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第四章「あの子にそっくり」
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「この世界には、森の中に妖精の神殿があるはずです。まずはそこに行きましょう」
「行ったって見えないし声も聞こえないわ」
「それでも、行ってみるしかありません」
わたしがそう言うと、マーサさんが不安そうな声を上げた。
「今は魔女のせいで、森の中は魔獣だらけです」
「魔獣だらけ……」
言葉を聞くだけで、背中がゾクッとする。
「わたくしは行くわ。お母様を救う為に」
「わ、わたしも行きます!」
「あなた震えてるじゃない」
「そっ、そんなことないです!」
唇をギュッと結んで、胸の前で拳を握る。そんなわたしを見たルミエール姫は、なぜだか笑う。
「怖がりのくせに、お人好しなんだから」
「だって魔獣なんて、見たことないです!」
「はいはい、分かってるわよ」
本が友達だったわたしは、運動が苦手だ。戦うなんて無理だろうけど、せめて足手まといにならないようにしなきゃ。
「だけど、二人では無理です。だれか仲間を集めないと」
「危険だと分かってわたくしについて来てくれる人なんていないわ」
「でしたら、わたしの息子を連れていってください」
わたし達に向かって、マーサさんが柔らかく笑った。
コンコン
「お呼びですか、ルミエール姫」
「え……っ、有栖君!?」
しばらくしてやってきたマーサさんの息子さんを見たわたしは、ビックリして大声を上げた。
格好は違うけど、顔が有栖君にそっくりだったからだ。わたしと同じクラスの、幼なじみの有栖旭君に。
「どうして有栖君がここに?もしかしてわたしと同じように絵本の世界に来ちゃったの!?」
思わず駆け寄るわたしに、有栖君は思いきり怪訝そうな表情を向ける。
「ルミエール姫。突然呼びつけておいて、なにを訳の分からないことを言ってるんです?」
「え、だって……」
「ルミエールはわたくしよ。その子はメイという名なの」
わたしの後ろから、ルミエール姫が顔を出す。有栖君は目をまん丸にして、何度も何度も瞬きを繰り返した。
「ウソだろ?姫が二人!?」
「だから、ルミエールはわたくしでこっちはメイだと言っているじゃない」
彼女はイラッとしたように、唇をグニャッと曲げた。
「行ったって見えないし声も聞こえないわ」
「それでも、行ってみるしかありません」
わたしがそう言うと、マーサさんが不安そうな声を上げた。
「今は魔女のせいで、森の中は魔獣だらけです」
「魔獣だらけ……」
言葉を聞くだけで、背中がゾクッとする。
「わたくしは行くわ。お母様を救う為に」
「わ、わたしも行きます!」
「あなた震えてるじゃない」
「そっ、そんなことないです!」
唇をギュッと結んで、胸の前で拳を握る。そんなわたしを見たルミエール姫は、なぜだか笑う。
「怖がりのくせに、お人好しなんだから」
「だって魔獣なんて、見たことないです!」
「はいはい、分かってるわよ」
本が友達だったわたしは、運動が苦手だ。戦うなんて無理だろうけど、せめて足手まといにならないようにしなきゃ。
「だけど、二人では無理です。だれか仲間を集めないと」
「危険だと分かってわたくしについて来てくれる人なんていないわ」
「でしたら、わたしの息子を連れていってください」
わたし達に向かって、マーサさんが柔らかく笑った。
コンコン
「お呼びですか、ルミエール姫」
「え……っ、有栖君!?」
しばらくしてやってきたマーサさんの息子さんを見たわたしは、ビックリして大声を上げた。
格好は違うけど、顔が有栖君にそっくりだったからだ。わたしと同じクラスの、幼なじみの有栖旭君に。
「どうして有栖君がここに?もしかしてわたしと同じように絵本の世界に来ちゃったの!?」
思わず駆け寄るわたしに、有栖君は思いきり怪訝そうな表情を向ける。
「ルミエール姫。突然呼びつけておいて、なにを訳の分からないことを言ってるんです?」
「え、だって……」
「ルミエールはわたくしよ。その子はメイという名なの」
わたしの後ろから、ルミエール姫が顔を出す。有栖君は目をまん丸にして、何度も何度も瞬きを繰り返した。
「ウソだろ?姫が二人!?」
「だから、ルミエールはわたくしでこっちはメイだと言っているじゃない」
彼女はイラッとしたように、唇をグニャッと曲げた。
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