おとなりさんはオカン男子!

清澄 セイ

文字の大きさ
15 / 45
第二章「ムクチな同級生」

しおりを挟む
それからまた次の日のお昼休み、甘崎君が席を立って教室を出たタイミングで、私もタタッと彼を追いかけた。

「甘崎君っ」

クルッと振り向いた甘崎君は、相変わらずのポーカーフェイス。やっぱり学校では、オカン部分を隠してるらしい。

周りに聞こえないよう、私は甘崎君の耳元に少しだけ近付く。

「昨日のクッキー、めちゃくちゃおいしかったよ!ありがとう」

「そっか。ならよかった」

あれ。無表情かと思ったら、そうでもないみたい。どうやら甘崎君は、作ったものを褒められるとちょっと照れるみたいだ。

そのギャップが、何だか可愛く見える。

「それでね、その時一緒にいた先輩にもあげちゃったんだ。勝手にごめんね」

「俺が作ったって言った?」

そういえば私、誰が作ったとかは言わなかったよね。王寺先輩は多分、私が作ったって勘違いしてる気がする。

「ううん、言ってないよ」

「じゃあ、言わないままにしといて」

「分かった」

甘崎君、料理上手だって知られるの嫌なのかな。凄いことなのに。

「あのさ、今日夜食べに来れたりする?」

「えっ?」

「翠達が呼べってうるさい」

その言葉に、頭の中にこの間のことを思い浮かべる。甘崎家の男の子達皆、人懐っこくて可愛かったなぁ。

「でも、またご馳走になるなんて悪いよ。お家の人もいないのに」

「父さんには話してあるから。もちろん、無理にとは言わないけど」

「そんなことないよ。甘崎君のご飯、おいしかったもんなぁ…」

炊き込みご飯の味を思い出すと、お腹が鳴りそうで危険だ。

「よだれ垂れてる」

「えっ、嘘!」

慌てて口元に手をやると、甘崎君が声を上げて笑った。

「ごめん、嘘」

「も、もう!」

初めて甘崎君の前回の笑顔を見て、思わずドキンと胸が高鳴る。普段は前髪が長くてよく分からないけど、甘崎君って綺麗な顔してるよね。

「でも、ホントにいいの?」

「こっちから頼んでることだし」

「じゃあ、お言葉に甘えて行かせてもらおうかな」

私がそう答えると、甘崎君はコクンと頷いてそのままスタスタとどこかへ消えていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

ぽんちゃん、しっぽ!

こいちろう
児童書・童話
 タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

処理中です...