ワガママ姫とわたし!

清澄 セイ

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第一章「名前とは全然違うんだ」

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「今日はこれにしよう」

わたしは本棚から、一冊の本を抜き取る。もう数え切れないくらいにページをめくった、背表紙も取れかけたボロボロの本。

お母さんが書いた、魔法の国の冒険の物語。

机に座って、デスクライトをパチッとつける。

最初の一ページめをめくるこの瞬間が、わたしは大好きだった。

いつもどんな時でも、本はわたしを別の世界に連れていってくれる。主人公になりきれば、どんな難しいセリフも言えるし、強い敵も仲間と一緒に倒せる。

いつかわたしも、こんな風に誰かの心に残るような物語を描きたい。お母さんみたいな人になるのが、将来の夢だ。

この本「妖精つかいのルミエール姫」は、タイトルにもある通りルミエールというお姫様が主人公のお話だ。ルミエールは、フランス語で「光」とか「明かり」を表す意味の言葉だって、お父さんが教えてくれた。

わたしのことを考えながら作ってくれたんだと知って、この本がもっと好きになったのを覚えてる。

ルミエールはいつもかわいいドレスに身を包んだ、ハチミツ色の髪にハチミツ色の瞳のお姫様。誰にでも優しくて、妖精と話ができる特別な女の子だ。

誰からも愛され幸せに暮らしていたルミエールだけど、ある日そんな彼女を妬んだみにくい魔女がルミエールに呪いをかけてしまって、話すことができなくなってしまう。

ルミエールを助けたいといろんな国の王子様がやってきたんだけど、ルミエールはそれを断って自分の力で魔女を倒すことを決める。妖精の助けを借りながら、最後にはみごと魔女を倒してキレイな声を取り戻す。

そして女王になったルミエールは、王子様じゃなくてキレイな花を咲かせるのが得意な庭師と結婚して、末長く幸せに暮らすんだ。

王子様がさっそうと助けに来てくれるような話ももちろん好きだけど、自分の力で運命を変えようとするルミエールを見ていると、わたしも頑張らなきゃなって勇気が湧いてくる。

優しいタッチで描かれたルミエールの笑顔は、春の日に咲いた菜の花みたいに明るくて可愛くて、ずっと見てても飽きない。

小さな子にも読みやすいように書いてあって、絵本ってすごいなって思う。分かりやすく書くことって、難しい言葉を使うのと同じくらい大変なことなんじゃないかなって、わたしは思うから。

「ルミエールはすごいなぁ…」

ルミエールは、自分に呪いをかけた悪い魔女のことを許して、手を差し伸べる。それはいいことなのかよくないことなのか、何回考えても答えは出ない。

嫌なことをされても絶対許さなきゃいけないなんて思わないけど、わたしはルミエールみたいな人になりたいって思う。

「いつかわたしも、こんな風に…」

まだまだ、理想のわたしには遠いかもしれない。だけど、諦めたくない。天国にいるお母さんが、安心して笑えるように。わたしのために一生懸命なお父さんが、よかったねって言えるように。

「見ててね、ルミエール」

ついうとうとして、机に頬っぺたをくっつける。本の中で嬉しそうに笑ってるルミエールを、人差し指でそっと撫でた。
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