74 / 75
最終章「ぽっちゃり双子は暗躍する!」
6
しおりを挟む
出会った頃は、リリアンナと話すたびに緊張して腹の音を轟かせていたエドモンドの食欲も、彼女との関係性が深まるにつれだんだんと落ち着いていった。そしてその代わりに、まるで主人からしばらく放置された懐こい大型犬のように、瞳をうるうると潤ませ甘えるという技を会得したのだ。
これには鉄面皮のリリアンナも肩なしで、とにかく愛でたい衝動に駆られて仕方ない。弟妹や我が子も当然可愛らしいが、まさか自分より体の大きな男性に対してこんな感情を抱くなど、彼女自身も想像していなかった。
視線だけで辺りを見回し誰もいないことをしっかりと確認すると、リリアンナはその細腕をエドモンドに向かってめいいっぱい広げる。
「いらっしゃい、可愛い私の旦那様」
オリバーに妬いているのを隠そうとして、まったく隠れていない。それが愛らしく、どうしようもなく甘やかしたくなる。本人に自覚がないのが、また殊更に。
この六年の間に積み重ねてきた信頼関係は、この先何があろうと揺らぐことはない。決して我の強くない控えめな二人だが、今の幸せだけは絶対に手放さないと固く誓っていた。
ブラックダイヤのような瞳が途端に光り輝き、彼はまっすぐリリアンナの胸に飛び込んでいく。とはいえ彼の方がずっと長躯でがたいも良く、自然と抱き締める格好になってしまうのだが。それでも、全てを受け入れてくれるリリアンナの広い懐と深い愛情に、エドモンドは得も言われぬ多幸感を胸いっぱいに吸い込んだ。
「愛してる、リリアンナ」
「ええ、私も」
妹の結婚式の場でなんて破廉恥な……、と思わないわけではないが、今は彼の好きにさせてやろうと、リリアンナはそっと目を閉じる。何年経っても落ち着かないその鼓動が可愛らしく、自然と頬が緩んだ。
「リリアンナ、相談なんだが」
「どうしたの?」
「体力を温存とは、具体的に何割ほど回復させることを意味するのだろうか?」
愛する夫からの突拍子もない問い掛けに、リリアンナは細い首をことりと横に傾げる。エドモンドは甘えた声色で、すりすりと彼女の頭に頬を寄せた。
昔から変わらない、甘く華やかでどこかほろ苦い肌の香りが、好きで好きで堪らない。これからも永遠に、自分だけがこの距離を許される唯一の男でありたい。その為ならばどんな努力も厭わないと、エドモンドは六年前からそう心に決めている。
「つまり、加減すれば多少の無理は構わないと……」
「あ……っ、もう!いやらしいったら!」
質問の意図をようやく理解したリリアンナは、ぱっと彼から体を離すと頬をぱんぱんに膨らませる。それはまるで、妹ケイティベルがヘソを曲げる時とそっくりだった。
「実家でそのようなことはいたしませんわ!」
「ああ、すまなかった!謝るから、もう少しだけ」
「嫌です、離れてください!」
真白な頬を赤く染め、ぷいっとそっぽを向いてみせる。こうして頑なに拒絶したところで結局、夜が更ければ甘えたのエドモンドに絆されてしまうのだろうと、彼女は先の未来を透視しているような気分になり、それは深い溜息を吐いたのだった。
これには鉄面皮のリリアンナも肩なしで、とにかく愛でたい衝動に駆られて仕方ない。弟妹や我が子も当然可愛らしいが、まさか自分より体の大きな男性に対してこんな感情を抱くなど、彼女自身も想像していなかった。
視線だけで辺りを見回し誰もいないことをしっかりと確認すると、リリアンナはその細腕をエドモンドに向かってめいいっぱい広げる。
「いらっしゃい、可愛い私の旦那様」
オリバーに妬いているのを隠そうとして、まったく隠れていない。それが愛らしく、どうしようもなく甘やかしたくなる。本人に自覚がないのが、また殊更に。
この六年の間に積み重ねてきた信頼関係は、この先何があろうと揺らぐことはない。決して我の強くない控えめな二人だが、今の幸せだけは絶対に手放さないと固く誓っていた。
ブラックダイヤのような瞳が途端に光り輝き、彼はまっすぐリリアンナの胸に飛び込んでいく。とはいえ彼の方がずっと長躯でがたいも良く、自然と抱き締める格好になってしまうのだが。それでも、全てを受け入れてくれるリリアンナの広い懐と深い愛情に、エドモンドは得も言われぬ多幸感を胸いっぱいに吸い込んだ。
「愛してる、リリアンナ」
「ええ、私も」
妹の結婚式の場でなんて破廉恥な……、と思わないわけではないが、今は彼の好きにさせてやろうと、リリアンナはそっと目を閉じる。何年経っても落ち着かないその鼓動が可愛らしく、自然と頬が緩んだ。
「リリアンナ、相談なんだが」
「どうしたの?」
「体力を温存とは、具体的に何割ほど回復させることを意味するのだろうか?」
愛する夫からの突拍子もない問い掛けに、リリアンナは細い首をことりと横に傾げる。エドモンドは甘えた声色で、すりすりと彼女の頭に頬を寄せた。
昔から変わらない、甘く華やかでどこかほろ苦い肌の香りが、好きで好きで堪らない。これからも永遠に、自分だけがこの距離を許される唯一の男でありたい。その為ならばどんな努力も厭わないと、エドモンドは六年前からそう心に決めている。
「つまり、加減すれば多少の無理は構わないと……」
「あ……っ、もう!いやらしいったら!」
質問の意図をようやく理解したリリアンナは、ぱっと彼から体を離すと頬をぱんぱんに膨らませる。それはまるで、妹ケイティベルがヘソを曲げる時とそっくりだった。
「実家でそのようなことはいたしませんわ!」
「ああ、すまなかった!謝るから、もう少しだけ」
「嫌です、離れてください!」
真白な頬を赤く染め、ぷいっとそっぽを向いてみせる。こうして頑なに拒絶したところで結局、夜が更ければ甘えたのエドモンドに絆されてしまうのだろうと、彼女は先の未来を透視しているような気分になり、それは深い溜息を吐いたのだった。
23
あなたにおすすめの小説
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる