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第七章「いざ、双子同士の対決へ!」
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♢♢♢
結局、ケイティベルの婚約発表は延期となった。なにしろ当事者の一人であるレオニルが彼女の笑顔に心臓を撃ち抜かれ、白目を向いて倒れてしまったのだからどうしようもない。
代わりに後日、リリアンナの悪役っぷりが誤解だと知った貴族紙専門の新聞記者が、姉妹それぞれの婚約を大々的に取り上げた。
彼はもともとエトワナ家に雇われた記者で、誕生日パーティーの様子を適当に載せて終わる予定だったが、リリアンナが弟妹に向ける聖母のような微笑に心を奪われ、まんまと彼女の言う通りに記事を書いたのだ。
正確には、彼女というよりも双子の仕業。婚約者の入れ替わりによって姉だけに避難が集中しないよう、大衆が好みそうな嘘を吐いて上手く目を誤魔化した。
『レオニルとケイティベルは、運命の恋に落ちた』
二人が仲睦まじく乗馬を楽しんでいる風俗画と共に、それはそれは情熱的な文章となっている。加えて、エドモンドとリリアンナが双子の誕生日パーティーでダンスを踊る姿が実にお似合いだったという噂も広まり、結果的にエトワナ姉妹への抽象は想像していたよりもずっと少なくて済んだ。
「本当に、本当に後悔はないのか?」
エトワナ家にて。例の新聞が広げられたテーブルを挟んで、ある会話が繰り広げられていた。
ケイティベルに情けない姿を晒したレオニルは、見ている方が心配になるほどに落ち込み、これには普段穏やかなケイティベルも腰に手を当てながら彼を叱責した。
「ですからあの記事は、私が頼んで書いてもらったんです!何回もそう説明しているのに、ちっとも分かってくださらないんだから!」
二人の婚約は公となったが、まだ正式なものではない。完璧王子は見る影もなく、しゅんと項垂れたまま情けない台詞ばかりを口にしていた。
「君は本当に素晴らしい令嬢だ。十一も歳の離れた、しかも肝心な場面で白目を向いて倒れるような不甲斐ない男と結婚など……」
「ああ、もう!決まったことをうだうだと!」
仮にも王子である彼に対して、ケイティベルはどこまでも強気。ルシフォードはおろおろしながらフォローしようと試みるが、レオニルの前髪はますますしょぼくれていく。
その様子を見かねたリリアンナが、ケイティベルに耳打ちをする。ちなみに彼女の婚約者エドモンドは、すでにトレンヴェルドヘ帰国していた。もちろん、痣持ち双子のオリバーとオリビアを連れて。
あれだけ大勢の人間がいて関係者以外の誰も騒ぎに気付かなかったのは、運が良かったとしか言いようがない。リリアンナとエドモンドが、ホールにてわざと注目を浴びるような振る舞いをして周囲の興味を引きつけていたとはいえ、オリバー達の痣を見られたら穏便には済まなかっただろうから。
結果としてエトワナ三姉弟のとった様々な行動は相乗効果を生み出し、すべてがプラスへと働いたというわけだ。ただ一人、良い歳をして情けなく背中を丸めるレオニルを除いては。
「ねぇ、ケイティベル。殿下は貴女を守ってくれたのでしょう?少しは優しい物言いをしないと、不憫だわ」
「だって、訳の分からないことばかりおっしゃるんだもの!」
「きっと不安なのよ。私には、殿下のお気持ちが良く分かるわ」
相手を思うあまり空回りしてしまうのは、リリアンナにも覚えがある。自分のせいで弟妹の評判に傷が付いてはいけないと、ずっと遠ざけていた。
「いきなりすべてを受け入れる必要はないの。少しずつ、まずは殿下の良いところを見てあげて?」
「殿下の良いところ……」
姉の言葉に、ケイティベルは首を傾げる。本当は怖い人ではないと知ってからは、むしろ嫌な点を上げる方が難しい。この婚約に関しても、最初は外国に嫁ぎたくないからという理由が決め手のほとんどを占めていたが、今となってはレオニルで良かったのではと思うくらいには、ケイティベルは彼に心を許していた。
結局、ケイティベルの婚約発表は延期となった。なにしろ当事者の一人であるレオニルが彼女の笑顔に心臓を撃ち抜かれ、白目を向いて倒れてしまったのだからどうしようもない。
代わりに後日、リリアンナの悪役っぷりが誤解だと知った貴族紙専門の新聞記者が、姉妹それぞれの婚約を大々的に取り上げた。
彼はもともとエトワナ家に雇われた記者で、誕生日パーティーの様子を適当に載せて終わる予定だったが、リリアンナが弟妹に向ける聖母のような微笑に心を奪われ、まんまと彼女の言う通りに記事を書いたのだ。
正確には、彼女というよりも双子の仕業。婚約者の入れ替わりによって姉だけに避難が集中しないよう、大衆が好みそうな嘘を吐いて上手く目を誤魔化した。
『レオニルとケイティベルは、運命の恋に落ちた』
二人が仲睦まじく乗馬を楽しんでいる風俗画と共に、それはそれは情熱的な文章となっている。加えて、エドモンドとリリアンナが双子の誕生日パーティーでダンスを踊る姿が実にお似合いだったという噂も広まり、結果的にエトワナ姉妹への抽象は想像していたよりもずっと少なくて済んだ。
「本当に、本当に後悔はないのか?」
エトワナ家にて。例の新聞が広げられたテーブルを挟んで、ある会話が繰り広げられていた。
ケイティベルに情けない姿を晒したレオニルは、見ている方が心配になるほどに落ち込み、これには普段穏やかなケイティベルも腰に手を当てながら彼を叱責した。
「ですからあの記事は、私が頼んで書いてもらったんです!何回もそう説明しているのに、ちっとも分かってくださらないんだから!」
二人の婚約は公となったが、まだ正式なものではない。完璧王子は見る影もなく、しゅんと項垂れたまま情けない台詞ばかりを口にしていた。
「君は本当に素晴らしい令嬢だ。十一も歳の離れた、しかも肝心な場面で白目を向いて倒れるような不甲斐ない男と結婚など……」
「ああ、もう!決まったことをうだうだと!」
仮にも王子である彼に対して、ケイティベルはどこまでも強気。ルシフォードはおろおろしながらフォローしようと試みるが、レオニルの前髪はますますしょぼくれていく。
その様子を見かねたリリアンナが、ケイティベルに耳打ちをする。ちなみに彼女の婚約者エドモンドは、すでにトレンヴェルドヘ帰国していた。もちろん、痣持ち双子のオリバーとオリビアを連れて。
あれだけ大勢の人間がいて関係者以外の誰も騒ぎに気付かなかったのは、運が良かったとしか言いようがない。リリアンナとエドモンドが、ホールにてわざと注目を浴びるような振る舞いをして周囲の興味を引きつけていたとはいえ、オリバー達の痣を見られたら穏便には済まなかっただろうから。
結果としてエトワナ三姉弟のとった様々な行動は相乗効果を生み出し、すべてがプラスへと働いたというわけだ。ただ一人、良い歳をして情けなく背中を丸めるレオニルを除いては。
「ねぇ、ケイティベル。殿下は貴女を守ってくれたのでしょう?少しは優しい物言いをしないと、不憫だわ」
「だって、訳の分からないことばかりおっしゃるんだもの!」
「きっと不安なのよ。私には、殿下のお気持ちが良く分かるわ」
相手を思うあまり空回りしてしまうのは、リリアンナにも覚えがある。自分のせいで弟妹の評判に傷が付いてはいけないと、ずっと遠ざけていた。
「いきなりすべてを受け入れる必要はないの。少しずつ、まずは殿下の良いところを見てあげて?」
「殿下の良いところ……」
姉の言葉に、ケイティベルは首を傾げる。本当は怖い人ではないと知ってからは、むしろ嫌な点を上げる方が難しい。この婚約に関しても、最初は外国に嫁ぎたくないからという理由が決め手のほとんどを占めていたが、今となってはレオニルで良かったのではと思うくらいには、ケイティベルは彼に心を許していた。
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