンド殿下」
主役が消えたと騒がれないよう、リリアンナとエドモンドはホールの中心で注目を集めることに徹していた。本当は弟妹の側を離れたくなどないが、あの二人の中でリリアンナが刺された記憶がトラウマとなっている。
――あの子達が無事なら、私の命なんてどうなっても構わないのに。
それを望まれていないと分かっていても、無意識のうちに視線が扉の方へ向いてしまう。もしも読みが外れていたら、もしも予期せぬ事態が起こってしまったらと、否定的な考えばかりが浮かびなかなか消えてくれない。
彼女の華奢な体は小刻みに震え、もとより白い肌から一層血の気が失せている。その様子に気が付いているのは、隣に立つエドモンドだけ。
婚約者レオニルの姿が見えないことに数人は疑問を抱いているが、二人の不仲は周知の事実。それよりも、鉄仮面リリアンナの様子がすっかり変わってしまったのはエドモンドとの出会いがきっかけではないかと、無粋な憶測で貴族達は色めき立っていた。
「リリアンナ嬢。僕と踊っていただけますか?」
エドモンドは明るくにこりと微笑みながら、彼女に向かって手を伸ばす。ファーストダンスはすでにレオニルと済ませていたが、あくまで形式的なもの。家族以外の他の男性と踊った経験もなく、リリアンナは僅かに動揺する。が、エドモンドの様子を見てそろそろと彼の手を取った。
「殿下、謹んでお受けいたします」
まるで大切な宝物でも扱うかのように彼女を優しくエスコートしながら、少しでも早く震えが治ればいいと心から願った。宮廷楽師達は、他国の王子がダンスを踊るのだからと一層演奏に力を入れ、その音色はエトワナの屋敷中に響き渡る。それこそ、他の部屋で多少の物音がしても誰も気付かないほどに。
3
あなたにおすすめの小説
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~
志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。
自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。
しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。
身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。
しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた!
第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。
側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。
厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。
後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる