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その後イアンが再度説明してくれたおかげで、花火が何なのかを知ることができた。
火薬に色が付いて、それが空の上高くに打ち上げられるなんて。頭の中で一生懸命に想像しようとしたけれど、上手くできない。
(とってもわくわくする)
胸を押さえながら、星と月だけが登る空を見上げる。これだけでもとても綺麗なのに、花火が打ち上がれば更に美しいものになるのだろう。
「アレイスター様がいらっしゃらないのが、残念ですね」
「でしょ?イザベラもそうよね!私も心からそう思うわ!」
「あの方は無理でしょうね。今頃は、忙殺の末に凶悪な素顔が曝け出されているかもしれませんよ」
「それは私のことを言っているのかい?イアン」
不意に聞こえた穏やかな声色。いつの間かイアンの背後に、アザゼル様が立っていた。仄暗い為にその表情ははっきりと見えないけれど、穏やかな雰囲気だ。
「アレイスター様!」
「やぁロココ。祭りは楽しかったかい?」
「いいえ全く!ロココはアレイスター様がいらっしゃらず、ずっと塞いでおりました」
「誰よりも一番買い食いしていたくせに」
「黙りなさいよイアン!」
(アレイスター様は暗がりで見ても素敵)
一日たくさんのことに追われていたとは思えない程、アレイスター様は凛とした佇まいで微笑んでいる。冬の澄んだ夜の空気にぼんやりと浮かぶ金色の髪が、きらきらと輝いていた。
そんなアレイスター様の隣で、彼にぽんと肩を叩かれたイアンが何故だか項垂れていたけれど、その理由は私には分からなかった。
「空間転移を使われたのですか?」
「そうだよ。アザゼルのように複数人は無理でも、自分一人この距離ならなんとかね」
「その謙虚な姿勢もとっても素敵です…」
ロココさんの吐いた溜息は、心なしか彼女の髪と同じ薄桃色に見えた。
「この寒い中こんな場所を選ぶなんて、アザゼルは本当にイザベラに甘いね」
「悪いかよ。文句あるならお前は帰れ」
「退屈な夜会からやっと抜け出せたんだ。そんな冷たいことを言わないでくれないかアザゼル」
くつくつと喉を鳴らすアレイスター様に、アザゼル様はちっと舌を打つ。
「アレイスター様。本日はありがとうございました」
「イザベラ、慣れないことで疲れただろう。君はとてもよく聖女としての勤めを果たしていたよ」
「その言い方はやめろ」
すかさず、アザゼル様が噛みつく。彼は私が聖女として扱われることに、とても過敏に反応する。それは、私のイザベラとしてありたいという思いを汲み取ってくれているから。
(本当に、優しい)
胸がぎゅうっと、苦しくなる程に。
「すまない。私は嫌な言い方をしたかな」
「いっ、いえそんな!私などにそう言っていただけて光栄です!」
「君はもっと自信を持っていいんだよ。なんて言ったって、このアザゼルを手懐けているんだからね」
含み笑いをしてみせるアレイスター様に、私は返答に困ってしまった。
「そろそろ始まるんじゃないかしら」
ヒュルルルーーーッ
ドドンッ!!
ロココさんの台詞に被さるように、今までに聞いたことのない音が辺りに轟く。心臓を直接突き刺すような重厚な爆破音と共に、漆黒の空にぱっと光の華が開いた。
火薬に色が付いて、それが空の上高くに打ち上げられるなんて。頭の中で一生懸命に想像しようとしたけれど、上手くできない。
(とってもわくわくする)
胸を押さえながら、星と月だけが登る空を見上げる。これだけでもとても綺麗なのに、花火が打ち上がれば更に美しいものになるのだろう。
「アレイスター様がいらっしゃらないのが、残念ですね」
「でしょ?イザベラもそうよね!私も心からそう思うわ!」
「あの方は無理でしょうね。今頃は、忙殺の末に凶悪な素顔が曝け出されているかもしれませんよ」
「それは私のことを言っているのかい?イアン」
不意に聞こえた穏やかな声色。いつの間かイアンの背後に、アザゼル様が立っていた。仄暗い為にその表情ははっきりと見えないけれど、穏やかな雰囲気だ。
「アレイスター様!」
「やぁロココ。祭りは楽しかったかい?」
「いいえ全く!ロココはアレイスター様がいらっしゃらず、ずっと塞いでおりました」
「誰よりも一番買い食いしていたくせに」
「黙りなさいよイアン!」
(アレイスター様は暗がりで見ても素敵)
一日たくさんのことに追われていたとは思えない程、アレイスター様は凛とした佇まいで微笑んでいる。冬の澄んだ夜の空気にぼんやりと浮かぶ金色の髪が、きらきらと輝いていた。
そんなアレイスター様の隣で、彼にぽんと肩を叩かれたイアンが何故だか項垂れていたけれど、その理由は私には分からなかった。
「空間転移を使われたのですか?」
「そうだよ。アザゼルのように複数人は無理でも、自分一人この距離ならなんとかね」
「その謙虚な姿勢もとっても素敵です…」
ロココさんの吐いた溜息は、心なしか彼女の髪と同じ薄桃色に見えた。
「この寒い中こんな場所を選ぶなんて、アザゼルは本当にイザベラに甘いね」
「悪いかよ。文句あるならお前は帰れ」
「退屈な夜会からやっと抜け出せたんだ。そんな冷たいことを言わないでくれないかアザゼル」
くつくつと喉を鳴らすアレイスター様に、アザゼル様はちっと舌を打つ。
「アレイスター様。本日はありがとうございました」
「イザベラ、慣れないことで疲れただろう。君はとてもよく聖女としての勤めを果たしていたよ」
「その言い方はやめろ」
すかさず、アザゼル様が噛みつく。彼は私が聖女として扱われることに、とても過敏に反応する。それは、私のイザベラとしてありたいという思いを汲み取ってくれているから。
(本当に、優しい)
胸がぎゅうっと、苦しくなる程に。
「すまない。私は嫌な言い方をしたかな」
「いっ、いえそんな!私などにそう言っていただけて光栄です!」
「君はもっと自信を持っていいんだよ。なんて言ったって、このアザゼルを手懐けているんだからね」
含み笑いをしてみせるアレイスター様に、私は返答に困ってしまった。
「そろそろ始まるんじゃないかしら」
ヒュルルルーーーッ
ドドンッ!!
ロココさんの台詞に被さるように、今までに聞いたことのない音が辺りに轟く。心臓を直接突き刺すような重厚な爆破音と共に、漆黒の空にぱっと光の華が開いた。
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